■連載/阿部純子のトレンド探検隊
近くも遠くも瞬時に自動ピント調節するアイウェアのアップデートモデル「ViXion01S」
ViXionの自動でピントを調整するオートフォーカスアイウェア「ViXion01」は、2023年のクラウドファンディングで4億円超の支援を達成。新たにアップデートモデル「ViXion01S」が登場し、9月26日よりクラウドファンディングで⽀援受付を開始した。
〇オートフォーカスアイウェア「ViXion01」とは?
2015年にHOYA株式会社・ビジョンケア部門が網膜色素変性症向けのウェアラブルデバイス開発に着手、2018年には暗所視支援眼鏡「HOYA MW10 HiKARI」の販売を開始し2018年に同製品の新モデルを発表、2021年にHOYAより分社してViXionが創業した。
「ViXion01」の祖業である「HOYA MW10 HiKARI」は、網膜色素変性症等に起因する夜盲症・視野狭窄の症状のある人向けに、明るく広い視界を提供するプロダクトで、「ViXion01」はさらに幅広い目の状態の人たちに対し訴求した“オートフォーカスアイウェア”で、近くも遠くも瞬時に自動ピント調節を支援する機能を持つ。
「HOYA MW10 HiKARI」、「ViXion01」の開発を担当した、ViXion取締役CINO、開発責任者の内海俊晴氏はこう話す。
「前職のとき、夜になると一歩も外に出られない夜盲症の方向けの眼鏡を作ってほしいという依頼があったことから、2015年に網膜色素変性症向けのウェアラブルデバイスの開発に着手しました。
眼鏡で使われる光学設計のレンズでは夜盲症には対応できず、電子眼鏡という領域で開発を始めました。2018年に『HOYA MW10 HiKARI』としてリリースしましたが、その際に全国の盲学校に伺い、暗所視支援眼鏡の体験会で様々なテストや評価をいたしました。
体験会では、強度の弱視の子どもが単眼鏡を使って遠くの黒板や手元のノートを見て学んでいる姿を目にしました。不自由さを感じている子どもさんを見て、どの距離でもはっきり見える眼鏡を作ったら役に立つだろうと考え、次は弱視の方たちが便利に使えるものを造ろうと思ったのです。
こうした経緯の中で生まれたのが電子技術を使った『ViXion01』です。見ることにお困りの方にできるだけお役に立てるような製品を作るというのが私たち開発者のモチベーションになっています」(内海氏)
日本では小学生の3人に1人は視力1.0未満であり、2050年までに近視人口は47億5800万人、強度近視人口は9億3800万人に達すると予測されており、世界人口の約半分が近視という時代が到来することが予測されている。
また、失明のリスクも抱えるジオプトリー(D)が-6.00Dを超えた強度近視は10人に1人というデータもあり、世界的な超近視時代が進行しつつある。
こうした社会的背景もあり、すべての人たちに『見える』をサポートするデバイスとして、初代のオートフォーカスアイウェア「ViXion01」が昨年世界で初めてリリースされた。
オートフォーカス機能とは、見ようとする対象との距離をセンサーで測定(焦点距離:約5cm~∞、調節時間:約0.1秒)し、距離に応じてレンズ形状を瞬時に変化させて自動でピント調節するというもの。
「眼のピント調整機のメカニズムは、毛様体筋が眼のレンズである水晶体の厚みを変化させてピントを調整します。遠くを見ているときは特に何もしていないリラックス状態ですが、2m以内ぐらいの少し近いところのものを見ようとするときに、毛様体筋を収縮させて、レンズの大きさを厚くし近いところにピントを合わせるような動きをします。
毛様体筋はとても弱い筋肉で、近いところばかり見ていると眼が疲れる緊張状態となり、近視の原因のひとつとも言われています。
『ViXion0』は水晶体と毛様体筋の機能をデバイスで代替してピント調整をサポートするというもので、見ようとする対象との距離をセンサーで測定し、距離に応じてレンズ形状を瞬時に変化させて自動でピント調節するという仕組みです。近くを見るときに起こる緊張状態の眼をリラックスした状態にします。
昨年製品をリリースして、多くのユーザーさんからフィードバックをいただきました。非常に多かったお声が、長時間近いところを見ているときでも目が疲れにくいということでした。
デバイスの使用で目が悪くなることを防ぐ可能性があるのではないかと私たちも考えていまして、来年以降、大学と共同で研究を進めていくことを検討しています」(ViXion 代表取締役 CEO 南部誠一郎氏)
2023年の「Viction01」のクラウドファンディングでは4億2500万円という民間部門では世界一となる支援金を達成。米ラスベガスで開催のCES2024に出展し、海外主要メディアへの掲載や、「The Omdia Innovation Awards」など優れた製品を表彰する賞を3つも受賞。独ベルリンで開催のIFA2024にも出展し、海外主要メディアからの取材、イノベーティブな企業が出場するピッチコンテストで優勝するなど、海外でも大きな反響を呼んだ。
〇アップデートした新製品「Vixion01S」
自動でピントが合うオートフォーカス機能は現行品と変わらず、レンズ径は現行品と同じだが、普段使いしやすいデザインに変更、約40%の軽量化(※アウターフレームを外した状態)に成功した。(※下記画像左が現行品、右が新製品)
「現行品は未来的なデザインでしたが、我々が思っていたよりも多くの方に受け入れられました。意外だったのがシニア層に受け入れられたということ。逆に若い方や女性には、ちょっと気恥ずかしいという声が多く、新製品ではより眼鏡に近い、普段使いしやすいデザインに変更しました。デザインは現行品同様、世界的デザインファー『nendo』によるものです」(南部氏)
大きな変更点が、交換可能なアウターフレームを搭載し、フレームにレンズを挿入することが可能になったこと。乱視用・遮光・偏光・ブルーライトカットなど、好みのレンズを取り付けられるようになり、個々の目の課題に対応可能になった。
アウターフレームを外したオートフォーカスレンズだけの状態でも使用も可能で、作業などに使いたいときはレンズだけの方が軽さを実感できる。
現行品、「Vixion01S」は医療機器の眼鏡ではなく、検眼不要ですぐに使うことができるが、アウターレンズを乱視用レンズ等に交換する場合は医療機器の扱いになるため、眼鏡店などでの検眼が必要になる。
そのため現行品は直販、ECサイト、家電量販店で扱っているが、現在クラウドファンディングを実施中の「Vixion01S」が一般販売される際は、眼鏡店での扱いも予定されている。