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自分と似ている要素がある人に対して腹が立ったり、親や兄弟姉妹にイライラしたりすることってありませんか?
「同族嫌悪(同属嫌悪)」とは、類似する要素がある人や近親者を嫌悪することです。「近親憎悪」とも表現されることもあります。
なぜ同族嫌悪が起こるのか、また、回避する方法についてまとめました。ぜひご覧ください。
同族嫌悪とは?意味をご紹介
同族嫌悪とは、同じ血筋・部族・系統に属しているものを憎み嫌ったり、強い不快感を持ったりすることです。
例えば、テレビで活躍しているあるタレントに対して、好感を持っていたとしましょう。歯切れのよいコメントや知的な印象は、いずれも好ましいものだったとします。
しかし、そのタレントが自分と同じ大学の出身だと知り、急に不快感を覚えるかもしれません。そのように、自分と共通する何かがある同族、この場合は同窓生に対して、理由のない嫌悪感を持つことを同族嫌悪といいます。
また、薬剤師として病院の薬局で働いているとします。処方と異なる調薬を行ったことに対して、医師に指摘されたときは腹が立たなかったのに、同じことを薬剤師に指摘されると、無性に腹が立つかもしれません。これも同じ職業という同族に対する嫌悪といえます。
参考:デジタル大辞泉
■同族嫌悪と類似する言葉
同族嫌悪と同じく、共通する要素がある人に対して嫌悪感を持つことを指す言葉としては、次のものが挙げられます。
・近親憎悪
・骨肉の争い
・骨肉相食む
近親憎悪とは、親族同士、または階層や性質などの似た者同士が、ひどく憎み合うことです。
・近親憎悪の感情をたきつけて、貴族たちの不正に目が向かないようにした。
・彼女が同性ばかり悪くいうのは、近親憎悪の感情だろうか。
骨肉の争い(こつにくのあらそい)とは、直接血のつながっている親子・兄弟などが争うことです。
・遺産をめぐって、骨肉の争いを繰り広げた。
・歴史を見ると、骨肉の争いは珍しいことではない。
骨肉相食む(こつにくあいはむ)とは、肉親どうしが争い合うことです。
・恥も外聞もなく骨肉相食む状態が繰り広げられている。
・骨肉相食む争いに勝利しても、空しいばかりだ。
参考:デジタル大辞泉
■同族嫌悪と反対の意味を持つ言葉
似ている要素がある人や親族を憎むとは限りません。似ているからこそ相手を理解し、仲よくなれることもあります。次の言葉は、同族に対して好意・好感を持ったり、集まったりすることを意味します。
・類は友を呼ぶ
・類似性バイアス
類は友を呼ぶとは、気の合った者や似通った者が自然に寄り集まることです。
・類は友を呼ぶというのか、わたしと友人は共通点が多い。
・いつの間にか趣味の仲間ができた。類は友を呼ぶとはこのことだ。
類似性バイアスとは、自分と似た特徴や要素を持つ人に対して好意を抱く現象です。「同じ出身地と知って親しみを感じた」「釣り好きの人には悪い人はいない」のように、自分との類似点を見つけると根拠なくよいように感じることを指します。
相手に対して好意を持つという点ではよい現象といえますが、次のように不公平な対応につながることもあるため注意が必要です。
・面接官が自分と同じ出身校の学生を不当に高く評価する
・教師が同性の生徒ばかり親しく接する
参考:デジタル大辞泉
同族嫌悪が起こる理由
他人に対して何らかの評価をするときは、その人個人を中立な立場で表化すべきですが、「自分と共通する何か」に注目してしまうことがあるようです。「似ているから嫌いだ」という同族嫌悪も、「似ているから好きだ」という類似性バイアスも、いずれも偏りのある見方といえるでしょう。
ここでは、同族嫌悪が起こる理由についてご紹介します。
■自分の価値を相対的に引き上げるため
自分と共通する面を持つ人を実際よりも低く評価することで、自分の価値を相対的に引き上げたいという気持ちが働き、同族嫌悪が起こる可能性があります。
例えば、いわゆる超難関大学の出身者が、同じ大学の出身者を不当に「頭がよくない」と評価することがあります。そのように評価することで、暗に「自分はその人よりも賢い」とアピールし、「超難関大学のなかでも賢い部類に入っていた自分」を演出しているのかもしれません。
■自分自身のよくない部分を見せられるため
自分と共通する面を持つ人に対して、まるで自分を見ているかのような気持ちになり、不当に嫌悪するケースもあります。
例えば、人前で大声で笑う父親を「にこやかでよい」と思っていても、知人に「笑い方がお父さんと似ているね」と指摘されてから、父親の笑い方や父親自身を嫌うようになるかもしれません。
■相手が自分よりうまくやっているように見えるため
自分と共通する面を持っているのに、自分よりも恵まれていると思われる人に対して、同族嫌悪を感じることもあるようです。相手が自分よりもうまくやっているように見えるのが、腹立たしい気持ちにつながるのかもしれません。
例えば、出身校も年齢も同じ同僚と仲よくしていたのに、同僚が高年収のパートナーと結婚したと知り、急に憎むようになることがあります。
■相手が同族嫌悪しているため
明らかに共通点がある人が、自分に対して根拠のない憎悪を見せてくることもあります。嫌われても相手に好意を見せられればよいのですが、同じように憎悪を持ってしまうかもしれません。
同族嫌悪を回避するには
共通点がある人を嫌う同族嫌悪は、周りから見てもあまり好ましいものではありません。同族嫌悪を回避するヒントをご紹介します。
■自己を受容する
自分自身の長所だけでなく短所も受容すると、同じ要素がある人に対して寛容な気持ちを持ちやすくなります。自分を無理に好きにならなくても、そのままの状態で受け入れてみましょう。
■嫌悪する理由を分析する
ある人に対して「嫌いだ」と感じたときは、嫌悪する理由を分析してみましょう。もし同族嫌悪なら、「似ているからといって嫌うのは変だ」と自分を戒められるかもしれません。
同族・非同族ではなく本質を見極めよう
自分と似ているかどうかは、他人を評価する基準とはなりません。同族・非同族ではなく、その人の本質に注目するように意識してください。自分という比較対象がいなくなることで、その人本来のよさが見えてくることもあります。
構成/林 泉