30年後に世界はどうなっているのか
『2050年の世界 見えない未来の考え方』
著/へイミシュ・マクレイ
訳/遠藤真美
日本経済新聞出版 2750円
2050年という未来はそう遠くない。現在の延長線上で未来を考える際に、最も予測が外れにくい要素が人口動態である。2050年には、世界の人口は100億人弱になると予測されている。インドの人口は16億人を超え、アフリカで人口が急増する。この前提で未来を考えるとどうなるのかが出発点だ。
すでに限界を迎えつつある地球温暖化や水、食料、資源の問題。先進国の高齢化、資本主義による格差拡大、宗教など思想の対立、政治的分断、AIや遺伝子操作を始めとするテクノロジーの問題。現在抱えているこれらの問題がこの先にどうなるのか、様々な国やエリアというマクロな視点で読み解かれていく。
こうした今後の世界の成り行きは、私たちの日常とは無縁ではない。それはロシアによるウクライナ侵攻に端を発するインフレによって、身をもって実感しているはずだ。これから10年、20年先の世界の変化を想定しておくことは、現在を考える上でも欠かせない。
人類はテクノロジーで地球環境をコントロールできるのか
『世界から青空がなくなる日
自然を操作するテクノロジーと人新世の未来 』
著/エリザベス・コルバート
訳/梅田智世
白揚社 2970円
もし、地球温暖化を止められなかったら人類はどうするだろうか。おそらく人類は、この問題をテクノロジーで解決するかもしれない。
二酸化炭素を地中に埋めて岩石化する技術はすでに実用化されている。しかし、二酸化炭素を除去する様々な研究はあるが、コストを考えると実用化のハードルは高い。そこで現実的に考えると、ひとつの選択肢に辿り着く。それが「ソーラー・ジオエンジニアリング」だ。これは、大気圏にエアロゾルを撒いて、地上に届く太陽光エネルギーを減らして地球を冷やすという技術である。この方法であれば、比較的安価に迅速に地球を冷やすことができるという。もちろんリスクは未知数だ。本書のタイトル通り「世界から青空がなくなる日」がやってくるかもしれない。
温暖化、砂漠化、海の酸性化、土壌汚染。人類がテクノロジーによって、地球環境を改変してきた歴史と現在地点を確認し、未来のあり方を考えさせられる一冊である。
2040年に人手不足はさらに深刻化する
『「働き手不足1100万人」の衝撃』
著/古屋星斗、リクルートワークス研究所
プレジデント社 1760円
ニュースで「人手不足」という言葉を頻繁に見るようになった。人が集まらないことを理由に企業の倒産も増えている。そして、この問題はこの先ますます深刻化する。
今よりも高齢化が進んだ20年後、働く人は1428万人減少する。こうなってくると、もはや気合と根性だけでは現場は回らない。
本書によれば、現時点でも日本のシニア就業率は世界で断トツで、女性の就業率はアメリカよりも高いという。しかも、外国人労働者の獲得は、東アジアで競争激化し、日本が将来も外国人労働者を迎えられるかはわからない。
20年後、建設、運輸、医療、介護などの生活インフラが、これまでのように維持できない可能性が高い。暗い未来に思えるが、見方を変えて、働く立場から考えると、将来的に仕事を失う心配をしなくてもいいということではないか。人手不足ということは、労働者の立場を強くする。自分の先々の働き方を考える上でも参考にしたい。
〈選者〉bookvinegar 坂本 海さん
ビジネス書の書評メディア「bookvinegar」編集長。大学卒業後、半導体商社、ベンチャーキャピタルを経て、2011年、ブックビネガーを設立。これまで2500冊以上のビジネス書を紹介している。