厚生労働省も推進する「適正飲酒ガイドライン」とは?
コロナ禍を経て、復活した飲みニュケーション。だがその形も時を経て変わりつつある。
若者の飲酒率低下や健康意識の高まりに加え、今年2月には厚生労働省も適正飲酒を呼びかける「飲酒ガイドライン」を制定。缶チューハイや缶ハイボールといったフタを開けてすぐ飲めるRTD(Ready To Drink)ドリンクもバリエーションが増え、時代は確実に低アルコール・ノンアルコールの流れに。サントリーの調査では2023年のノンアル飲料の市場規模は過去最大を記録、今年はそれを上回る勢いだ。
お酒を〝あえて飲まない〟選択をするライフスタイル「ソバーキュリアス」に加え、アサヒビールが提案、牽引する、お酒を飲む人も飲まない人も気兼ねなく、自分の好きなお酒を飲める「スマートドリンクキング」=スマドリ、と呼ばれる新しい飲み方も若い世代を中心に定着しつつある。
こうしたトレンドを受け、各酒類メーカーもアルコールを提供する側の責任として、お酒との正しい付き合い方について積極的な啓蒙活動を実施。前述の「飲酒ガイドライン」の基準となる純アルコール量を商品に表記したり、低アル・ノンアル専門バーをオープンしたり、専門サイトを用意したりなど、様々な取り組みを行なっている。
キリンビールが開催する団体向け「適正飲酒セミナー」もそうした活動の一つだ。同社では特に女性の飲酒リスクについても啓蒙を進め、業界に先駆け、女性向け適正飲酒セミナーに注力している。
その一例として、今回は、美容系ポータルサイト『@cosme』の企画・運営会社(株)アイスタイルで行なわれた同セミナーを取材した。
終業後の19時、集まったのは30名近くの同社社員の皆さん。コスメを扱う会社だけにそのほとんどは女性だったが、中には男性社員も。新入社員を中心にお酒の飲み方を学びたい、という目的だったそうで、若い世代が目立ったが、開始前から和気あいあいとした雰囲気。しかも自由参加なのにこれだけの社員が集まるということにその意識の高さも感じることができた。
「適正飲酒セミナー」を通じてお酒と、自分と、仲間を知ろう!
今回の講師はキリンアンドコミュニケーションズの後藤沙耶香さん。「お酒との上手な付き合い方」というリーフレットに従って、適正飲酒のポイントをレクチャー。途中で質問を挟んだり、対話式で進んでいくため、飽きずに話が聞ける。
セミナーでは前述の「適正飲酒ガイドライン」についても解説。
ちなみに適正飲酒とは身体に負担のかからない飲み方のことで、同ガイドラインでは、「生活習慣病のリストを高める量は1日あたりの純アルコール摂取量を男性40g、女性20g以上」としている。アルコール度数や、何杯飲んだかより、心身への影響が正確に把握できるからなのだそう。ちなみに家庭で缶ビールや缶チューハイを飲む場合、この「純アルコール量」は、成分表の下に表示されているので、参考にしてほしい。
そして、「純アルコール量」は、以下の計算式にて算出が可能。1日60gを超えないことも大切だ。
●アルコール量の計算方法
この20gを基本に考えると、適量がわかりやすいため、主なお酒の純アルコール量20gがどのくらいに相当するかというと以下の通り。好みのお酒の基準量を知っておくことで、飲み過ぎ防止にもなる。
●1日のお酒の適量(アルコール20g)の目安
しかも、女性は男性に比べ、一般的に肝臓が小さく、女性ホルモンにより、アルコールの影響を受けやすいことがわかっているため、そのことも頭に入れておくほうがいいそう。さらに性別だけでなく、遺伝や体質によってもお酒の適量は変わってくる。ここで実際に行なわれたのがバッチテストだ。
このパッチテストは、専用のチェックパッチを腕の内側に貼ることで、アルコールに対する耐性の体質がわかるというもの。バッチを貼ったまま20分ほど置き、剥がした部分の皮膚の色と、目安となるインデックスの比較で判定される。
気になる判定は「全く飲めない人」(日本人の4%)、「アルコールに弱い人」(日本人の40%)、「アルコールに強い人」(日本人の56%)の3段階。今回の出席者は「お酒が好き」という方々が多かったせいか、ほとんどが「アルコールに強い」という判定結果になったが、「全く飲めない人」と判定された人も1名いた。
つまり、このようにそもそも体質的に、飲めない人もいるので、飲み会の場などでのお酒の強要は厳禁。また飲める人でも「明日があるから今日は抑えておこう」というケースや、体調などその時々によっても飲み方は変わってくるもの。そこで「周りの人が判断できるものではないので、お酒の強要は絶対にやめましょう」と、後藤さん。大切なのは、それぞれがそれぞれの飲みたいお酒を、飲みたいタイミングで、飲みたい量(ただし飲み過ぎはNG)を会話と共に楽しむことなのだ。
今回集まった方々は皆、お酒好きで、飲みニュケーション肯定派が多かったが、約60分のパッチテストや講義を通し、「お酒の適量は純アルコールの量で決まると初めて知った」「男性と女性の適量が違うとは知らなかった」など、様々な気づきがあったようで、「改めてお酒との正しい付き合い方を再認識できた」という声が多く聞かれた。
自分の適量を知り、それぞれを尊重した飲み方やお酒の選び方を心がけることで、飲める人と飲めない人も共に楽しい時間を共有する。それこそが、令和の時代のシン・飲みニケーションなのだ。
そして最後は質問タイム! 会場で実際に挙がったその一部を紹介しよう。
Q お酒の強さ、弱さは遺伝なのかなと思いますが、後天的に変化するものでしょうか。
A アルコールに対する体質(強さ・弱さ)は、変わらないので、お酒に強くなることはありません。
Q 酒ぐせが良くなる方法は?
A 飲酒量によって声が大きくなったり、判断力が鈍くなるなど、自分では気づかない状態になることはよくあります、一緒に飲む人にぜひ聞いてみて下さい!
Q 太りにくい飲み方を教えてください
A アルコール自体が高カロリーのため、まずは飲む量を抑え、低カロリーなおつまみを召し上がることがおすすめです。
Q お酒を飲むと顔が赤くなる人は、食道がんになりやすいというのは本当ですか。またそういった人がお酒を飲む場合の適量はありますか。
A アルコールとアセトアルデヒドには発がん性があり、この二つの酵素の働きが弱い人が飲酒家になると、食道がんの発がんリスクが高くなると言われます。体質や抱えている疾病は人それぞれのため、一概に適量は決められません。持病がある方は医師に相談してみてください。