心房細動のリスクは短期間で低下する行動とは?
喫煙は心房細動のリスク因子だが、禁煙に成功するとそのリスクは速やかに低下することが明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のGregory Marcus氏らの研究によるもので、詳細は「JACC: Clinical Electrophysiology」に9月11日掲載された。研究者らは、「元喫煙者だからといって心房細動になると運命付けられてはいない」と述べている。
心房細動は不整脈の一種で、心臓の上部にある心房と呼ばれる部分が不規則に拍動する病気。このような拍動が現れた時の自覚症状として、動悸やめまいなどを生じることがある。しかしより重要なことは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなり、その血栓が脳の動脈に運ばれるという機序での脳梗塞が起こりやすくなる点にある。このようにして起こる脳梗塞は、梗塞の範囲が広く重症になりやすい。
喫煙と心房細動の関連について、本論文の上席著者であるMarcus氏は、「喫煙が心房細動のリスクを高めるという強力なエビデンスがある。しかしその一方で、喫煙者が禁煙した場合の心房細動に関するメリットは明らかでなかった」とし、「われわれは禁煙によって心房細動の発症リスクが下がるのか、それともリスクは変わらないのかを知りたかった」と、研究背景を述べている。
この研究には、英国の大規模疫学研究「UKバイオバンク」に参加している現喫煙者や元喫煙者、14万6,772人(平均年齢57.3±7.9歳、女性48.3%)のデータが用いられた。このうち10万5,429人(71.8%)は元喫煙者、3,966人(2.7%)は研究期間中に禁煙した人で、3万7,377人(25.5%)は喫煙を続けていた。
平均12.7±2.0年の追跡で、1万1,214人(7.6%)が心房細動を発症した。年齢、性別、人種、BMI、教育歴、心血管合併症の既往、飲酒習慣、累積喫煙量(パックイヤー)を調整した上で心房細動の発症リスクを比較。すると、現喫煙者を基準として元喫煙者ではリスクが13%低く(ハザード比〔HR〕0.87〔95%信頼区間0.83~0.91〕)、研究期間中に禁煙した人では18%低かった(HR0.82〔同0.70~0.95〕)。
この結果についてMarcus氏は、「喫煙者に対し、今から禁煙したとしても遅すぎることはなく、また過去の喫煙歴があるからといって心房細動を発症する運命にあるわけではないことを示す、説得力のある新たなエビデンスを得られた。現在喫煙している人や長年喫煙してきた人でも、禁煙によって心房細動のリスクを下げられる」と話している。同氏はまた米国心臓病学会発のリリースの中で、「われわれの研究結果はおそらく、禁煙後には速やかに心房細動のリスクが低下することを示しているのではないか」とも述べている。(HealthDay News 2024年9月13日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacep.2024.06.019
Press Release
https://www.acc.org/About-ACC/Press-Releases/2024/09/11/19/26/Quitting-Smoking-Reduces-Risk-of-Atrial-Fibrillation
構成/DIME編集部