悪気なく失礼なことを言ったり、話を聞いていなかったり、集団行動が苦手だったり、喜怒哀楽の変化が激しかったり…発達障害の人とのコミュニケーションはときに難しいことがあります。そんなとき、本人たちは何を感じ、どんな世界を見ているのでしょうか?
精神科医の岩瀬利郎氏による15万部突破のベストセラーとなっている『発達障害の人が見ている世界』は発達障害の人と周りの人が見ている世界の違いを分かりやすく紹介し、特性を持つ子どもの親から、ビジネスパーソンまで、幅広い読者に支持されています。今回はそのマンガ版である『マンガでよくわかる! 発達障害の人が見ている世界』から一部を抜粋・編集し、発達障害への理解を深めるヒントを紹介します。
状況が変化することを恐れ、臨機応変に対応できない
変化=恐怖と理解してその道のエキスパートになってもらおう
昇進を伴う異動の内示を受けたASDのHさん(30歳・女性)は、客観的にはよい異動にもかかわらず、悩んでいました。
彼女は想定外の出来事に臨機応変に対処できない自分を知っているので、何事も変化を避けるように生きてきたからです。
同じ特性を持つASDの人の中には、毎日の通勤時、レールを走る電車のようにまったく同じ道を歩こうとする人もいます。
この時間感覚を“同一性の保持”と呼び、ASDの人たちは、1年後も10年後も、今と同じ状態が続くという感覚のもとに生き、心を安定させていることがあります。
そんなASDの人は、安定した気持ちで何時間でも集中してやり続けられるルーチンワークが好きで得意だったりします。
こうした感覚を理解し、できるだけ変化の少ない環境で働けるよう配慮しましょう。ASDの人は、ずっと同じ仕事をすることで専門知識やノウハウを蓄積し、「エキスパート」や「生き字引」と呼ばれる人材になる可能性を秘めています。
〈生きづらさを抱えるあなたへのヒント!〉
次々に新しいことに挑戦したがる会社で、変化についていけません
もし、あなたが、周りのスピードについていけず苦しいなら、必要に応じて自分の特性を開示し、穏やかな職場への異動願いを出してみてはいかがでしょうか。苦痛に耐え、自分を環境に合わせていると、いつかは心身に影響が出ます。変化が苦手な人はたくさんいます。大切なのは、自分に合う環境を選ぶことです。
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「マンガでよくわかる!発達障害の人が見ている世界」
著者岩瀬利郎(監修) ゆむい(マンガ)
発行所 株式会社アスコム
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岩瀬 利郎(いわせ・としお)
精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。15万部を超えるベストセラーとなった『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)他、『認知症になる48の悪い習慣 – ぼけずに楽しく長生きする方法』(ワニブックス)、『心理教科書 公認心理師 完全合格テキスト 第2版』(共著、翔泳社)など著作多数。「偉人たちの健康診断」(NHKBS)、「櫻井・有吉THE夜会」(TBS)、「ノンストップ!」(フジテレビ)など、メディア出演も数多い。
構成/DIME編集部