謎解きだけではもったいない。入居者の暮らしを妄想せよ!
『変な家2 〜11の間取り図〜』
著/雨穴
飛鳥新社 1650円
間取りが入ったチラシを見るのが好きな人は一定数います。日本人の多くは教わらなくても間取りを読めますが、そんな国民性を反映してか「間取りミステリー」として社会現象となったのが本書です。
謎解きとして楽しむのはもちろん、自分ならこの間取りでどう暮らすか? を妄想すると、間取りの理解力の向上につながります。
秀逸なのが窓・ドアの扱い方です。窓・ドアの位置・種類・開きは、暮らしの質に大きく影響しますが、物件選びの段階では意識しない方が多いようです。
本書では、これらが重要な役割を担っており、イラストでも丁寧に説明されています。物語に関係する部分だけでなく、家全体の窓・ドアに注目すると間取りの不可解さも深まります。
独立キッチンで冷蔵庫置き場がない間取りが多いのも「何かがおかしい」感を増幅させています。
エンタメとして楽しみながら、間取りと暮らしが深い関係にあることを再認識させてくれる1冊です。
注文住宅の暮らしにくさを探すリアルな間取りミステリー
『この間取り、ここが問題です!』
著/船渡 亮
講談社 1034円
家事・育児・家族関係・セックスレス・老後や災害。これらの悩みは間取りに原因があると聞いてどう思いますか?
間取りには、このような問題を内包した様々なトラップが隠れています。
これら間取りのトラップを1級建築士がミステリーのように解き明かし、解決に導くのが本書です。
掲載された25の間取りは、ハウスメーカーが提案したもので、一見、すてきに見え、こだわりも感じられます。
ただ「暮らし」という視点で間取りをシミュレーションすると、冒頭のような問題が多数見つかります。
6回ドアを開閉しなければ台所までたどり着けない・安心して夜の営みができない・家事や育児で自分の時間を確保でないなど、「よかれ」と思って採用した間取りが、入居後の悩みの種になることがあります。
住んでからの工夫も大事ですが、間取り自体に問題があると効果も限定的です。
入居後の「こんなはずでは!」を回避するためにも、本書を参考にしてください。
家相は空間と心理の統計学。上手に利用して幸運を呼び込む
『開運ハウス 家がパワースポットになる住まいの整え方』
著/八納啓創
KADOKAWA 1540円
多くの住宅設計者は、家相を「現代では無意味」「非合理的」と捉えています。ある有名建築家も「家相はやめてほしい」と私に愚痴っていました。
家相の先生には間取りを考えず文句だけ言う人もいるので気持ちはわかります。
ただ本書を読んで家相の印象は変わりました。何しろ著者は、多数の住宅設計の実績がある建築家。
家相を「空間が人の心理に及ぼす一定の法則を統計学的に体系化したもの」と定義し、幸運を呼ぶ住まい方を教えてくれます。
家相は太陽の動きに関係しているので、日射取得などを意識するパッシブハウスの考えと相性が良いのも発見でした。住宅が高断熱化し、方位を意識して設計することが常識になりつつある現代だからこそ、家相は見直されるべきです。
物件選びに役立つのが、「四神相応」で地相を見る考え方です。よい気が集まる環境を知る方法で、エリアを決める参考になります。
家相を味方にして新生活をスタートさせたいですね。
〈選者〉家づくりコンサルタント・1級建築士 船渡 亮さん
複数の住宅会社に在籍後、独立。3000件以上間取り診断し、ブログ「かえるけんちく相談所」で情報発信中。著書に『この間取り、ここが問題です!』『セックスレスにならない間取り』(電子版)など。