ここ数年で認識が広まったスメルハラスメント。当事者は気づいていないことも多く、当人を傷つけない指摘の仕方にも注目が集まっています。そもそもの定義や、個人・企業が取り組める対策をチェックしましょう。
目次
近年、職場でのスメルハラスメントが注目を集めています。
体臭や香水の強い香りは、周囲の人々に不快感を与えるだけでなく、生産性を低下させる可能性があるのです。スメルハラスメントの定義や具体例、個人や企業ができる対策を紹介します。
スメルハラスメントとは?
スメルハラスメントは、職場環境を悪化させる要因として認識されています。においの感じ方には個人差があり、対応が難しい問題ですが、放置すれば深刻な影響を及ぼすでしょう。
■スメルハラスメントの定義と問題点
まず『ハラスメント』とは、言葉や行動によって相手を不快な気持ちにさせたり、不利益を与えたりする行為です。いじめや嫌がらせと同義であり、本人にその気がなくても、相手が不愉快に感じればハラスメントが成り立つ可能性があります。
中でも、『スメルハラスメント(smell harassment)』は、体臭や香水の過剰使用といった『におい』に関するハラスメントです。
一般的には、職場環境を悪化させる要因の一つとして認識されていますが、においの感じ方には個人差があるため、明確な基準を設けることが難しいのが実情です。
特に、自分のにおいは気づきにくく、本人に自覚がないまま周囲に不快感を与えているケースが多々あります。体質や病気に起因する場合もあり、一筋縄ではいかないセンシティブな問題といえます。
■職場で起こりやすいスメルハラスメントの具体例
職場で起こりやすいスメルハラスメントの具体例は以下の通りです。
- 体臭・口臭
- たばこのにおい
- 香水
- 柔軟剤
不規則な生活習慣による体臭や口臭は、周囲に不快感を与えます。喫煙率の低下に伴い、タバコのにおいに嫌悪感を持つ人が増えているため、喫煙者はタバコ臭対策が欠かせません。
香水を使用する際は、周囲への配慮が必要です。ほんの1プッシュでも、密閉空間では強烈に感じられることがあります。香り付きの柔軟剤によって体調不良を引き起こす人も珍しくありません。
スメルハラスメントが職場に与える影響
スメルハラスメントは職場環境にさまざまな悪影響を及ぼします。従業員の生産性低下や人間関係の悪化、さらには企業イメージや顧客満足度の低下まで、その影響は広範囲に及びます。
■集中力と作業効率の低下
スメルハラスメントの問題点は、従業員の集中力と作業効率に深刻な影響を与えることです。最近の研究では、不快なにおいは交感神経系のストレス反応を引き起こすことが分かっています。
例えば、強い体臭や香水のにおいがする同僚の近くで仕事をする場合、本来の業務に集中できなくなるでしょう。
不快なにおいによって、頭痛や吐き気を引き起こす人も珍しくありません。体調不良によって個人の生産性が低下すれば、チーム全体のパフォーマンスにも影響が出ます。
■職場の人間関係の悪化
不快なにおいは、同僚間のコミュニケーションを阻害し、協調性を低下させる可能性があります。例えば、強い体臭のある同僚を避けようとする行動が自然と距離を生み出し、必要な情報交換や協力関係の構築を妨げます。
当事者は、孤立感や疎外感を覚え、職場での居心地の悪さを感じるようになるでしょう。
このような状況が長期的に続けば、従業員のメンタルヘルスにも悪影響が及ぶ可能性があります。
■企業イメージと顧客満足度の低下
接客業や対面サービス業では、従業員の体臭や過度な香りが、顧客に不快感を与え、サービスの質を低下させる可能性があります。
例えば、ある高級レストランで、強い体臭や香水臭のあるホールスタッフが接客をした場合、顧客は料理の味・香りを存分に楽しめません。シェフの腕は一流でも、顧客満足度が著しく低下する恐れがあるのです。
また、オフィスやショールームに不快なにおいが充満していると、訪問客は『清潔ではない』『プロフェッショナルに欠けている』という印象を抱くでしょう。企業イメージが低下し、長期的には顧客離れや売上減少を招く恐れがあります。
個人レベルでのスメルハラスメント予防対策
人は、他者のにおいには敏感ですが、自分のにおいには鈍感です。相手を不快にさせないためにも、個人レベルでの対策が欠かせません。日常生活の中で簡単に実践できるスメルハラスメントの予防対策を解説します。
■清潔に関する習慣と食生活の見直し
体臭管理の基本は、日々の清潔にまつわる習慣にあります。小まめに入浴し、汗や体にたまったあかをきれいに洗い流しましょう。雑菌は皮脂やあかを餌にして繁殖するため、殺菌成分が配合されている洗浄料を使うのがおすすめです。
体臭は食生活の乱れによっても起こります。規則正しい生活を心掛け、質の高い食事と睡眠を取ることで、体臭の改善が期待できます。
口臭が気になる人は、歯磨きを徹底するとともに、定期的な歯科検診や歯のクリーニングを心掛けましょう。
■香水・柔軟剤の適切な使用
職場での香水や柔軟剤の使用は、適切な量と種類の選択が重要です。香水は、腕の内側や首筋など、体温で香りが広がる部位に付けるのが一般的ですが、周囲に配慮するのであれば、温度が低いウエストや太ももの内側にごく少量を付けるのが望ましいでしょう。
オフィスでは、シトラスやハーブ系など爽やかで軽い香りが好まれます。柔軟剤は、香りの強すぎないものを選び、使用量は推奨量の半分程度に抑えるのがポイントです。
香りは個人の好みが分かれるため、周囲の反応に注意を払い、必要に応じて調整することが大切です。