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【実家の空き家問題を考える】空き家対策特別措置法の改正によって何が変わった?

2024.10.05

かつて夢のマイホームと呼ばれ幸せの象徴でもあった持ち家。65歳以上の持ち家率はなんと8割を超えています。しかしいまや、その持ち家がどんどん空き家に。老朽化や管理不全で、安全や景観を脅かし、近隣住民に迷惑をかけるなど社会問題となっています。

その対策として2023年には空き家対策特別措置法が改正され、空き家を放置すると固定資産税が4倍以上跳ね上がることも。すでに実家が空き家になっている人はもちろん、いずれ空き家になるかもしれない人も、いまから対策を講じておくに越したことはありません。

そこで、今回は『待ったなし! 実家の空き家問題を片づける本 2024年最新版』(宝島社)から、空き家対策特別措置法の改正で何が変わったのかをご紹介。変更点を理解することで、どのように対策すればよいかも見えてくるはずです。

空き家対策特別措置法の改正で何が変わった?【実家の空き家問題】

空き家で悩んでいる人、将来実家が空き家になる恐れがある人必読!今、日本で社会問題になっている「負動産・腐動産」問題の現状と、厳しくなる法律のもとですぐにとりかかるべき対策について、不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんにお話をうかがいました。

■空き家ラッシュが日本中で始まっている

 人口減少が加速する日本で、急激に増えている空き家。2018年のデータでは全国に849万戸もの空き家があることが確認されています。これまで、空き家は地方にあるものと思われていましたが、近年は都市部でも、放置された空き家の増加が問題化しています。その背景について、空き家問題に詳しい牧野知弘さんはこう語ります。

「戦後から高度成長期にかけて、進学や就職で地方の若者たちが大量に都市部に出てきました。彼らは故郷に戻らず都会に家を建て、50年、60年という月日が流れました。そして彼らの親が亡くなり相続した田舎の実家が空き家になった。実は、これが空き家問題の始まりでした」

 牧野さんは、この地方に残された親の実家を「第一世代空き家」と呼んでいます。そして、現在は、団塊の世代が後期高齢者となり、首都圏に建てられた家までもが空き家化する「第二世代空き家」の問題が急増しているそうです。

■負動産・腐動産化する親の家が急増中

地方にある第一世代空き家は、愛着から売るに売れず、子世代から孫世代へと代々相続されていくケースが多いそう。

「相続しても、遠隔地にあるご先祖の家を管理するのは重労働です。周りも空き家だらけで売ろうにも売れません。ちょっと行かない間に庭木が繁殖し、動物が棲み着くなどすぐに荒れ果てていきます。やがて放置された家は、屋根や外壁がはがれた“腐動産”になっていきます」

 一方、第二世代空き家の中心は、東京郊外や近県のニュータウンに建てられた戸建て住宅です。これらは駅近マンションを好む今の若い世代のニーズからはずれた“負動産”になっているとか。

「ニュータウンに家を建てた世代も、今や80代を超えています。その家で育った子どもも50~60代になり、相続が頻発しているわけですが、親の家が『売れない・貸せない・自分も住まない』という三重苦に悩まされているのです」

 負動産・腐動産となった空き家は、お金をかけてまで手入れするのは損とばかりに、放置されるケースが多いのだとか。そして、ほったらかしが社会問題化しているのが今の空き家問題です。

■空き家を減らすために厳しい法改正が始まった

野村総合研究所によれば、2038年には全国の空き家が2303万戸に達し、約3軒に1軒は空き家という時代がやってくると推計しています。

 牧野さんは、「空き家を放置することはデメリットしかない」と警告します。「これまでは、空き家も倒壊の恐れのある危険な空き家でない限り、罰金や強制的に解体される処分はされず、固定資産税も軽減措置が適用されていました。しかし、空家等対策の推進に関する特別措置法が改正され、景観、防犯、安全面などで問題のある空き家の持ち主には、固定資産税を更地として課税するなどの、厳しいペナルティを発動し、空き家を適正に管理するよう、強いプレッシャーがかけられます」

■今すぐ空き家対策にとりかかりましょう

 牧野さんは、空き家にまつわる法改正には「飴と鞭」があるといいます。

「きちんと管理しない空き家は固定資産税を4.2倍にするぞ! 相続登記をしなければ罰金だぞ! というのが法改正の鞭です。一方で、相続したけれどどうにもならない持て余した土地を国が引き取ってくれる相続土地国庫帰属制度のような飴も用意しています。

 法改正の中身を理解して、うまく活用すれば、いらない空き家から解放されるチャンスはあります」

 空き家は、放置すればするほど、劣化して資産価値がなくなります。かといって、ずっと管理しながら持ち続ければ、固定資産税をはじめとするさまざまな維持管理コストで、自分の財産を減らしていくことになります。

 さまざまな事情で、売却や賃貸ができず、持ち続けている空き家のゆくえを、今こそ、考え直すときです。

 法改正で、待ったなしのカウントダウンが始まっています。空き家対策の準備にとりかかりましょう。

空き家対策が待ったなし!の理由

[1]住まない家を管理するコストで自分の資産が減る

[2]手入れをせずに放置するとご近所トラブルの原因に

[3]役所から管理不全と認定されると固定資産税が4.2倍に!

[4]時間がたてばたつほど資産価値が落ちて活用できなくなる

[5]放置した結果、売却や賃貸のために莫大なリフォーム費用が発生

[6]ほったらかしのまま自分も亡くなると次の世代も大迷惑

[7]相続登記をほったらかすと過料10万円以下
※過料:行政の秩序を守るために違反者に制裁として金銭的負担を課すこと

★ ★ ★

待ったなし! 実家の空き家問題を片づける本 2024年最新版』(宝島社)1320円
監修・牧野知弘

監修/牧野知弘(まきの ともひろ)
不動産事業プロデューサー、経済・社会問題評論家。東京大学経済学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストン コンサルティング グループ、三井不動産などを経て、オラガ総研代表取締役兼全国渡り鳥生活倶楽部代表取締役。著書に『知らないと大損する![図解]実家の「空き家問題」 をズバリ解決する本』(P H P研究所)、『負動産地獄 その相続は重荷です』(文春新書)ほか多数。

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