たくさん塗り過ぎても効果が無い
――ヒトのステロイド外用薬の場合、薬の効果をしっかり得るために塗る分量の目安としてFTU(フィンガーチップユニット)と呼ばれる単位があります。大人の人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量で、チューブタイプ(口径が5mm程度)の軟膏やクリームでは、1FTU=約0.5gに相当します。そしてこの量が、手のひら2枚分の範囲に利用する量となりますが、ペットに塗る場合の目安は人間と同じ1FTU=約0.5gを目安にしますか?
岡田先生 結論から先に申し上げておきますと、FTUはペットにはある程度の目安にしかなりません。どのくらい使うのがいいの?という目安が何もないよりはあったほうがいいので、一応利用するのですが、舐めてしまったり、噛みついてきたりでうまくいかないことも多いので、正確にはできないことが多いから、です。
先ほどの話題にあるように、舐めてしまうことも計算に入れるので、私は上限としての目安で使っています。
実際、関節一つ分の軟膏の量が手のひら2枚分ですから、動物にとっては、思ったよりもたくさん塗らないでもいい、という認識で良いと思います。
早く良くなって欲しいので、たくさん付ける方がいらっしゃいますが、舐めてしまうとたくさん塗ってもほとんど意味がないです。皮膚への舐める刺激でむしろ悪化するケースもあります。
皮膚の専門医の先生の助言では、皮膚の悪いところが複数箇所ある場合は、一度に全て良くしようと思わず、まずはどこか1箇所よくするところから始めてください、とお話しされていました。なので、実際は、理想の量よりも少なくなってしまっても、外用薬を塗っても気にしない量、というのが通常の利用量の現実です。
治療の際には獣医師の使用経験などによって使用量に差がでるかもしれません。アトピーなど皮膚のトラブルには治療に時間が必要なケースが多いので、あせらず対応してください。
通常お薬は皮膚から吸収されますので、毛につかないように地肌に塗ります。なので、毛の量で使用量は変わりません。
ペットの薬はプロに相談
――最後にペットの外用薬に関してのアドバイスがあれば教えてください。
岡田先生 皮膚のお手入れには薬用シャンプーを利用することもあります。シャンプーにもかなりの種類があって、通常のシャンプー感覚で利用するものもありますが、外用薬として塗布・吸収作用で利用するものもあります。
薬用シャンプーは通常のシャンプーと異なる利用方法の場合があり、注意して使わないと、効果がうまく引き出せず、もったいないケースとなる場合があります。
最近では塗る漢方というのもあって、漢方薬でも外用薬として利用するものも品質の良いものや、医療用のものがあります。
その他一般的な外用薬もそうですが、せっかく使うなら、効果を引き出して有効活用したいので、その子にあった薬を選んでもらったら、使い方のアドバイスをもらってください。その子の性格や飼い主さんの生活スタイルなどで使いこなしていけるか?を先生と相談しながら使っていくのがいいと思います。
予防やメンテナンスに用いるものは、自分で判断する場合もあると思います。でも、治療歴がある場合は、それを元に注意すべきことがあるかもしれませんので、診てもらった先生に一度相談いただく方が無難だと思います。良かれと思ってやったことがちょっと違ってる、っていうのはもったいないことですよね。でも、やってみないとわからないこともあります。「薬のことはプロに相談する」のが一番だと思います。
さらにアドバイスとして、犬・猫中心の話ですが、ダニやノミ、蚊など虫刺されや寄生虫のかゆみはかなり強いものになります。この時期は虫たちの活動が活発な時期です。皮膚トラブルの解消には寄生虫の予防も重要事項になってきますので、積極的に取り組んでほしいです。
――ありがとうございました。
飼い主の性(さが)として、効果を急ぐあまりたっぷり塗りたくなる点については、大反省したい。また、ペットが塗り薬を舐めても安全であるという保証が無いと言う点にも、ハッとさせられた。簡単な様で難しいペットの外用薬。かかりつけの獣医師や看護師のアドバイスを聞いて、適切な量を、適切な時に使いたい。
注1
Topical Minoxidil Exposures and Toxicoses in Dogs and Cats: 211 Cases (2001-2019)
犬と猫における局所ミノキシジルの曝露と毒性:211 例(2001 年~ 2019 年)
取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/
文/柿川鮎子