学び直しで広がる世界はこんなにも広大で魅力的
『学び直し大全』
著/堀 宏史
大学教育出版 2090円
「学び直しの鉄則」「本の選び方・読み方」「アウトプットや継続のコツ」「学び直しで得られるもの」といったコンテンツが密度濃く充実しており、「このやり方なら自分にも気軽に取り組めそう!」と感じさせてくれる1冊。
そしてメインとなる第3章「ジャンル別学び直しガイド」では、文学・統計学・世界史・アート・地政学など37ものジャンルについて「例えばこんなジャンルの学び直しはいかが?」といざなってくれるのです。
ジャンルごとに2冊のおすすめ本(書影つき)を具体的に挙げながらその領域を学ぶ意義を説き、そのジャンルの予備知識が全くない状態でも「ちょっと勉強してみたいかも」と思わせてくれる雑学知識も交えながら、新たな世界への興味を持たせてくれます。
リスキリングへの心理的ハードルを一気に下げてくれるだけでなく、学んだことを今後の人生にどう生かしていくかのヒントも満載なので、学び直しへの意欲も大きく高めてくれますよ。
「忙しいから」「もう年だから」と諦めかけている人に
『声優、東大に行く
仕事をしながら独学で合格した2年間の勉強術』
著/佐々木 望
KADOKAWA 1650円
超売れっ子声優さんが多忙な仕事の傍ら40代にして東大入試を突破して学生生活を送っていた(しかも周りに一切非公表で)というだけでもすごすぎるのですが、忙しいビジネスパーソンがいかに仕事と学びを両立していくかについての目からウロコなヒントが随所に散りばめられた超良書です。
「時間がない」「ほぼゼロからのスタート」という前提の中で、極めて戦略的(というか現実的)な勉強の指針を立てて実践する姿は、リスキリングだけでなく仕事上の知見としても参考になりますが、かといって決して力みすぎない感じで取り組まれているのもすごい。
東大受験を決めるまでの過程や考え方がとてもユニークだし、最初は四苦八苦していた受験勉強からだんだん学びの本質や神髄に目覚めていく過程が非常に興味深い。私自身も在学中に大ファンだった中里実先生(東大名誉教授)との巻末対談では、ある日突然学びが「結晶化」するおもしろさも説かれています。
人生100年時代の新しい学び方から生まれるイノベーション
『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる
学ぶ人と育てる人のための教科書』
著/落合陽一
小学館 1430円
リスキリングは子育て(子供の教育)とセットで考えることによって、指針をより明確化しやすくなるのではないでしょうか。「変化の激しい時代に、子供に何をどう学ばせるべきか?」は、ほぼそのまま自分のリスキリングにも当てはまる話であるはずだからです。
難解な著書が多い落合陽一氏の本史上、最も平易な書(!)だそうですが、読了にはそれなりのエネルギーは使うかも。しかし読み終える頃には学びに対する自分の価値観がアップデートされて、思考がクリアに整理された状態で今後の生き方や学び方を考えられるようになっているでしょう。そうまさにまっさらな子供のように。
私自身、多岐に渡るジャンルの資格・検定試験を受けまくることを通じてリベラルアーツの学びを深めてきた自負はあるつもりでしたが、落合氏ならではの「学びのアート的プロセス」「ロジックと感性の両立」といった学びの新しい視点が得られた1冊でした。
〈選者〉資格・勉強コンサルタント 鈴木秀明さん
富山県出身。オールアバウト「資格」ガイド。東京大学大学院修了。米国公認会計士、気象予報士ほか900以上の資格を取得。著書に『7日間勉強法』『小学生にもとれる! 資格・検定カタログ』など。