コミュニケーションの「理論」がわかる1冊
『頭の回転が速い人の話し方
あなたの会話力が武器になるユニバーサル・トーク×戦闘思考力』
著/岡田斗司夫
フォレスト出版 1540円
今やYouTubeのトーク動画で大人気になった「オタキング」こと岡田斗司夫さんによる、話し方の本です。興味深いのは、とにかく会話がうまくいくようになる公式や理論のようなものを提示してくれるところ。普通、話し方の本というと、こんなふうに返答しましょうとかこんなふうに会話を切り出してみましょうとか具体例が多いものですが、本書は「どういうふうに訓練すれば頭の回転が速くなるのか?」「そもそも頭の回転が速い人の話し方とはどのようなものがあるのか?」といったそもそも論から始めるのです。そのため、一般的なコミュニケーション本に苦手意識を感じていた人も、もっと理論立ててコミュニケーションを語ってくれる本書は楽しめるのではないでしょうか。
人と人とのコミュニケーションの中にも、理論や公式は存在する。だからこそその理論を理解したうえでコミュニケーションを取ることが必要……そんなふうに教えてくれる名著です!
相手を見て、話し方を変えてみませんか?
『頭のいい人が話す前に考えていること』
著/安達裕哉
ダイヤモンド社 1650円
昨年大ヒットしたビジネス書です。元デロイトに勤めていたコンサルタントの著者が「昔は口下手だったけれど、今は話すのが上手になれている理由」について語ります。本書の特徴は、何といっても「頭のよさは他人が決める」とずばりと語っている点。
例えば、自分の頭がいいかどうか、気の利いたことをしゃべっているかどうか、そんなことを決めるのは、徹頭徹尾、自分ではなく他人である。とにかく相手に合わせて、相手がどんなことを求め、何を聞きたがっているのかを判断したうえで、相手に対して話し方や話す内容を変えるべきだ。そう本書は語ります。つまり、相手に合わせて話し方を変えることが、「頭のいい人」の話し方をする秘訣なのです。
コミュニケーションをどのように取れば、相手に良い印象を与えられるか? 職場でわかりやすく、重宝される話し方ができるのか? そんな問いにわかりやすく答えてくれる1冊になっています。
内容以上に「伝え方」があなたのアウトプットを良質にする
『超・箇条書き』
著/杉野幹人
ダイヤモンド社 1540円
人に何かを伝える時、少し立ち止まって、内容ではなく「伝え方」について考えてみる。それだけであなたのメールやプレゼンや企画書は、相手を動かすことのできる言葉に変わるのです。……本書はそんなことを明瞭かつ丁寧に教えてくれる1冊です。
この本のおもしろい点は、タイトルにあるような箇条書きの良さをただ伝える本では「ない」ところ。箇条書きはただの伝え方のオプションにすぎません。ただ考えたことを羅列するのではなく、全体の構成や言い方に気を配ることがいかに大切か、を説いた本なのです。ちなみに具体的に少しだけ本書の内容を書くと、伝え方のキーは「構造化、物語化、メッセージ化」にあると著者は説きます。詳しくはぜひ本書を読んで確かめてみてください。
どれだけいい内容を考え抜いたとしても、いい伝え方が身についていないと、いいアウトプットにはならない。そんな残酷だけど、重要な事実を教えてくれる本なのです。
〈選者〉書評家 三宅香帆さん
高知県出身。2017年、京都大学大学院在学中に作家デビュー。会社員を経て、2022年独立。著書は『人生を狂わす名著50』『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』など多数ある。