「半身で働く」に共感
山崎さんが三宅さんの著書で感銘を受けたのが、本を読むための余裕を生む「半身で働く」という考え方。これは上野千鶴子さんのフレーズで、いまの生き方に合っていると三宅さんは語る。
「かつて全身全霊の働き方を男性がしてきたのに対して、女性は家事労働と普通の労働を両立させないといけないので半身で働いてきた。でも私は、これからはみんなが『半身』でやっていくべきじゃないかなと思っています。男性が全身全霊で仕事ができたのは家にケアする人がいたからで、共働き時代にふたりとも全身全霊で仕事したら、誰が家で家事をするのか? だったらみんなが『半身』になれば働きやすいはずです」(三宅さん)
働き方といえば、休み方もいまはさまざまな考え方がある。仕事をするために事前インプットや心を潤す時間が必要だと、山崎さんは積極的に休みが欲しいとスタッフにいっているそうだ。
「休みだからこそ、仕事では絶対に会わない人や、仕事抜きに好きな人たちと会ったりしています。それでスイッチがオフになっている実感はありますね。仕事じゃ絶対にしない話ができるのも楽しいし、そこで得た情報や感覚は絶対にどこかで自分のアウトプットに生かせるものだと思います」(山崎さん)
「仕事関係の人とばかり会っていると頭の中が仕事ばかりになっちゃう気がする。地元の友達や仕事の文脈以外の人と会うと違う話をするので、こういう自分もいたよなと思えて、いい意味で頭が拡散される。リフレッシュできるし、仕事以外の本を読む余裕もできます」(三宅さん)
情報収集から仕事の休み方まで共感していたふたりの思考術は、ビジネスパーソンにも参考になるはずだ。
プロフィール
山崎怜奈(やまざき・れな)
タレント。1997年5月21日東京都生まれ。2022年に乃木坂46を卒業。TOKYO FM『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』パーソナリティーのほか、歴史好きでクイズ番組も多数出演。NHK Eテレ『NHK高校講座世界史探究』MC、読売テレビ『ウェークアップ』などレギュラー番組も多数。
三宅香帆(みやけ・かほ)
書評家、文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。1994年高知県生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士前期課程修了。小説や古典文学やエンタメなどの幅広い分野で、批評や解説を手がける。著書『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』など。
取材・文/久村竜二 撮影/横田紋子