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期待を裏切られる意外な組み合わせ!?タヒチの生魚をココナッツミルクで和えた「ポワソン・クリュ」

2024.09.20

海外B級グルメ列伝「世界はうまいで満ちている」

「絶品B級グルメ」とか「ソウルフード」と呼ばれるものは日本全国にある。で、みなさんはこう考えたことはないだろうか。「日本各地にあるんだったら世界各地にも当然B級だけど超絶うまいものがあるんじゃないか?」と。

というわけで世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターたちの集まり「海外書き人クラブ」が、居住国や旅先で出会った「絶品ソウルフード」を大紹介するシリーズ。今回はフランス領ポリネシア(タヒチ)から「ポワッソン・クリュ」をお届けする。

今回の紹介する一品。ひとことで表現すると「生魚のココナッツミルク和え」

フランス領ポリネシア(タヒチ)の定番メニュー「ポワソン・クリュ・オー・レ・ドゥ・ココ」(魚のココナッツミルクマリネ)

マグロの赤身のブツ切りを冷たいココナッツミルクで和えたもの。そう聞いて食指が動く日本人はたぶん少数派だろう。私もそうだ。理由は「刺身は醤油(または薄造りならポン酢)」という「日本人の常識」から逸脱しているからである。

だがひとまず「常識の殻」を打ち破って考えてみても……ココナッツミルクと聞いてまず思い出すのは東南アジアなどの熱帯地方で食べられる「ココナッツライス」。それ自体はエスニック料理と組み合わせれば絶品だが、「刺身とあう」のはイメージできない。「絶対にしつこいはず」「刺身の繊細さを壊す」としか思えない。

だがいい意味で期待を裏切られた。

その料理の名は「ポワソン・クリュ・オー・レ・ドゥ・ココ」(魚のココナッツミルクマリネ)。略して「ポワソン・クリュ」。フランス領ポリネシアの定番メニューである(以下、「タヒチ」と呼ぶ。「タヒチ」はフランス領ポリネシアの首都がある島の名前だが、118ある島々を総称してそう呼ぶことが一般的なので)。

「ポワソン」は「魚」、「クリュ」は「生の」という意味のフランス語だ。

現地のポリネシア人によると「家庭ではいろいろな種類の魚でもやる」とのことだが、レストランや食堂では「マグロのブツ切り」であることがほとんどだ。

意外な出会いが絶妙なハーモニー

素材は「マグロの赤身のぶつ切り」と「キュウリ」と「ニンジン」と「オニオン」と「レタス」(いずれも生。トマトが入ることもある)。生魚と生野菜の組み合わせだから「お刺身サラダ」「カルパッチョサラダ」風と言えなくもない。

見た目は「サウザンアイランドドレッシングをかけた刺身サラダ」

味付けは「ココナッツミルク」と「ライム(またはレモン)のしぼり汁」と「塩少々」。あとの2つはまさにカルパッチョサラダ風だがココナッツミルクには大いに違和感があるだろう。

ところがだ。冷たいココナッツミルクにはココナッツライスで感じられるような甘みもなく、牛乳のような濃厚さもない。むしろあっさりとしている。そしてレモンのしぼり汁がそこにさわやかさを加える。素材の良さをまったく殺していないのだ。

キュウリも日本のものよりもコリコリしているのもポイント。マグロのブツ切りのしっとり感と、ニンジンとタマネギのスライスのシャキシャキ感と、キュウリのコリコリ感が絶妙なバランス。そこにココナッツミルクのまろやかさと柑橘系のさわやかさが加わる。

意外な組み合わせだが、味わいも食感も素晴らしいハーモニーを奏でているのだ。

ナイフとフォークが一般的だが、箸を用意してくれる店も

ココナッツミルクと柑橘類によって生臭さが消えるので、「生魚は苦手」という人はむしろこっちのほうが食べやすいと感じるかもしれない。

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