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正解の無い時代を生き抜くために五感を研ぎ澄ます~世界的瞑想家ニーマル・ラージ・ギャワリのリトリートツアー体験レポート

2024.10.03

最近、話題のリトリートツアー。自然豊かな場所でのリラックスやリフレッシュを目的とした日頃のストレスから解放される旅として富裕層や意識高い系層に人気である。

しかし、現代のビジネスパーソンにこそ、リトリートは有効なのではないか!?

その事実を検証すべく、今回、『心が整うマインドフルネス入門: エグゼクティブが実践するニーマルメソッド』(小学館)の著者であり、世界的瞑想家ニーマル・ラージ・ギャワリ氏が代表を務めるメディテーションテックベンチャーsuwaruが主催するリトリートツアーに参加してみた。その体験レポートをお伝えする。

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心身をホリスティックに鍛錬することで整い本来のポテンシャルが引き出される

前回は、世界的にヴェーダ哲学や東洋思想への注目が高まっている状況などを紹介しながら、ニーマル氏のリトリートがいかに現代のビジネスパーソンに有効であるかという話をしてきたが、今回は、2025年5月末に開催された高野山リトリートの体験レポートをお伝えする。

総勢参加者35名。さすが、話題の“リトリート”の中でも最先端をいくニーマル氏のツアーにたどり着く方々だけあり会社経営者、著名なエシカルディレクターや人気スタイリストなど、分野は異なれど、各界の第一線で活躍する豪華なメンバーが一堂に会するツアーとなった。

そのうち9割が女性。直感的に今、何を最優先すべきか、何が大切なのかを察知して行動するバイタリティは女性のほうが旺盛のようである。従来の固定されたルールや予測可能性に頼ることが難しいVUCA時代の今、柔軟性、感受性、共感力、コミュニケーション能力に長けた女性性的(決してジェンダーの話でなく、女性性、男性性の話)感覚が世の動向を牽引していくという世情が今回のツアーの参加者の男女比にも如実に反映されているようである。

宿泊は高野山真言宗、総本山金剛峯寺塔頭寺院、無量光院。宿坊とは、寺院や神社の境内に設けられた宿泊施設でもともとは巡礼者や参拝者が宿泊するための場所として発展してきたが、現代では一般の観光客も利用できる宿泊施設として人気を博している。その中でも無量光院は、その中でも鎌倉時代に開創されたとされており特に古い歴史を持ち、約800年の伝統を誇る。普通に宿泊しても、僧侶の方々と共に朝のお勤めへの参加や写経体験など、日常とは異なる静かな環境で精神修養やリフレッシュを目的とした滞在が楽しめる。健康にも良い伝統的な精進料理も堪能することができる。

修行僧の方々の身の振る舞いを間近で感じ、都会で慌ただしく働いてる人間の身体性がいかに乱れているかを感じさせられる。靴を履き乱して脱ごうものなら、即座に整頓される。日々の当たり前の振る舞いの積み重ねによって作り出されている場の空気感。神社仏閣だけでなく、この地に住まう人々からも醸し出されているようで、ここに滞在し、時を過ごしいてくうちに、高野山の静寂な空気に包まれて、参加者一人一人、いつの間にか自然と身も心も穏やかに整っていく。

4泊5日のスケジュールは、朝6時から 90分のニーマルヨガ(ニーマルはサンスクリット語で”清水”の意味で、心と体をニーマルな状態に導いていくことを目指し、古くからの普遍的なヨガを現代人に向けにアレンジした内容)と瞑想。朝食後、午前中は、高野山内のニーマル氏がセレクトした場所に赴き、瞑想。昼食後、『ヨガスートラ』(ヨガスートラについては前回をご覧いただきたい)を学ぶ座学。夕方から呼吸法、瞑想。そして夕食。

この決められたスケジュールを繰り返すわけだが、この“決めたことを遂行する“ということがひとつの修養でもある。サンスクリット語で「熱」や「熱意」を意味する「タパス」は、ヴェーダ哲学(ヴェーダ哲学についても前回をご覧いただきたい)の教えでは、自己規律や自己制御、精神的な行として重要な徳目とされる。

『ヨガスートラ』の編纂者とされる古代インドの哲学者パタンジャリは、「タパス」を「ニヤマ」の一つとして位置づけている。「ニヤマ」はヨガの「八支則」の最初の段階であり、「勧戒」とも訳され、自己修養や自己管理に関連する“するべき”規範とされている。簡単にまとめると、『ヨガスートラ』での「タパス」は、内なる意志を鍛え、継続的に努力することで心身を浄化し、精神的な成長を促すための原動力となる行いである。目標に向かって努力することが求められるビジネスパーソン精神鍛錬につながる大切な教えなのである。

