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高齢患者の痛みに「抗うつ薬」が処方されることのリスクとは?

2024.10.10

高齢患者の痛みに抗うつ薬は本当に有効か

医師は、高齢者の身体の痛みを和らげるために抗うつ薬を処方することがあるが、新たなシステマティックレビューとメタアナリシスにより、この治療法を支持する十分なエビデンスはほとんどないことが明らかになった。シドニー大学(オーストラリア)公衆衛生学部および筋骨格健康研究所のChristina Abdel Shaheed氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Clinical Pharmacology」に9月12日掲載された。

多くの国において、高齢者に対する抗うつ薬の最も一般的な適応は痛みである。今回の研究でAbdel Shaheed氏らは、65歳以上の高齢者を対象に、痛みの治療薬としての抗うつ薬の有効性と安全性について他の代替治療と比較したランダム化比較試験のエビデンスの評価を行った。

13種類の論文データベースを用いて、2024年2月1日までに発表された関連文献を検索したところ、適格条件を満たしたRCTはわずか15件(対象者の総計1,369人)であることが判明した。最もよく用いられていた抗うつ薬はデュロキセチンとアミトリプチリンで、それぞれ6件のRCTで検討されていた。治療効果は、変形性膝関節症による痛みに対して検討したRCT(6件)が最も多く、これらのRCTからは、短期間(0~2週間)の抗うつ薬による治療では統計学的に有意な痛みの軽減効果を得られないことが示されていた。ただし、デュロキセチンを中期的(6週間以上12カ月未満)に服用することで、非常にわずかながらも有意な痛みの軽減効果が認められた。一方、約半数(15件中7件)の研究で、転倒やめまい、傷害などの有害事象による試験参加者の離脱率は、抗うつ薬治療群の方が対照群よりも高いことが報告されていた。

こうした結果を受けてAbdel Shaheed氏は、「これらの抗うつ薬は、効果に関する十分なエビデンスがないにもかかわらず、患者の痛みを和らげるために処方され続けている」と強調する。

抗うつ薬の離脱症のリスクも懸念

研究グループによると、標準的な国際ガイドラインは、概して慢性疼痛に対する抗うつ薬の使用を支持しているものの、そのガイドラインが根拠としているデータは高齢患者を対象としたものではないという。論文の筆頭著者であるシドニー大学公衆衛生学部のSujita Narayan氏は、「このようなガイドラインがあるために、医師が誤った判断をしている可能性がある」と指摘する。同氏は、「もし、私が時間に追われている臨床医だとするなら、ガイドラインを参照する場合には、慢性疼痛の管理に関する重要なポイントだけを拾い読みするだろう。そのポイントの中に、抗うつ薬の使用を勧める内容も含まれているということだ」と説明する。

Narayan氏はまた、抗うつ薬の服用を中止する傾向についても、「抗うつ薬の離脱症状は、オピオイドの離脱症状と同じくらいひどいことがある」と指摘する。同氏は、「抗うつ薬の服用をやめようと考えている人は、やめる前に主治医に相談し、必要に応じて減薬計画を立てることを勧める」と述べている。

Narayan氏は、「変形性膝関節症の痛みを軽減するためにデュロキセチンを使用している、または使用を検討している臨床医や高齢患者に対するメッセージは明確だ。薬を一定期間服用すれば効果が現れる可能性はあるが、その効果は小さい可能性があり、リスクとの比較検討が必要だということだ」と話している。(HealthDay News 2024年9月20日)

Copyright (C) 2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bcp.16234

Press Release
https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2024/09/13/antidepressants-prescribed-for-pain-in-older-adults-despite-weak.html

構成/DIME編集部

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