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発達障害の人が特性を個性や強みに変えて生きていくヒント

2024.10.28

悪気なく失礼なことを言ったり、話を聞いていなかったり、集団行動が苦手だったり、喜怒哀楽の変化が激しかったり…発達障害の人とのコミュニケーションはときに難しいことがあります。そんなとき、本人たちは何を感じ、どんな世界を見ているのでしょうか?

精神科医の岩瀬利郎氏による15万部突破のベストセラーとなっている『発達障害の人が見ている世界』は発達障害の人と周りの人が見ている世界の違いを分かりやすく紹介し、特性を持つ子どもの親から、ビジネスパーソンまで、幅広い読者に支持されています。今回はそのマンガ版である『マンガでよくわかる! 発達障害の人が見ている世界』から一部を抜粋・編集し、発達障害への理解を深めるヒントを紹介します。

〈特性を個性に変えて生きていく〉発達障害の取り柄と強み

ここに紹介したように、ADHDの人も、ASDの人も、それぞれに特性を強みに変えていくことができます。

発達障害の人というのは、その特性を上手に引き出せれば、定型発達の人と同等もしくはそれ以上の能力を発揮できる、大きな可能性を秘めた人たちなのです。

たとえば、ニトリホールディングス代表取締役会長の似鳥昭雄さんは、70歳を過ぎてからADHDとの診断を受けたといいます。

子どもの頃から注意散漫で、人の話が聞けず、整理整頓も苦手なうえに、忘れ物の名人。小学4年生まで、自分の名前を漢字で書けなかったのだとか。

大人になってからも相当なご苦労をされたようですが、ある取材記事で、「発達障害のおかげで、私は成功できた」と仰っていたのが印象的でした。

ADHDの特性である、興味のおもむくことにパッと飛びついていける行動力や発想力が、ご自身の成功につながったと考えられているのかもしれません。

もちろん、それらの特性は、経営者やクリエイターなどの職業だけでなく、一般的な職務でも強みになり得ます。

思ったことを素直に口に出してしまう特性は、「裏表がない」「ウソがない」という信頼感につながることもありますし、ときに話があちこちに飛んでしまうことも、程度にもよりますが、「話し好きの楽しい人」と認識されることもあります。

ADHDの人は、その特性によってトラブルになりやすい半面、明るく社交的で人から好かれやすく、ムードメーカーとなることも少なくないのです。

一方、ASDの人が見せる高い集中力は、データ分析などの専門性の高い職種で力を発揮することがあります。

海外では、マイクロソフトなど大手IT企業も積極的に発達障害の人を採用し、ソフトウエア開発など、特性を活かした活躍の場を提供する試みが行われています。いずれ日本にも、この波がやってくるかもしれません。

また、本を1回読んだだけで暗記できるなどのケースは特殊な例ですが、ASDの人の中には、記憶力に優れている人が少なくありません。この特性は、定型発達の人にはなかなか持つことのできない優位性にもなり得ます。

些細な変化や違いがわかる感覚過敏傾向の人は、その特性が芸術面で発揮されることがあります。歴史上の画家の中には特定の色を好んで使った人もいますし、独特なノイズを取り入れる音楽家もいます。実際、後世に名を残す芸術家には、発達障害的な特性があったのではと思われる人も少なくないのです。

理屈で納得しないと動かない傾向は、すなわち、「感情に流されず論理で考える」という長所ともとらえることができます。

まだまだ空気の読み合いが重視される日本の社会では、「それを言うと〇〇さんが反対する」など忖度が働きそうなとき、俯瞰した立場で論理的に考えられる、

この特性が活かされるはずです。何より、職場でも学校でも、一人くらいは、こうした“空気を読まない”存在が必要ではないでしょうか。

発達障害の人は、決して能力が低いわけでも、人間性に問題があるわけでもありません。今後、社会が多様性を認める潮流をさらに強めていけば、〝見ている世界の違い〟は、より「個性」「強み」として発揮されやすくなっていくでしょう。

★ ★ ★

「マンガでよくわかる!発達障害の人が見ている世界」
著者岩瀬利郎(監修) ゆむい(マンガ)
発行所 株式会社アスコム
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岩瀬 利郎(いわせ・としお)
精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。15万部を超えるベストセラーとなった『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)他、『認知症になる48の悪い習慣 – ぼけずに楽しく長生きする方法』(ワニブックス)、『心理教科書 公認心理師 完全合格テキスト 第2版』(共著、翔泳社)など著作多数。「偉人たちの健康診断」(NHKBS)、「櫻井・有吉THE夜会」(TBS)、「ノンストップ!」(フジテレビ)など、メディア出演も数多い。

構成/DIME編集部

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