トルクに押し出される豪放な走り、それでも意外なほどに荒々しさは皆無
今回はオンロードのみの試乗だったが、走り始めれば、走りもワイルド・・・ではない。確かに265/60R18ものサイズのオールテレーンタイヤを履くだけに、路面、段差によってはゴツゴツしたタッチを伝えてくる。が、しかし、クルマの見た目のワイルドさからすれば、遥かに快適。これは、日本仕様向けの乗り心地重視の足回りのセッティングによるものだという。
「意外なほど乗り心地がいい」と感じさせるのは、日本専用の足回りセッティングだけではないと思えた。そう、前席のシートのかけ心地の良さだ。上半身を包み込むソフトで優しいなタッチ、絶妙なたわみ感が効いている。シートは乗員それぞれの体形との相性もあるが、身長172cm、体重65kgの筆者にとっては、悪路走行、長時間、ロングドライブでも疲れにくいであろう、心地よいかけ心地のシートであったことは間違いない(運転席は電動)。
ディーゼルターボエンジンによる加速力は図太いトルクに押し出される豪放なものだが、荒々しさは皆無。ATの変速はややゆるいものの、本格SUVの悪路走行にも不可欠な低速域のドライバビリティの良さを発揮する。意外だったのは、ピックアップトラックとしての車内の静粛性の高さ。こう言っては何だが、ミニバンのデリカD:5より静かに感じたほどだ。だから、2Hモードでの市街地=オンロード走行に、ボディサイズと小回り性は別として、不満はなかった。ただし、アイドリングストップはいただけない。アイドリングストップする際、再始動の際ともにブルブルッというけっこうな横揺れ振動!?が襲い、再始動時に一瞬のタメがあり、アクセルを踏んでも無反応な一瞬(ドキっ)が見受けられたのだ。よって、筆者はそれを経験した後は、アイドリングストップをOFFにすることにした(ずいぶん快適になった)。
日本の需要では、2023年グッドデザイン賞受賞の経歴もあり、ファッションとしてトライトンに乗るのもアリだが、トライトンが本領を発揮するのはもちろん、一歩先に踏み込むオフロード。そこではヒルスタートアシストやヒルディセントコントロール、そして「ノーマルモード」、「エコモード」に加え、「グラベルモード」、「スノーモード」、「マッドモード=4HLc」、「サンドモード=4WLc」、「ロックモード=4LLc」の7つのドライブモードが威力を発揮してくれるに違いない。オンオフの路面、天候を問わないあらゆるシーンで安心安全に活躍(走破)してくれるところが、新型トライトンの真骨頂というわけだ。
トライトンはピックアップトラックだけに、どんな人にも勧められるクルマではないが、一般ユーザーでも、SURF & SNOWの各種スポーツやアウトドアなどにぞっこんの人なら、アウトランダーとともに選択肢に挙げていい1台ではないだろうか。この種のクルマは日本でもかつてサーファー御用達車としてブレークした経緯がある。ただし、余計なおせっかいかも知れないが、街乗り中心に使うのであれば、ワイルドなボディサイズ(とくに全長)に納得できるかどうか、必ず十分に試乗し、よく通るルートを走り、自宅駐車場を含めて駐車を体験し、使いこなせるかを確認してほしい。慣れで解決できる部分と、そうでない部分もあるわけで・・・。
文・写真/青山尚暉