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中継貿易で栄えた国から観光立国へ!サッカー日本代表が15年ぶり訪れたバーレーンの現在地

2024.09.18

観光分野に力を入れている現在のバーレーン

 そんなバーレーンを経済的側面から見ていくと、第2次世界大戦前から石油採掘をスタート。これは湾岸諸国最初で、1960年代までは石油産業を中心に発展した。だが、1970年代から石油の枯渇が懸念され、石油精製や石油化学、アルミ精製、貿易など産業の多角化を図った。

 特に金融に関しては、いち早く力を入れたこともあり、2000年代初頭まではドバイやドーハをしのぐ重要な地位を築いていたようだ。その後、ドバイの急成長で地位低下を余儀なくされたが、中東の中では金融の拠点として今も機能しているという。

バーレーン要塞から見る市街地と美しい海

 筆者の知らなかった空白の15年間で大きく変化した1つが観光分野だろう。2004年に中東初のF1グランプリを誘致。それ以降、毎年継続的に開催され、2024年も2~3月にバーレーン。ナショナル・サーキットで行われた。さらに同国では2022年に2036年までの超長期契約を締結。今や国家的な大イベントと位置づけられている。

 2013年にガルフカップ(中東地域のサッカー大会)、2014年にはアジア男子ハンドボール選手権を実施している。さらに2023年にはバレーボール男子アジアクラブ選手権も行われており、積極的にスポーツイベントを推進していこうという姿勢も窺える。

 しかしながら、サッカーの聖地とも言われるバーレーン・ナショナル・スタジアムはやや老朽化が気になる。同競技場は約3万人収容の多目的スタジアムで、サッカーの試合だと陸上トラックがどうしても邪魔になってしまう。記者会見場やメディアルーム、VIPゾーンなどは2013年のガルフカップ開催時にリノベーションがなされたため、確かにキレイで使いやすく、インターネット環境も整っていたのだが、肝心のスタンドが見づらく使いづらいのは残念だ。今回の試合時もやはりネットがつながらず、試合配信動画をチェックすることはできなかった。今の時代、そこは重要なポイント。スマートスタジアム化は早急の改善事項と言えそうだ。

 このような課題はあるものの、美しいビーチでバカンス気分を味わえるのはこの国の魅力。2008年時点では見どころは国立博物館とアハマド・アル・ファテク・モスクくらいしかなかったが、今ではペルシャ湾岸沿いの高級ホテルが数多く立ち並び、ドバイやドーハに匹敵するほどのリゾートムードが漂っているのだ。

美しい海を見えるカフェでリゾートムードを満喫

メソポタミア文明とインダス文明を繋ぐディルムン文明の中心地。一見の価値あり

 筆者も取材の合間を縫って、同国北部にある世界遺産のバーレーン要塞に足を運んでみたが、遺跡と青々とした海の両方を大いに堪能できた。残念ながら遺跡が臨時休業で、中に入ることはできなかったのだが、メソポタミア文明とインダス文明を繋ぐ文明とされたディルムン文明の中心地として栄えたこの地は確かに一見の価値がある。

 遺跡の隣には博物館があり、そちらは見学することができたのだが、イスラム様式やポルトガル様式など多彩な建造物群を目の当たりにできる。しかも、一番古いもので紀元前2300年の遺跡や出土品もあって、大いに勉強になる。歴史的な遺跡と美しい海を同時に眺めるだけでも本当に楽しい。バーレーンを訪れるなら、ここは必ず行きたいところだ。

 サッカー日本代表の取材に長年、携わっていると、中東諸国には毎年のように行くことになる。近年はカタールやUAEが多かったが、今回のバーレーンのように10年以上も足を踏み入れていなかったところに再訪するケースもある。年月が経過している分、国の発展、中東の勢いを実感する機会になったのは間違いない。国際情勢や経済的側面はもちろんのこと、サッカーにおいても重要な地位を築きつつあるこの地域を、我々日本人はもっと深く知るべきだと改めて感じた。

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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