駅前で募金の呼びかけに出くわしたり、店舗でお店の人から“おすすめ”を勧められたり、なんだか自分が“試されている”かもしれないと思える経験もあるだろう。こうした状況で気前良く振る舞える要素の1つに、自分が“イケてる”という高い自己評価があることが最新の研究で報告されている。
自分の魅力が高いと自認する者は“気前が良い”
長い猛暑もようやく終わり、一部では“ファッションの秋”が意識されていると思われるが、美容にしてもファッションにしても、人々の“美の追求”に関してはご存知のように現代社会では一大産業になっている。日々の“追求”によって自分が“イケてる”側にいると自覚することで行動に何か変化が訪れるのだろうか。
人々の身体的魅力への欲求はいずれの文化においてもほぼ普遍的であるといわれ、化粧品、ヘアメイク、ダイエット、美容整形、ファッションなど、容姿を向上させるサービスや商品は巨大な市場となっている。ネット上にはリアルタイムで人物の容姿を加工するアプリさえある。
最低限の身だしなみはともかく、美容やお洒落には無頓着の者も特に男性には少なくないが、一方で“美の追求”に熱心な者はある程度は自分の容姿に自信を持っていそうである。この場合、客観性が伴っているかどうかは不問だ。
容姿に自信を持っていると、つまり自分が“イケてる”側の人間であると自覚していることで、対人交流においておおむね物怖じしないスタンスがとれそうだが、ほかにも何か特徴的な傾向はあるのだろうか。興味深いことに最新の研究によると、自分の外見的魅力が高いと自覚している者は“気前が良い”のだという。
中国・廈門大学の研究チームが今年6月に「Marketing Letters」で発表した研究では、魅力的であるという自己認識は、自分が他者からどのように認識されているかに対する意識を高め、加えて“気前が良い”利他的行動を厭わない向社会的傾向を高めることを示唆している。
4つの実験のうちの1つでは、220人の参加者がランダムに2つに分けられ、Aグループは自分が魅力的に感じられる物事をリストアップし、Bグループはこの1週間で行なったことをリストアップした。
この事前の課題でAグループは自分の主観的な魅力が高まったのだが、その後両グループ共に架空の設定において自然保護区への寄付が行なえる機会が与えられた。
参加者の行動を分析したところ、Aグループは自然保護区に寄付する意欲が高く、向社会的行動に従事する可能性が有意に高いことが示されたのだ。つまり自分が魅力的だと自覚する機会が多いと、気前が良くなって寄付という利他的で社交的な行為に及びやすくなっていたのである。
また別の実験では、自分のプロフィールを作成する上で掲載する自撮り写真をアプリによって魅力を高めたグループと、逆に魅力を低くしたグループに分けられたのだが、この場合も自撮り写真の魅力を高めたグループが気前良く寄付に応じる傾向が高かった。
美容やお洒落に気を配る動機の多くはきわめて個人的なものだとは思うが、気前が良くなれるとするなら社会的にも望ましいことなのかもしれない。