乗り心地も目から鱗の快適さに進化
そんなことを頭に浮かべながら、新型T-CrossのR-Lineを走らせれば、思わず、「おっ、これはいい!!」と頬が緩んだ。パワーユニットに変更はないが、熟成が進んだのか、エンジンのスムーズさ、トルク感は一枚上手になり、トルキーに、伸びやかに加速を開始。しかも、マイナーチェンジ以前のモデルに比べ、車内の静かさが圧倒的に違うのである(マイナーチェンジの目玉のひとつ)。その車内の静粛性の高さから、ロングドライブでの騒音による乗員全員のストレス低減はもちろん、オプション装備されたプレミアムサウンドシステム”beats” サウンドシステムの迫力、音の良さも、存分に堪能できるというわけだ。
乗り心地もまた、目から鱗の快適さに進化した。R-Lineは唯一、スポーティな18インチタイヤを履いているのだが、良路での滑るような上質な乗り心地はもちろん、荒れた路面や段差を乗り越えた時のマナーも素晴らしいの一言。フォルクスワーゲン全車に共通する強靭なボディ剛性、足回り剛性の高さもあって、文句なしのフラットライド、快適感を見せつけてくれたのである。マイナーチェンジ前(初期型)のモデルに見られた足回りのバタつきも見事に解消。とにかく、一般道、高速走行を含め、「気持ちのいい」走りっぷりを披露してくれたのだった。
動力性能の高さにも改めて驚かされた。首都高速道路進入路のキツい上り坂、そして追い越し加速でもエンジンのトルクはモリモリと盛り上がり、高速巡行時を含め、3気筒1Lエンジン(ターボ付きだが)とは到底、思えない余裕のパフォーマンスを発揮してくれたのである(大人2名乗車時)。もう少しパワーとトルクが欲しい・・・というシーンに遭遇したとしても、全グレードに標準装備されるパドルシフトでシフトダウン(-)してやれば解決する。
ここで、T-Crossのパッケージについて報告すると、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で前席頭上に120mm、後席頭上に120mm、膝周りに40~180mm(後席スライド位置による)と、さすがにポロベースだけに後席が広々しているとは言い難いが(ゴルフ以上にある後席エアコン吹き出し口はなし)、前席優先のカップルズカーだと思えばどうということはない(後席は子供の乗車ならまったく問題なし)。
クラス最大級とされるラゲッジルームも、地上715mmの開口部に段差がなく(重い荷物の出し入れに有効)、幅1000mm、奥行き630~770mm(後席スライド位置)、高さ700mmと、なるほど、コンパクトSUVとして十二分なスペース、455Lを誇る容量を備えていると言っていい。もちろん、6:4分割の後席両方をややフラットに倒せば、さらに1281Lもの大容量になるから使い勝手がいい。
もっとも、ゴルフ以上に以前から装備されている電子パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能は依然、未搭載。ここはベース車のポロもそうであり、連動しているところが、オプションのナビゲーションの使い勝手とともに、新型T-Crossでほぼ唯一、ちょっと残念な部分ではある・・・(ACCの渋滞追従機能にもかかわる)。とはいえ、T-Crossの全方位の進化は素晴らしく、誰にでも薦めたくなる輸入コンパクトSUVであることは、以前にも増して間違いないところだ。
なお、試乗車のR-Lineには、メーカーオプションのDiscover Proパッケージ(ナビ)16万5000円、セーフティパッケージ8万8000円、”beats” サウンドシステムパッケージ6万6000円、ディーラーオプションのフロアマット(テキスタイル)3万7290円が装備され、オプション込みの価格は425万1290円とのこと。
文/青山尚暉
写真/青山尚暉 フォルクスワーゲン