米連邦準備制度理事会(FRB)は2024年9月17日、18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催。政策金利の誘導目標を0.5%引き下げ、4.75%~5.00%とすることを決定した。米利下げは4年半ぶりで、FRBがいよいよ金融引き締めからの転換に動き出したことになる。
今回は、その影響と今後の展望について三井住友DSアセットマネジメント チーフリサーチストラテジスト・石井康之 氏から関連リポートが到着しているので、概要をお伝えする。
米社債市場の利回りは低下基調
米利下げを受けた18日の米投資適格社債の利回りは利益確定の売りなどから小幅に上昇(債券価格は下落)した。ただし、同社債の利回りは7月以降、低下基調(債券価格は上昇基調)にある。
米ブルームバーグの同社債指数(Bloomberg US Aggregate Corporate Index)によれば、同社債利回りは6月末の5.48%から足元で4.69%と大きく低下した(9月18日時点)。米国の利下げ観測を背景に、社債利回りのベースとなる米国債利回りが低下したことが主因だ。
この間、企業の信用リスクを表す社債スプレッド(国債利回りに対する上乗せ金利)は一時景気悪化懸念で拡大したものの、米国経済の軟着陸(ソフトランディング)期待から概ね横ばい圏で推移した。社債スプレッドは6月末が0.94%、9月18日が0.93%とほぼ横ばいとなっている。
同社債指数の動きをみると、7月以降上昇傾向が鮮明だ。この期間の同社債指数のリターン(トータルリターン、米ドルベース)は+6.0%と、米S&P500種株価指数の+3.2%を上回った。国債との比較では、年限の近い中期ゾーンの米国債指数(5-7年)の同リターン+5.3%を上回っている。
■米投資適格社債への資金流入が続く
米投資適格社債市場が堅調な背景には、FRBの利下げ転換に加えて、米国経済のソフトランディング期待が挙げられる。
高金利下でも米景気が底堅く推移するなか、企業の信用リスクが高まらないことから、国債よりも高い利回りが期待できる社債に対する投資家の需要が強まっているようだ。
特に投資適格社債はデフォルト(債務不履行)率が限定的で、信用力が比較的安定していることなどを主因に、投資マネーが同社債市場に継続的に流入している。
米調査会社EPFRによると、23年以降、米投資適格社債ファンドへの資金流入が拡大。足元(9月11日)までの累積で558億ドル(約8兆円)が流入した。市場でFRBの利下げ観測が強まった7月以降は、資金流入の勢いが再び加速している。
【今後の展開】利下げ局面入りで米社債市場は堅調な展開に
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見において、今回の0.5%の利下げは継続的なものではなく、今後の利下げペースはデータ次第で会合ごとに決まることを示唆した。
また、FOMC参加者が適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」によれば、参加者が景気を熱しも冷ましもしない中立金利を3%程度とみており、今後も利下げを続けて金融引き締めを緩めていく方向性を示している。
■現段階では2026年にかけて政策金利を3%近辺まで引き下げると想定
三井住友DSアセットマネジメントでは、FRBが雇用と物価を睨みながら、緩やかなペースで利下げを続けると予想している。24年11月と12月に0.25%の追加利下げを行ない、その後は概ね四半期に一度のペースで0.25%ずつ引き下げ、26年にかけて政策金利を3%近辺まで引き下げると現段階では想定している。
米利下げ局面入りに伴い米長期金利は緩やかに低下すると予想する。また、米景気のソフトランディングを見込んでいるため、企業の信用力は大きく悪化はせず、社債スプレッドは比較的低水準で安定的に推移するとみている。
こうした環境下では、投資家のリスク選好姿勢が強まりやすく、社債への資金流入が続くとみられる。以上から、米投資適格社債市場は今後も堅調に推移すると考えられる。
構成/清水眞希