ユニークな名前の由来とオーソドックスタイプ
ユタ州を含むアメリカ山岳地帯西部では、お葬式のときには多くの人が集まり食事をする習慣があるため、よく登場することから「葬式ポテト」と呼ばれるようになった。ユタ州はモルモン教の信者が多い地域で、教会やコミュニティのイベントが頻繁に行われる。こうしたイベントでも多くの人に喜ばれるため、さらに定着していったのだという。「葬式ポテト」という名前は、ユーモラスで親しみやすく記憶に残りやすいので、この名前のまま広まったのだ。
さて、我が家でオリジナルを作ったり、ポットラックパーティで目にしたり、家の近くのバーでお酒といっしょに進化系を食べることはあっても、伝統的な味を知らないことに、ふと気づいた筆者。ということでオーソドックスな味を求めて、ユタ州の州都であるソルトレイク市まで足を延ばしてみた。
写真下がサイドメニューとして提供されている、コーンフレークがたっぷりかかった伝統的な「葬式ポテト」
チェーンレストランではなく、ユタ州発祥のローカルレストランで提供され、サイドメニューやアペタイザーとして登場することが多いのも特徴だ。
スープとして食べるチキンクリームのキャンベル缶より、水加減を減らしてこってり感を残したまま、細かく刻まれたサクサクとした歯ごたえのあるハッシュブラウンポテトと、シュレッド状のチェダーチーズのトロトロ感のコンビが最高なオーソドックスタイプ!
とにかく怒涛の濃厚クリーミーさ。素材がハッシュブラウンポテト、チーズ、キャンベルのチキンクリームスープという「どう考えたってクリーミーになるだろう3きょうだい」の組み合わせなのは分かるが、我が家のよりさらになめらかだ。
そこに、上から覆いかぶさるように散りばめられた大量のコーンフレークのクランチーな食感。クリーミーとトロトロ、そしてサクサクとパリパリが口の中でバランスよく混ざり合う瞬間がたまらない。味は薄味が基本なので、シンプルに塩と胡椒でお好みの味に調整するのが一番だ。
サイドメニューの一番初めに、写真入りで紹介されるほど大人気。
このオーソドックスな葬式ポテトは、お値段なんと4.99米ドル(1米ドルを140円で換算すると、約698円)だ。このボリュームに比べると値段がお手頃なのが分かる。
美味しい料理といっしょに、ビールやワインを一杯!と願う筆者だが、残念ながらこのレストランではお酒を提供していなかった。モルモン教の価値観が州の法律や文化に強く影響しているユタ州。アメリカ国内でも特にアルコール規制が厳しい州といわれている。アルコールを提供するための、厳しいライセンス制度もユタ州にお酒を飲めるレストランが少ない理由のひとつだ。
ローカルフードを提供する伝統的なお店では、お酒を提供している場所は少ないが、地元の人たちに人気のレモネードの種類は豊富で、パステルカラーの色に惹かれてつい全種類試してみたくなる。
ピーチやマンゴー、グリーンアップルなど、種類が豊富なレモネードはお代わり自由。
進化系はビールとの相性バッチリ
最後に進化系をひとつご紹介しよう。実はお酒が好きな筆者にとって、地元のバーでビールといっしょに食べる、から揚げバージョンが最高に美味しいのだ。
進化系には、ベーコン入りやハラピーニョ入りのピリ辛系、ハーブ系、ガーリック系など様々だ。このから揚げバージョンは、ケチャップでももちろん良いが、どうせならユタ州発祥のフライソース(ケチャップとマヨネーズを混ぜたもの)にディップして食べることをおすすめする!オシャレ感も増して値段が少し上がるが、こちらは12米ドルだった。
油であげた葬式ポテトをパプリカがたっぷり入ったフライソースにディップして食べる。
余談になるが、2002年のソルトレイク冬季オリンピックで配られたフードピンのひとつが、葬式ポテトだった。世界中から訪れる人々へ配るオリンピックのフードピンとして選ばれるほど、地元の人たちに愛されるユタ州のソウルフードなのだ。
文・写真/トロリオ牧(アメリカ・ユタ州在住ライター)
2001年渡米、沖縄県出身。ユタ州ウチナー民間大使。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員