Z世代に属する10〜20代の若者の間で、コンパクトデジタルカメラ全盛期の2000~10年代の旧機種(=オールドコンデジ)がにわかに人気を集めている。Z世代が惹き付けられる理由は何なのか。中古カメラ専門店「2nd BASE」店長の三村祐太さんはこう分析する。
「数年前フィルムカメラブームがあり、『写ルンです』などが各社在庫切れになるほどの売れ行きでした。そこに新たな風としてオールドコンデジが台頭してきました。写りの特徴である『白飛びのしやすさ』『ノイズの乗りやすさ』をフィルムライクに捉える方が多く、ローファイな感じがウケているのでしょう」
さらにコンデジが選ばれる理由としてフィルム価格の高騰を挙げる。
「コンデジを使う層としては、フィルムもやってみたい人が圧倒的に多いのですが、フィルム代や現像代などランニングコストがハードルになっています。ですが、オールドコンデジならローファイな写真を簡単に、低コストで撮れる。さらに00年代のY2Kなデザインも人気を後押ししています」
2nd BASEでは昨年の1月からオールドコンデジの取り扱いを始めた。
「22年の秋、海外でファッション関係の仕事をしている友人が『セレブやインフルエンサーがコンデジを使っていて、流行るかも』と、教えてくれました。それで専門のコーナーを設置。当初はそこまでなかったのですが、昨年の春くらいからどんどん売れ始め、夏ごろには在庫が追いつかないほどになりました」
ブームはいつまで続くかわからないが「2~3年前は1000円、2000円で売られていたカメラが今では2万円ぐらいの相場価格」と、その勢いは衰えそうにない。
掲載した作例に、どこか既視感があると思い返すと……大人気K-POPグループ「NewJeans」の『Ditto』のMVとまさに同じ。オールドコンデジが時代のムードと合致している、大きな証拠ではないだろうか。
コンデジブームの発端はこの機種から!
キヤノン『IXY DIGITAL 510 IS』
2万4200円(店頭参考価格)
2009年発売、1210万画素。「ブームの発端となった海外の方が使っていたのが、この『IXY』シリーズだったそうです。キヤノンはコンデジが強いメーカーで、元々定価が高く、写りがいいのが特徴です」(「2nd BASE」三村さん。以下同)
ピントの甘さが「エモさ」を引き出す
パナソニック『LUMIX DMC-FX07』
1万8700円(店頭参考価格)
2006年発売、720万有効画素。「このシリーズは個人的に少し写りが甘いのが特徴だと思っています。ブームになっているからこそ、逆にパキッと写らない感じがちょうどいいと思います」
発色の良さはフィルムメーカーならでは
富士フイルム『FinePix JV100』
1万8700円(店頭参考価格)
2010年発売、1220万有効画素。「富士フイルムは元々フィルムメーカーなので、色の研究が発達しています。色にこだわる方はコンデジも富士フイルムを選ぶのがおすすめですね」
〝ニューウェーブコンデジ〟も今の気分
コダック『PIXPRO FZ55』
2万5200円(店頭参考価格)
2022年8月に発売されたコダック製のコンデジ。ブラックとレッドの2色を展開し、有効画素数は1635万画素。オールドコンデジと同じく、オートモードで撮影しても平成初期を連想させるような「エモい」写真が撮れると人気だ。
取材・文・撮影・編集/廣 健吾
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年8月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。