Instagramの短尺動画やYouTube動画など、個人や非IT企業でも動画制作の機会は増えている。誰もが手軽に作って発表できるようになっている中、動画の中身のクオリティーを高めてみるのも良いのではないだろうか。
いきなり撮るのではなく、まずは「絵コンテ」を作成して動画を作る流れが広がってきている。
今回は、絵コンテを手軽に作成できるiPad用アプリ「DROMI(ドローミ)」を手がけるフェンリルで映像制作も行うデザイナーに、絵コンテの作成意義から描き方のステップなど初心者向けにアドバイスしてもらった。
そもそも絵コンテって?
そもそも絵コンテとは、動画やアニメーション制作における設計図や指示書のようなもの。絵で映像がどうつながり、展開されていくのかを描き表す。実写の簡単な映像であれば絵コンテを作ることはないが、CMやテレビドラマ、映画など商用においては描かれることが多い。特にCMは映像制作のクライアントが存在することから、あらかじめ設計を見せる意味で必須となっている。
そんな絵コンテは、最近増えているInstagramのストーリーズやリール動画、YouTube動画、TikTok動画などのSNS動画制作シーンでも使われているようだ。
従来は手描きや静止画での絵コンテが主流だったが、近年はイラストや写真などを用いた動きのある「ビデオコンテ」も手軽に制作できるようになってきた。そのツールの一つが「DROMI」だ。
iPadで手早く絵コンテが描け、音楽をつけて簡単にビデオコンテにもできる。タイムライン形式の画面に直接絵を描き込めるのが特長だ。
絵コンテを作成する意義
絵コンテと聞いて、「作る必要あるの?」と感じている人もいるだろう。そこで絵コンテを作成する意義について、DROMIの事業責任者とiOS Developer、UIデザイナーを務めるきつね氏に話を聞いた。
「動画をイメージ通りに作るには、下書きとなる絵コンテの作成が重要です。映像制作にはたくさんのアプリケーションや撮影技術が必要で、テクニックを覚えるだけでも、初心者や個人で活動をされる方は難易度が高いのが現状です。テクニックを覚えたり、撮影した素材を後から組み合わせるだけでは、ストーリーや構成のある映像作品を作ることは困難です。
絵コンテを使ってストーリーを可視化して全体の流れを明確にすることで、撮影やアニメーションに必要な計画や準備も効率よく進めることができ、制作チームとのコミュニケーションも円滑になります。また、撮影に必要な計画や準備も効率よく進めることができます」
絵コンテの描き方の基本ステップ
絵コンテはどんな手順で描いていけばいいか。基本のステップをきつね氏に教えてもらった。
1.ストーリーボード用のテンプレートが入った用紙を準備する。
「シーンNo.やイラスト、セリフ、時間軸が一連で見れるものが望ましいです」
2.各シーンを表現するためにキャラクターの位置や動き、カメラアングルを描く。
3.シーンの説明や登場人物のセリフ、音声、効果音などを書く。
4.作成したイラストや写真などの絵コンテを映像ソフトに取り込みビデオコンテを作る。
5.タイムラインに合わせて、シーンの長さを明確に決める。
6.制作チームに見せてフィードバックや修正に対応する。
7.最終確認を行い、絵コンテをもとに撮影を開始する。
初心者が失敗しがちなこと
絵コンテを作る際に、初心者が失敗しがちな点について、次のことがあるという。
●絵をうまく描こうとする
「初めは絵をうまく描こうとすることに集中しがちになります。絵コンテの工程ではストーリーや構成が伝われば詳細に絵を描かなくても良いのです」
●動きをつけないと大袈裟な演出になりがち
「文章や静止画だけで作っていくと、漫画のように大袈裟な演出になってしまいます。実際は画面の構成や時間や音、ちょっとした演技などで十分伝わるものが、説明しすぎたり、逆にわかりくいものになってしまうのです。できるだけビデオコンテを作り、動きも細かく計画しておくのをおすすめします」
●準備が不足し、作成後にすべて作り直しになる
「尺が長く、凝った作品になればなるほど、作業の計画性が必要になります。特にチームで作業する場合、準備が不足すると最悪の場合、すべて作り直しなどが発生することもあり、大幅に無駄なコストがかかってしまいます。絵コンテやビデオコンテを作成する際に、撮影やアニメーションの具体的な準備物、必要な技術、イメージをとことん共有・検討することをおすすめします」