親世代は大学費用の補助といえば奨学金の貸与しかなかった。しかしながら、現在奨学金では返済不要の給付型や授業料等の減免制度が利用できるようになり、さらには収入要件もかなり緩和されている。どのぐらいの収入なら無償化を受けられるのか解説する。
大学学費が無償化になる制度はなにがある?
大学の学費を補助する制度として、主に2つある。
(1) 奨学金(日本学生支援機構JASSO)
(2) 授業料等減免制度
JASSOには、給付型、貸与型(無利子・有利子)があり、給付型は返済不要となっている。貸与型の有利子型でも非常に低い金利が適用される。JASSOで給付または貸与を受けるには、家計基準、学力基準(評定平均3.5以上、または学習意欲があること)をクリアする必要がある。返済不要の給付型奨学金を受けられる場合、併せて授業料と入学金の減免を受けられる。
給付型奨学金や授業料等減免制度は、家計基準として家計が苦しい世帯向けのものだった。しかしながら、2024年に理系学部や多子世帯の中間所得層に対して対象が拡大し、さらには2025年には授業料等減免制度に関して多子世帯に対して所得制限なしとなる。
JASSOの給付型の家計基準とは?
JASSOの給付型奨学金の家計基準には、資産基準と収入基準がある。まず、資産基準として資産が生計維持者(例;父母2人)と子どもで2,000万円未満でなければならない。なお、生計維持者(例;父または母のどちらか1人)が1人のときは、1,250万円未満となる。
収入基準は家族構成によって異なり、以下の通りとなる。
なお、上記の収入基準はあくまで目安となり、実際の基準は社会保険料等そのほかの収入から控除される金額により決まるため、収入が基準の目安を少し上回りそうな場合でも、以下、奨学金相談センターに相談してみるのがおすすめだ。
減免制度の家計基準とは?
上記は奨学金の給付型と同じ基準となっている。
2024年から新たに設けられた制度で、一定の収入基準を満たしたうえで「私立理工農系の学科」または「多子世帯(扶養する子どもが3人以上)」に該当する場合でも授業料等の減免が受けられるようになった。
まず、私立大学の理工農系の学部に通う大学生について、以下の通り収入が高い中間所得層においても、授業料の減免が受けられるようになった。受けられる減免額は、文科系私立大学との差額分である。一方で、給付型奨学金は受けることができない。
次に、多子世帯においても、中間所得層を対象に給付型奨学金を満額支援の1/4受けられるようになった。多子世帯とは、扶養する子どもが3人以上いる世帯である。1人でも社会人となり扶養から外れると対象外となる。
2025年からは、上記多子世帯に対して、所得制限なしで授業料等の減免が満額受けられるようになる。
具体的な申し込み方法は?
JASSOの給付型奨学金は、毎年春と秋に在学中の大学を通してJASSOに申し込む。高校で予約申し込みする場合は高校3年生の春ごろに高校を通して申し込む。この給付型奨学金と併せて授業料等減免の申し込みを行う。減免は申し込みの前年以前にすでに支払った授業料に対しては対象とならないため、収入要件等が該当する場合には早めに申し込みしたほうがよいだろう。ただし、申込時期によってはすでに支払った分についても対象となる場合があるため、在学中の大学等に既払学費についてもよく確認するとよいだろう。
来年の2025年から始まる多子世帯の授業料等減免については、入学後に大学を通して申し込むようにしよう。
貸与型は子ども本人が返済する必要があるが、奨学金の給付型と授業料等減免制度は子どもの負担とならない。「共働きだから」「収入があるから」とあきらめずに、まずは、大学の学生窓口やJASSOに問い合わせて、制度を利用できるか確認しよう。
文/大堀貴子