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腸の中で共存する生命体「腸内細菌」によって人生の満足度が変わる!?

2024.10.02

「腸内フローラ」、「腸脳相関」、「腸は第二の心臓」などと言う言葉をよく目にするようになりました。腸内環境を改善することが、心身の健康に重要であるという事実が広く認識されるようになったからです。

そしてその腸内環境のキーマンこそ、私たちの腸に住む別の生命体、「腸内細菌」なのです。

私たちのウェルネスにとって「思っていたよりも」ずっと重要な腸内細菌について、料理家であり、菌検査解説員(菌カウンセラー)である清水みのり先生にお話を伺いました。

腸の中で共存している生命体「腸内細菌」は10兆~1000兆、重さにして約2kg!

───腸内細菌がどのような働きをしているのか、教えていただけますか?

地球上には様々な菌が存在するわけですが、その菌たちは私達よりもはるか昔、47億年前からいると言われています。私達が誕生したのは20万年前ぐらいだと言われていますから、その時から菌と共存して生きた訳です。

その中でも特に菌が多く存在しているのが腸です。体に良い影響を与えてくれる菌の多くが苦手とする酸素が少ないですし、何しろ暖かいですから住みやすい環境なんです。

その証拠に腸内細菌で言えば、100兆から1000兆、重さにすると約2キロの細菌を私たちはお腹の中に抱えているんです。

───え!? そんなに⁇

考えると結構すごいですよね。みなさん驚かれます。私たちは自分だけで形づくられていると思いがちなのですが、実は自分の中に共存する別の生き物、生命体がいるということを忘れているんです。

「思っていたよりも」ずっと重要な腸内細菌。食べ物を分解し、栄養が行き渡りやすいようにサポート

───その腸内細菌が私たちのウェルネスに大きく関わっているんですか?

私たちは食べたものをそのまま吸収していると思いがちですが、そうではなくて、咀嚼した食べ物をさらに細かく分解して栄養を吸収しやすいようにしてくれるのが腸内細菌です。

菌が食べ物を細かくしてくれることで、腸壁のすぐ近くを通っている血管へ栄養が運ばれて、全身、全ての臓器に行き渡らせることができるんです。

もし私たちの腸内に菌がいなかった場合、1日に10食食べても栄養が足りない、と言われるぐらい栄養を吸収できないことが分かっています。これだけを考えても、腸内細菌がいなければ私たちは生きていけないとも言えるのです。

───腸内細菌のおかげで効率よく栄養を全身に巡らせることができて、それによって免疫力が上がり健康でいられるということですね。

そうです。ほかにも食べたものから乳酸菌だったり、酢酸、酪酸といった腸内環境がよくなる栄養素や物質を生み出したり、通称幸せホルモンと言われるセロトニンを作り出す腸内細菌もいます。セロトニンの90%は腸で作られることが分かっていますから、この腸内細菌の働きも重要です。

───「腸脳相関」「腸は第二の心臓」という言葉もよく聞きますが、これにも腸内細菌が重要な役割を果たしている?

先ほどの通り、腸の中では菌が食事を分解して栄養を送り出したり、体にいい物質やホルモンなどを生み出したり、様々な機能をサポートしながら活動しています。例えるなら腸は健康を維持するための重要な拠点であり、この一番大事な腸を整えれば、当然そのほかの部分の調子も整う訳です。

腸内細菌がバランスよく活発に働き腸内の環境が整えば、例えば、皮膚の調子が良くないときでも自然とコンディションが良くなったり、髪の毛の質が良くなったり、なんていうこともよくあるんです。

そして腸と脳は24時間交信している相関関係にあることが分かっています。お互いに協力し合って心身の健康を維持しているので、腸内環境の良さは脳の働きや心の健康にとっても大切なんです。

───腸の中には悪玉菌と呼ばれる菌もいますね? これはいない方がいいのでしょうか?

この菌はいい菌、悪い菌、この働きをする、みたいに考えがちですが、そうではなくて、菌それぞれが色々な面を持っています。

悪玉菌も悪いだけじゃないんです。悪い物質も確かに作るけれども、この菌たちが活躍する場面もあったりする。だから悪玉菌をゼロにするっていう発想は違うんですね。

───バランスが大切ということでしょうか?

そうです。本当に人間社会と一緒だなと思うんですけど、様々なタイプ、キャラクターの菌がいて楽しいというか、魅力的というか。菌の世界もそんな風に補い合いながら活動しています。

単体で動く菌はあまりいないので、「私ができないものはあなたが作って」、「それをくれたらあれを出すから」みたいにグループになって協力しているイメージです。

ですから腸内環境がよい状態というのは、悪玉菌も含めて、バラエティに富んだ腸内細菌がバランスよく存在して活動している状態と言えますね。

自分の菌が喜ぶ食事、していますか?