もちろん、滞在中の行動は各々自由で厳格なわけではない。何を感じ、何を手放し、何を得るかは人それぞれ。

早朝の護摩焚きや、奥之院の御廟での空海に食事を届ける儀式「生身供(しょうじんぐ)」の読経を拝観しにいく者もいる。

スペシャル級のプログラムがふんだんにつまった贅沢な内容

既定のメニュー以外にも現地ならではのサプライズゲストの講義もあった。

今回、初日の夜は高野山大学から副学長の密教学科の松長潤慶教授の講義が開催された。

今、高野山大学は東京大学先端科学技術センターと現代テクノロジーと1200年続いている東洋哲学を通して次世代に繋がる「いのちのあり様」に関する共同研究を行っている。先端研と言えば、日本のアカデミック界最高峰中の最高峰といる研究所。日本の最先端の頭脳が今求めているのが高野山大学の教えなのだ!

松長教授の法話は、空海の『性霊集』にある「虚空尽き 衆生尽き 涅槃尽きなば 我が願いも尽きん」についてのお話。自分の目の前に現れた人だけを救いたいのではなく、自分が知らない世界で生きている地球上全ての生き物の幸せを現実化することを願い、それが実現したら自分の仕事は終わる…という空海さんの思いが込められたありがたきお言葉。なんともスケールの大きすぎる職務責任感!なんとも広大な利他の精神です。しかし、日本の古き商習慣の慣用句として、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」という言葉があるように、自社の利益を追求するだけでなく、取引相手や社会全体にとってもプラスになるような商売のやり方が大事とされてきた。企業の社会的責任や持続可能な経営の重要性が叫ばれる中で、再び注目されているビジネス哲学だ。

先端研が聴講を希求する教授の講義は、ビジネスの本質を改めて考えさせられる貴重な機会となった。

三日目、訪れた金剛峯寺でも法話を拝聴。テーマは曼荼羅。真言宗総本山、金剛峯寺の教えと修行の根幹を成す要素として非常に重要とされている曼荼羅だが、かの大谷翔平選手が目標達成のための自己管理ツールとして活用した曼荼羅チャートが話題になったことで耳にした方も多いだろう。

大谷選手の例からも明らかなように、単なる宗教的シンボルとしてだけではなく、実生活において自己成長、目標達成、バランスの取れた生活を実現するための強力なツールともなり得るのである。大谷選手の曼荼羅チャートの構造は、9×9のグリッドで構成されており、中央に最も重要な目標を設定し、その目標を達成するために必要な8つの具体的な要素を周囲に配置する。さらに、その8つの要素それぞれに対して、さらに8つの細かい目標やステップを設定する。全体で64の具体的な行動計画がチャート上に展開される仕組みである。

これは人生にも置き換えられるのではないか?そうするとチャートの真ん中に配される最も重要なものは何であろうか?お金?パートナー?子ども?親?まずは、何よりも自分であろう。各々が各々の活躍する場所でチャートの隅のコマにいるのではなく、中央に主役として陣取って人生とういう曼荼羅図を展開していく意識を持つことが大切である…というありがたいお話。金剛峯寺で拝聴することで、ありがたさが倍増され、これまた心にじわじわとしみいってくる。

この話がされるのを知っていたかのように、この日の午後の瞑想は、一人一人が曼荼羅図のように配され、座し行う瞑想となった。

この瞑想の後、少ない男性参加者の一人が、今まで止めていた感情を溢れさせるかのように大号泣するという一幕もあった。

整った環境で正しい瞑想をすると、普段ではなかなか難しい深い内観を得ることができる。

心身の穢れが清められ、ありのままの感性が発露され、本来の自分に戻る。

参加者の多くが貴重な気づきを得る特別な機会となった。

初日の午前中に行われた瞑想も、“高野山内のニーマル氏がセレクトした場所”で、とさらっと書いてあったが、その場所は、高野山のなかでも最も神聖な場所とされる奥之院の御廟の隣で行われるものだったりしたのだが。他の高野山リトリートの実状までわからないので、これがどれだけ希少なケースか判断つきかねるが、かなり特別中の特別なニーマル氏スペシャル待遇なのではないかと思われる。

筆者のような私利私欲にまみれた俗人でもニーマル氏のリトリートを享受することで、すっきり心が洗われ生まれ変わったような気分になったのだからスペシャルな効果は間違いないと言ってよいだろう。

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