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歯科医が嘆く「虫歯の原因=歯みがき不足」の誤解

2024.09.25

厚生労働省の統計によると20歳以上の9割以上がむし歯に罹患した経験があり、20歳以上の3割の人は治療をしていないむし歯があります。また40歳以上では4割がむし歯が原因で歯を失っています。このようにむし歯は最も身近な疾患ですが、「むし歯の原因は歯磨き不足」と誤解している人が少なくありません。そこでむし歯のメカニズムから対策までを歯科医師の宮本先生に解説してもらいました。

意外に理解されていない「虫歯ができるメカニズム」

口の中の細菌の種類は約700種類あり、細菌は1g中に1,000億個の密度で生息しています。「1,000億個の細菌」と言われてピンと来ないかも知れませんが、これはウンチと同じ密度です。ウンチは褐色で存在がわかりやすいですが、口の中の細菌の塊(プラーク・バイオフィルム)の色は白く歯と同系色なので目立たないので認識しにくいのです。でも「口の中はウンチと同じくらいに汚い」と認識してください。

むし歯になるメカニズムをイラストで表すと、むし歯菌がツルハシやヤリを持って歯を攻撃するイメージを持たれるかもしれませんが、実はそれは違うのです。実際に歯を攻撃するのはむし歯菌が出す排泄物、つまりオシッコの様なものが歯の表面を溶かすことが原因となります。つまり、口の中は本当に汚いのです。

歯は口の中が中性に近いと安定し、酸性になればなるほど歯の中の成分(ハイドロキシアパタイト)が溶け出します(脱灰)。食べ物や飲み物が酸性であるほど口の中も酸性になり脱灰が続き、この状態が長時間になれば更に脱灰が進み、むし歯に近づきます。しかし次に何かを口にするまでの時間内に唾液の力で中性に戻すことで、歯は溶け出た成分も再吸収し安定します(再石灰化)。

オヤツ(間食)をダラダラ食べると、歯が安定する中性に戻るための時間が足らず、酸性のままなので脱灰が進みますから、むし歯リスクは上がります。つまり、むし歯対策の観点からすると、間食は量でなく時間の影響が大きいということです。「間食のダラダラ喰いはやめて、決まった時間内で召し上がってください」と説明すると、時々「だったら間食はまとめて一気に食べるようにします!」とオヤツの一気喰いを提案する患者さんもいますが、これは食べ物を喉に詰まらせたり、消化に悪かったりしますからやめてください。

虫歯のできやすさに個人差がある理由

むし歯はむし歯菌が原因で起こる感染症ですが、むし歯菌は常に口の中に生息する菌(口腔内常在菌)ですので、常にむし歯リスクを背負っていることになります。口腔内常在菌の種類や構成は人それぞれで、同じ人はいないと言っても過言ではありません。もともとむし歯菌が少ない人はむし歯になりにくいですし、むし歯菌の多い人はむし歯リスクが高いのです。むし歯菌が多いか少ないかは歯科医院の唾液検査で簡単に検査できます(自費診療・平均2,000~3,000円程度)。

歯の表面の質(エナメル質)が硬い人もむし歯リスクは低く、弱いとむし歯になりやすいです。基本的に、歯の質は自然には変えられませんが、フッ化物配合の歯磨き粉やうがい薬を使用することで、表面を強くすることができます。両方を一緒に用いることで効果は最も高くなるので、どちらか一方ではなく、両方を使ってむし歯対策をしてください。。乳歯や生えたての永久歯は特に歯質が弱いので、この時期のフッ化物の使用をお勧めします。

唾液には口の中の洗浄効果や殺菌作用、そして酸性になった口の中を中性に戻す能力(緩衝能)があるので、唾液の質が良い人や量が多い人はむし歯になりにくいです。一方、唾液の質の良くない人、量が少ない人はむし歯リスクは高くなり、唾液の質も前述の唾液検査でむし歯菌と同時に特定できます。

ちなみに、女性の方が男性より唾液の量が少なくなりやすく、特に中年~高齢者では唾液の組織(唾液腺)の活動が衰えて分泌量が減ってきます。このような場合、唾液腺マッサージがお勧めです。耳タブの下を人差し指と薬指で5cmの円を描くように押しながらマッサージすると耳の下の唾液組織(耳下腺)が刺激され、舌の上に出てくる唾液が多くなります。また下顎の骨の下縁の中央より少し喉側を同じようにマッサージすると、顎の唾液腺(顎下腺)から舌の下に唾液が出てきます。

また、口呼吸になると口の中の唾液が乾燥して唾液の効能がなくなり、むし歯になりやすくなります。通常、息は鼻で行いますが(鼻呼吸)、鼻炎やお口の働き(口腔機能)が悪い人、マスクの装着が頻繁な人は口で息をする口呼吸になりやすいです。唾液が乾燥すると口臭の原因にもなりますし、歯周病のリスクも上がります。口呼吸はその他にも、風邪やインフルエンザなどの感染症に罹患しやすくなりますし、姿勢が悪くなって運動機能が劣る原因になることもわかっています。

さらに、口呼吸は鼻呼吸と比べて、酸素を取り込む量が10%ほど少なくなるので、判断力の低下や頭痛、耳鳴り、吐き気などの悪影響の原因となる可能性も出てきます。さらに歯並びが悪い人も歯磨きが難しくなり磨き残しが出やすいので、むし歯リスクは高くなります。

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