───心身の健康に欠かせない腸内細菌はどうやって増やしたり、活発にしたりすればいいのでしょうか?

実は腸内細菌を足すことはなかなか難しいんです。私たちの腸内細菌はだいたい3歳ぐらいまでに決まると言われていますが、主に、生まれてくるときや母乳を通して母親の腸内細菌を受け取っています。

「腸内フローラ」と言われていますが、先ほども言った通り狭い腸内にはその菌達が1000兆もいて、お花畑のように隙間なく咲き誇っているんです。そこに10億とか100億程度の菌を入れたとしても、定着する隙間もないですし、ほとんど影響を与えられないのは想像できますよね。

それよりも、もともと持っている菌の餌となる食事をして増やす、元気にするということが重要になってきます。

───ない菌を補うのではなく、いる菌を元気にするということですか?

そうです。「◯◯◯菌入り」と書いてある食品もありますが、自然のものと違って菌は人工的なものを分解することが得意ではありませんし、定着するまでにかなり時間がかかってしまいます。それよりは自分が持っている菌の餌となる、菌が喜ぶ食事を積極的に摂って育てるほうが簡単で効率的です。

菌の数が少ない方もいますが、そういう方でも食生活に気をつければもともといた菌が元気になって増えるんです。

───腸内細菌、腸内環境の概念が変わりました!

私のところに相談に来られる方達を見ていても、自分が持っている菌に合った食事をしていなかったり、間違えた方向性の食生活を送っていたりする方が圧倒的に多いです。

例えば、お肉を分解する菌を持っているのにビーガン生活をしていた方がいて、「ものすごく体調が悪いんです。生理も来ないんです」とご相談に来られました。「なぜビーガン生活をしているのですか?」と聞くと「なんとなく流行っているし、体にいいような気がしていたので」とおっしゃいました。

持っている菌の説明をして、「もしお嫌いじゃなければ、質のいい鶏肉などを少しでも召し上がってください」と伝え改善したところ、2、3日後には生理が来て体調も良くなった方がいらっしゃいます。

「糖質ダイエット」もよく耳にしますが、腸内で糖分を分解していいものを作り出してくれる私達にとって有益な菌もたくさんあります。そんな菌をお持ちの方が糖質制限をすると逆に調子が悪くなる可能性もあります。

健康に気を遣われて玄米食にしている方も多いのですが、腸内に玄米に含まれる不溶性の食物繊維を分解する菌がいなかったり、極端に少なかったりする方もいらっしゃいます。そういう方は無理して玄米を食べずとも、まずは白米に近い7分づき米の様な少しだけ精米したお米を食べた方が調子が良くなる事もあります。

その辺りが人それぞれ持っている菌が違うという興味深い点ですね。

───腸内環境を良くするためには、持っている菌が好きな食事を心がければいいんですね?

一番確かなのは腸内細菌検査で自分の腸内の菌を調べることなのですが、まずは日本人のほとんどが持っている菌に合った食事を摂ることをおすすめしています。

世界一特殊な腸内細菌を持つ日本人。菌活のためには伝統的で家庭的な和食がおすすめ

───日本人のほとんどが持っている菌が好きな食事とは、具体的にはどのようなものでしょうか?

私たち日本人は海にも山にも囲まれた生活をしてきて、世界中の人が食べないようなものを食べてきている民族なんですね。そのせいもあって、日本人が持っている腸内細菌は世界一特殊な菌とも言われています。ですから、結局はずっとご昔からご先祖様がしてきたような伝統的な食事に行き着くんです。ご飯とお味噌汁と野菜、きのこ、海藻、糠漬け、納豆など、日本人が昔から家庭で食べてきたものに尽きます。

例えば沖縄の長寿の方達もたくさん持っている菌なのですが、ワカメなどの海藻の成分が好きな菌がいるんです。私も検査をしていますが、日本人のほぼ100%の方がこの菌を持っています。

あとは日本人が古くから使っている発酵調味料、お醤油、みりん、味噌などは、昔からの作り方にこだわった質のいいものに変えることをおすすめしています。

───このような食事に変えていけば、何歳からでも菌が増えたり元気になったりして腸内環境が変わるのでしょうか?

変わります。カウンセリングをしていると、早い方だと2、3日で変わる方もいますし、ひと月続けていただければ大体の方は改善していきます。

私たち日本人にとって、先ほど申し上げた昔からの食生活が合わないということはほぼないと思いますので、昔から親しまれてきた食事に加え、昔ながらの製法で作られた発酵調味料を意識して摂ることで、体に変化が出てくると思います。

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