計画的偶発性理論が起業に成功をもたらす
『その幸運は偶然ではないんです!』
著/J・D・クランボルツ、A.S.レヴィン
訳/花田光世、大木紀子、宮地夕紀子
ダイヤモンド社 1650円
スタンフォード大学のJ・D・クランボルツ博士は「計画的偶発性理論」を提唱しています。好奇心、持続力、楽観性、チャレンジ、柔軟性を〝成功に欠かせぬ5原則〟とし、これらを意識して行動すれば、ビジネスチャンスが偶発的に生み出されるというもの。
この理論は、自己成長やキャリアアップだけでなく、起業家にとっても重要な要素。私自身の話をするのであれば、私はかつて広告会社でデザイナーとして働いていました。その後、独立して社外取締役として上場を経験しましたが、そこに至るまでいくつもの困難がありました。新しいことに挑戦すれば、予測不可能な状況に陥る場合があるもの。しかし、そんな事態になっても行動し続けたことで、偶発的なチャンスを得られたのです。
結果として、今は執筆業だけでなく、社外取締役や大学の特任教授として働いています。10年前とは全く異なるキャリアを築け、幸せな時間を過ごせるようになったのです。
起業家に必要な4つの重要な要素とは?
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』
著/ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ
序文/瀧本哲史 訳/関 美和
NHK出版 1760円
起業家に絶対に必要なスキルは何でしょうか? オンライン決済サービス「ペイパル」の創業者であり、戦略化であるピーター・ティールがその答えを教えてくれます。ティールは、「成功企業は競争ではなく市場を独占すべき」と提言。そのためには、「プロプライエタリー・テクノロジー(競合他社と差別化する強力なツール)」「ネットワーク効果」「規模の経済」「ブランディング」4つの要素で不可欠だという。
ペイパルを成功に導いたのが、少数精鋭のチーム。彼らは圧倒的な技術を持つ、優秀な人材を集める、大きな夢を持つ、柔軟な社内風土を醸成し、難問に立ち向かい逆風に耐えるチームを作ったことでナスダック市場へのIPOを実現したのです。ティールは「スタートアップではチームで働くことが原則で、かつ実際に仕事をやり遂げるにはそれを少人数にとどめる必要がある」と言います。スタートアップはビジネスモデルを確立するまでは少数精鋭を徹底すべきなのです。
困難を乗り越えるためのアイデアの創出法
『スタンフォードの人気教授が教える
「使える」アイデアを「無限に」生み出す方法』
著/ジェレミー・アトリー、ペリー・クレバーン
訳/小金耀彦
KADOKAWA 1980円
「すべての問題は、アイデアの問題だ」。これは、スタンフォード大学のイノベーターを育成する教育機関「dスクール」で教えているシンプルなキーワード。アイデアが競争における優位性を発揮し、将来の利益を生み出す原動力になると言っています。つまり起業家になりたいのであれば、常に好奇心を持って顧客を観察し、分析する力が求められるのです。
その力を養うために効果的なのが〝How Might We(我々はどうすれば◯◯できるか)〟という、好奇心を刺激する質問を繰り返すこと。新たなアイデアが浮かんだら、それに関連する質問を追加することで発想を広げることで、課題解決のヒントが見つかるのです。
起業家には他者と異なる視点を持ち、既成概念にとらわれずに発想できる好奇心、行動する力とやり抜く力(レジリエンス)が求められます。多くのアイデアを考え、試し、そして失敗を繰り返すことで、はじめてイノベーションを起こせるのです。
〈選者〉ビジネス書評ブロガー 徳本昌大さん
広告会社でコミュニケーションデザイナーとして働いた後、経営コンサルタントとして独立。多数のベンチャー企業の社外取締役やアドバイザー、情報経営イノベーション専門職大学(iU)の特任教授を務める。