オルカンのデメリット
オルカンには分散投資のメリットがありますが、全世界に分散しているという点が、逆にデメリットにもなり得ます。つまり、成長性の高い国やセクターへの集中投資が難しいという点です。たとえば、テクノロジー分野や新興国市場に注目したい投資家にとっては、オルカンだけでは物足りないかもしれません。
また、分散が進みすぎているために、個別企業や特定の国の爆発的な成長によるリターンを享受しにくいという側面もあります。全世界を平均的にカバーするオルカンは、極端なリターンを狙うというよりも、安定的に資産を増やしたい人向けの商品です。
さらに、オルカンのコストについても考慮すべきです。全世界の株式に投資するための運用コストは低めに設定されていますが、ファンドによっては手数料がかかることもあります。長期的に投資を続ける場合、この手数料の差が大きな影響を及ぼすことがあるため、手数料をよく確認して選ぶことが重要です。
リスク別の投資先の提案
では、オルカンだけでは物足りない、もしくはリスク分散が不十分だと感じる投資家に向けて、どのような投資先が考えられるのでしょうか?ここでは、リスク許容度別にいくつかの選択肢を提案します。
【リスク許容度の高い投資家向け:新興国株式や個別株】
新興国株式への投資は、高リスク・高リターンを狙う投資家にとって魅力的な選択肢です。新興国市場は成長率が高く、特に中国やインドなどのアジア新興国は今後の成長が期待されています。たとえば、MSCIエマージングマーケットインデックスなど、新興国市場に特化したETFやインデックスファンドを活用することで、オルカンではカバーしきれない成長市場へのアクセスが可能です。
また、GAFAMなどのテクノロジー関連の大型株やIPO銘柄を保有することで、オルカン以上の成長をもたらすことが期待されます。
【中リスク投資家向け:先進国株式やセクター型ファンド】
中リスクを好む投資家には、先進国株式や特定のセクターに焦点を当てたファンドが適しています。また、特定のセクターに焦点を当てたETFやファンドも、分散投資をしながら成長分野に賭ける手段として有効です。特に、ハイテクやヘルスケアなどのセクターは今後も成長が見込まれており、長期的な資産形成に向いています。
【低リスク志向の投資家向け:債券や金などの現物資産】
低リスクを好む投資家にとって、債券や金などの現物資産は重要な選択肢です。債券は株式と比べてリスクが低く、安定したリターンを提供します。特に国内債券ファンドは、元本を守りながら堅実に資産を増やしたい人に向いています。
また金は経済危機やインフレが進行する際に資産を保護する手段として、長らく重宝されてきました。特に近年の市場環境では、株式や債券と逆相関の動きをすることが多く、分散効果が期待されます。また、ETFを通じて簡単に金投資ができるため、初心者にもアクセスしやすい資産です。債券と金などの現物資産を組み合わせることで、株式市場のボラティリティを抑えつつ、安定したリターンを得ることが可能になります。
まとめ:オルカンは良いが、それだけでは不十分?
オルカン(オールカントリー)は、全世界に分散投資できるという優れた商品であり、特に初心者や長期投資を考える投資家にとっては、手軽で効果的な選択肢です。世界の株式市場全体に投資することで、リスク分散が自然にできる点や、長期的な成長を期待できる点は非常に魅力的です。
しかし、オルカンの大きな特徴である「全世界分散投資」は、米国市場への依存度の高さという側面も含んでいます。したがって、完全にリスク分散ができているとは言えず、特に運用資産が多い投資家にとっては、オルカンだけに頼るのは不十分と言えるでしょう。
そのため、投資家は自身のリスク許容度や投資目標に応じて、オルカンを中心に据えつつも、他の投資先を組み合わせる戦略を考える必要があります。
また新NISAの枠を最大限に活用し、長期的な資産形成を成功させるためには、オルカンの優れた点を活かしながらも、自分に合ったリスクとリターンのバランスを見極め、適切な分散投資を行うことが大切です。
何より無理せず、継続できる金額から投資をスタートしてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/attention/03/03_06.html
文/鈴木林太郎