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過去のある日を指して「過日」と表現することがありますが、「先日」や「先般」とは何が違うか気になったことはありませんか。
ビジネスや改まった席でも使われる言葉のため、意味を正確に理解しておくことは大切です。
過日とはどれくらい前を指すのか、また、他の過去を指す言葉とは何が異なるのかまとめました。ぜひ参考にして、「過日」を使いこなしてください。
過日とはどれくらい前のこと?意味をご紹介
「過日(かじつ)」とは、過ぎ去ったある日のことです。「先だって(せんだって)」とも言い換えられます。
・過日お目にかかりました折にお渡ししたパンフレットは、ご覧いただけましたか。
・過日はご挨拶もできず、誠に失礼いたしました。
過日は、過去のある日のことであり、どれくらい前のことを指すかは、そのときどきで異なります。しかし、いつのことだったのか覚えている程度の過去であれば、「昨日」や「3日前」のように他の表現を使うこともあるため、いつのことか明確には覚えていない前のことを指すケースも多いと考えられます。
■ビジネスや改まった席での使い方
過日は、家族や友人との親しい会話よりは、ビジネスシーンや改まった席などで使われる傾向にあります。
・過日ご紹介いたしました新商品はこちらです。ぜひ、お手に取ってご覧ください。
・お忙しいなか、足をお運びいただきありがとうございます。過日よりも盛大な会になりました。
■メールや手紙での使い方
過日は、書き言葉として使うこともあります。メールや手紙で過去について触れるとき、あえて正確な月日を書かずに「過日」と表記できます。
・過日お心のこもった素敵なお手紙をいただきました。お礼が遅くなり、申し訳ございません。
・過日のイベントで撮影した写真を同封いたしました。ぜひお受け取りください。
過日以外の過去のある時点を指す言葉
過日以外にも、過去のある時点を指す言葉は多数あります。日常会話やビジネスシーン、あるいは書き言葉として使われる表現をいくつかご紹介します。
■先般(せんぱん)
「先般(せんぱん)」は過日と同じで、過ぎ去ったある日を指します。
・先般承りました件、承知いたしました。
・先般申し上げましたように、この企画は一から見直しとなりました。
■先日(せんじつ)
「先日(せんじつ)」は、近い過去のある日を指す言葉です。
・先日お会いしましたね。
・先日のことを覚えていますか。
何年も前の日については、先日を使いません。個人によって時間に対する感覚は異なりますが、数日前~数週間前程度なら、先日と表現しても違和感が少ないでしょう。
・大学を卒業されたのは先日のことのように感じていましたが、もう1年も経ったのですね。
・先日会ったときには、確か白い服を着ていたはずだ。去年も見た気がするから、お気に入りなのかな。
■先頃(さきごろ)
「先頃(さきごろ)」は、今日から少し前のことを指す言葉です。「頃」は、その前後を漠然と示す言葉のため、先日のように1日に限定されず、今よりも少し前の期間を指して使われることがあります。
・これは、先頃発見された化石だ。
・先頃、ああいったポーズが若者の間で流行っているらしい。
■この間(このあいだ)
「この間(このあいだ)」は、過去の1日を指す言葉です。音変化により「こないだ」と発音することもあります。
・この間はお世話になりました。
・この間の日曜日に会ったばかりだが、また近いうちに会いたいと考えている。
「この間」は過去の数日を指すこともあります。
・この間から排水溝からポコポコと音がする。何か詰まっているのだろうか。
・この間の旅行は本当に楽しかった。
■かつて
「かつて」とは、過去のある一時期を表す言葉です。特定の1日ではなく、ある程度の期間があるときに使われます。
・かつて京都にいた頃、家からほど近い路地裏の食堂によく通った。
・かつての名選手だが、今では実業家として名前が知られている。
また、後に打消しの語を伴って、「今まで一度もない」という意味で使われることもあります。
・この街はかつてないにぎわいを見せている。テレビにもよく取り上げられるようになった。
・彼女の悪口は、いまだかつて聞いたことがない。
漢字では、「嘗て」や「曽て」と表記します。
■往時(おうじ)
「往時(おうじ)」とは、過ぎ去ったときを指す言葉です。
・母校を訪ねて往時をしのんだ。
・往時は活気のある街だったが、今は見る影もない。
■往日(おうじつ)
「往日(おうじつ)」とは、過ぎ去った日のことです。ただし、特定の日を指すのではなく、昔を漠然と指すときに使われます。
・往日を顧みる機会は少ない。
・アルバムを開けると、往日の思い出が鮮やかによみがえった。
往日や往時は、「昔日(せきじつ)」とも言い換えられる場合があります。昔日とは過去の日々のことで、昔のことを指します。
・だいぶ大人びたようだが、よく見ると昔日の面影を残している。
・昔日の苦労は、今では笑い話だ。
過日とは反対に将来のある時点を指す言葉
過日や往時は過去を指す言葉ですが、次の言葉は将来のある時点を指して使われます。
・他日(たじつ)
・後日(ごじつ)
・いつか
それぞれの意味や違いについて、例文を通してご紹介します。
■他日(たじつ)
「他日(たじつ)」とは、将来における不定の日を指す言葉です。明確に日にちが決まっているときは「他日」とはいわない傾向にあります。
・他日お目にかかりましたときに、サンプルをお渡しいたします。
・今日は本当に忙しいので、また他日来てもらえないだろうか。
他日は、過去のある日についても使われることがあります。
・他日とは別人のようで、思わず見違えてしまった。
・他日あの部屋で起こったことは口外しないでください。約束しましたよ。
■後日(ごじつ)
他日は日にちが決まっていないときでも使える便利な表現ですが、将来だけでなく過去を指すこともあるため、誤解が生じるかもしれません。確実に将来のことだとわかる表現を使いたいときは、「後日(ごじつ)」を選択するのも一つの方法です。
後日とは、その日より後の日や、ある出来事よりも後の日を指します。
・後日、お伺いします。
・あのときは彼が犯人だとばかり思っていた。後日になって真相を知ったよ。
現代では「ごじつ」と発音しますが、古くは「ごにち」「こうじつ」と発音していたようです。
■いつか
「いつか」とは、未来の不定のときを表す言葉です。具体的に、日にちが決まっていない場合に使われます。
・いつかお子さまにもお会いしたいです。
・あの国には、いつか行ってみたい。
「いつか」は、未来だけでなく過去の不定のときを指すこともあります。
・その本はいつか読んだ気がするが、いつ読んだのかは思い出せない。
・いつか歩いたことがある道だ。なんとなく覚えている。
時間関連の言葉を整理しておこう
過日は、過去のある日を指す言葉です。過去や将来を指す言葉は多くありますが、日にちが不定のものや特定の日・期間を指すものなどもあり、整理して適切に使い分ける必要があります。
また、「いつか」や「他日」のように、過去と将来のどちらにも使える言葉もあります。話の内容によっては相手に「終わったことなのだろうか、これからのことだろうか」と疑問を与える可能性があるため、言い換えられるときは言い換えておくようにしましょう。
構成/林 泉