■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
高画質化、AF強化、軽量化の正統進化
ライカのフルサイズミラーレス「LEICA SL2」が「LEICA SL3」に進化を遂げた。3世代目になった「LEICA SL3」はトリプルレゾリューション技術を採用したの6000万画素センサーを搭載。ボディ重量は約70g軽量化された。AFはコントラストAF+デプスマップに加えて、位相差AFが加わりトリプルハイブリッドAFとなった。今回は「LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH.」と「LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/75mm ASPH.」を借用して写真家、小平尚典氏と共に麻布台ヒルズを歩いた。
ボタンの配置も見直され右手で操作しやすいように右側に移動された。軍艦部の左側にダイヤルが追加された。電源スイッチはボタン式に変更されている
軍艦部、右側には絞り、シャッター速度、ISO感度、EV補正値など表示する小型モニターがある
デュアルスロットを搭載して、CFexpress TypeBとSDカードが使える
作例は主に中望遠レンズのLEICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH.を使って撮影
ライカレンズと6000万画素
フルサイズミラーレスの中でも6000万画素センサーを搭載したカメラは少なく、SONY α7R Vやα7CR、SIGMA fp Lなどの極めて限られたモデルになってしまう。中でもLマウントを採用する「LEICA SL3」はライカレンズの発色と描写力を遺憾なく発揮できるのだ。
コントラスト式よりも素早くピントが合う位相差式のAFが加わったことで、SL2よりも、さらにAFの速度が上がり、精度も上がったように感じられる。これで狙った所にピントが合わないという不満は解消された。高画素化によって、より正確なピント精度が求められるようになったが、本機なら問題なくシャープなピントが得られた。ただし、連写は苦手でAF追従で秒5コマなのでカワセミや子どもの運動会などには向かないだろう。
6000万画素の実力を引き出すためにレンズは高画質なアポ・ズミクロンを選んだ。中望遠のLEICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH.である。絞り開放時からシャープな写りの現代的なレンズで、非常に高い解像度を持ちながら、描写が硬くなりすぎない。深みのある独特の発色に魅了される。曇天でもコントラストが高く、被写体をクッキリと浮き上がらせてくれた。
写真家、小平尚典さんの飼っているインコのポートレート。屋内の自然光でも美しい発色が得られて、背景のボケもうるさくならない
LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH. LEICA SL3 1/60sec、F2.8、ISO1600
上の画像を100%にトリミングした。インコの毛並みと色のグラデーションが立体感豊かに浮かび上がって見える
75mmの最短撮影距離は50cmなので、花やスイーツに近づいて撮影できる
LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/75mm ASPH. LEICA SL3 1/80sec、F6.3、ISO100
75mmも絞り開放からシャープで背景に美しいボケが得られる
LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/75mm ASPH. LEICA SL3 1/250sec、F2.2、ISO1600
絞りを開けていくと被写界深度が浅くなり、ピントを合わせたい部分が浮き上がるように目立ってくる
LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/75mm ASPH. LEICA SL3 1/640sec、F2.2 -0.6EV、ISO1600
いつも撮影しているオオタカには超望遠レンズが必要だが、6000万画素をトリミングすれば90mmでも、かなり接近した気分になれる
LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH. LEICA SL3 1/250sec、F2、ISO1000
麻布台ヒルズを遠景から捉えた。晴天でF8まで絞り込んだがビルの描写は硬すぎず、金属とガラスの質感もリアルだ
EICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH. LEICA SL3 1/250sec、F8、ISO100
ビルに近づくとガラスが平面でなく、そこに映った建物がグニャグニャしていることが分かった
LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH. LEICA SL3 1/250sec、F8、ISO100
屋外から見たショップのディスプレイ。ガラスの反射と透明感を両立。拡大していくと洋服を掛けたハンガーのロゴまで写っていた
LEICA APO-SUMMICRON-SL f2/90mm ASPH. LEICA SL3 1/80sec、F8、ISO100
写真・文/ゴン川野