糖尿病合併症があると起こりやすい病気とは?
糖尿病でその合併症がある場合、歯周病のリスクがより高まることを示すデータが報告された。オーフス大学(デンマーク)のFernando Valentim Bitencourt氏らの論文が「Journal of Dental Research」に8月5日掲載され、また欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。
糖尿病が歯周病のリスク因子であることはよく知られている。しかし、糖尿病の細小血管合併症(網膜症や神経障害など)を有する場合に、歯周病のリスクがより高まるのかについては、これまでに行われた研究は研究対象者数が少なく、調整されていない交絡因子が存在するといった限界点があり、結論が得られていない。Bitencourt氏らはこれらの点について、デンマークの大規模疫学研究(Health in Central Denmark study)のデータを用いた検討を行った。
解析対象は2型糖尿病患者1万5,922人。社会人口統計学的因子、生活習慣関連因子、健康状態などの潜在的な交絡因子を調整した統計解析の結果、網膜症(オッズ比〔OR〕1.21〔95%信頼区間1.03~1.43〕)および神経障害(OR1.36〔同1.14~1.63〕)の存在が、中等度から重度の歯周病と有意な関連のあることが明らかになった。
また、網膜症と神経障害が併存している場合はそのオッズ比がより高かった(OR1.51〔1.23~1.85〕)。脂質異常症がある場合に、重度の歯周病が増加することも示された。
歯周病を放置すると「最悪の結末」に
歯周病は自覚症状が乏しい病気だが、その影響について研究者らは、「治療せずに放置すると、歯を支えている組織が破壊され、最終的には歯を失う結果につながる」と解説。また論文の筆頭著者で歯科医師であるBitencourt氏は、「歯を失うと、噛む、話すといった基本的な機能に影響するだけでなく、自尊心にも影響する可能性がある。その結果として生活の質(QOL)が著しく低下してしまい、社会的交流に支障を来すこともある。よって、歯周病のリスクがより高い集団の特徴を見いだし、早期介入することが非常に重要だ」と、本研究の背景を語っている。
今回の結果について研究者らは、糖尿病によって生じる細小血管のダメージと、中等度から重度の歯周病との明確な関連を示すものと解釈している。両者の関連のメカニズムについてBitencourt氏は、「糖尿病が適切にコントロールされていない場合、高血糖によって炎症が起こり、時間の経過とともに目にも炎症が波及して網膜症を引き起こしたり、足などの神経に波及して神経障害を引き起こしたりする。
そのような過程で、歯周組織にも炎症が起こり、歯周病の発症につながる可能性がある」と解説。また、「歯周病の所見を口の中の健康問題として考えるのではなく、全身の炎症反応が亢進している人や糖尿病細小血管合併症のリスクが高い人を特定するのに役立てることが重要だ」と追加している。
さらに同氏は、「われわれの研究結果は、歯科医師が糖尿病患者の口腔状態に細心の注意を払う必要があることを示している。歯科と内科の医療従事者が協力することで、2型糖尿病患者、特に糖尿病合併症のリスクが高い患者が、より包括的な口腔ケアを受けられるようになり、その結果、口腔と全身の健康の双方が改善されるのではないか」と述べている。(HealthDay News 2024年9月11日)
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Abstract/Full Text
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00220345241259954
構成/DIME編集部