パナソニックは2024年10月1日、2027年9月末までに蛍光灯の生産を終えることを発表した。今回生産終了を決めた品種は施設照明で広く用いられている直管蛍光ランプ(三波長形)、天井埋め込み照明などに用いられているツイン蛍光ランプ(コンパクト形蛍光ランプ)、住宅用シーリングライトなどに用いられる丸形蛍光ランプと点灯管。生産数量を見極めながら2026年9月末にツイン蛍光ランプと点灯管、残りを2027年9月末までに生産を終える予定としている。
蛍光ランプが生産終了するまでのスケジュールは?
一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入は2023年11月に実施された「水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議」で2027年末までに禁止されることが決まっている。今回の生産終了はこの決定を受けて実施されるもの。同社は2019年3月末に蛍光ランプ対応の照明器具の生産を終了しており、蛍光ランプのラインアップも徐々に減らしている。すでに直管蛍光ランプ(一般色形)の生産が2025年6月末に終了することが決定しており、特殊用途の蛍光ランプ、電球の生産も2027年9月末に終えることにしている。
生産終了が発表された直管蛍光ランプ、ツイン蛍光ランプ、丸形蛍光ランプと現在販売されているLED照明(施設用/住宅用)の一部
古く故障の可能性が高い蛍光灯器具は交換を
既存の蛍光ランプはLEDへの変更が必須だが、LED照明に変更するに当たり留意しなければならないことは、蛍光ランプによっては蛍光灯器具を変更する際に工事が発生することだ。主に丸形蛍光ランプが使われる住宅用シーリングライトやペンダントライトであれば、天井に設置されている引掛シーリングのような配線器具にアダプタを取り付ければ工事をすることなくLED照明に置き換えられるが、オフィスや商業施設などで使われている直管蛍光ランプのベースライト、住宅や商業施設で使われているツイン蛍光ランプを用いたダウンライトをLED照明に変更する際は電気工事の有資格者による工事が必要になる。
時間はまだ十分ある……と思うかもしれないが、同社としてはできるだけ早期にLED化へのリニューアルを推奨している。工事時期が集中することを抑えることに加え、理現在使われている蛍光灯器具の多くが使用から10年以上経過して劣化が進み故障する可能性が高くなっているからだ。
「蛍光灯器具は使用から10年を過ぎたあたりから故障率が上がってきます。外見からでは判断できないソケットや内部の電線などの劣化が進んでいますので、長期にわたり使用している蛍光灯器具は交換をオススメしたいです」
こう話すのは、蛍光ランプ事業を担う同社エレクトリックワークス社ライティング事業部 事業部長の島岡国康氏。同社としてはただ交換するだけではなく、空間演出を可能にする提案をすることで蛍光灯器具の交換を促進していきたい考えだ。
蛍光灯器具の使用期間と故障率の関係。使用から10年経過すると内部の劣化が進み故障率が上昇していくことが確認されている
具体的には、オフィスにおいて必要な部分を必要な分だけ照らし集中力向上など従業員の満足度アップを可能にする「メリハリ照明」と電気代削減、光と音が自動で変化しメリハリのある生活リズムづくりをサポートする住宅用LEDシーリングライト『ライフコンディションング』シリーズなどの提案を検討している。10月1日からLEDリニューアルの提案をまとめたポータルサイトを公開し、蛍光ランプの生産が終わることのアナウンスと蛍光灯器具の交換に関する啓蒙・啓発を加速させることにした。
施工時間を55%削減した『iD』シリーズ
蛍光灯器具の交換に工事が必要な場合、問題になることがある。電気工事士の人手不足と高齢化、時間外労働上限規制が2024年4月から適用されたことだ。交換工事を行なう電気工事士からすれば、短時間かつ簡単に施工したいところである。
こうしたニーズに応えるために同社が用意しているのが『ハヤワザリニューアル』。簡単に施工でき器具の軽量化など施工性を高めた商品群のことだ。
『ハヤワザリニューアル』の1つが、『iD』シリーズ。2012年に発売された施設向け一体型LEDベースライトで、直管蛍光ランプ対応照明器具の代替としてオフィスや公共施設、倉庫など幅広い施設の主照明に用いられている。発売10周年となった2022年に累計出荷台数が5000万台を達成している。
『iD』シリーズのリニューアル専用器具本体(埋込型)であれば、同シリーズの埋込型一般器具と比べるとボルトの調整が不要になったことと配線スペースが拡張されたことにより施工時間が約55%短縮された。
器具と光源が一体になった施設向けの一体型LEDベースライト『iD』シリーズ。写真はリニューアル専用器具本体で、埋込型と直付型の2タイプ用意されている