ドリアンといえば日本で「すごいにおいのする果物」として知られているのではないだろうか。テレビのバラエティ番組などでは罰ゲームで食べさせられた演者のリアクションも相まってそんなイメージが定着しているかもしれない。
そんなドリアンが身近な国・マレーシアで、野生のドリアンを求めに山奥にまで入った話を紹介したい。
ドリアンの上位品種の猫山王
ドリアンの主要生産国・マレーシア
世界の中でもマレーシアはドリアンの主要生産国なのだが、現地人でもそのにおいゆえに好きと嫌いがはっきりとわかれる果物で、ホテルやタクシーなど持ち込みを禁止していることもある。ドリアンは街中にも常設店舗はあるのだが、基本的には旬に飲食店街や商店街からやや離れたところでポツンと仮設屋台で営業していることが多い。やはりにおいの問題が大きいのだろう。
産地からクアラルンプールに運ばれたドリアン
筆者がマレーシアに住み始めた当初、毎年6〜8月と12月〜1月頃になるとあたり周辺からただならぬにおいがしてくることに気がついた。それが旬を迎えたドリアンのにおいだった。
不意打ちで漂ってくる邪悪なにおいに抗う手段もなく、なるべく鼻呼吸しないようにやり過ごしていた。この言い方はどうかとは思うが繁華街のゴミ置き場のにおいにかなり近いと思えるようなものだった。
旬到来とともに繁華街に出現したオブジェ
しかしその後、嫌いから好きへゲージが真逆に振り切れることになるのだから人生はわからない。諸事情で初めてドリアンを口にしたあの日を今でも覚えている。ありえないにおいのものを食べているという認識と今まで経験したことのない食感と味により頭が整理できず理解が追いつけない状態となった。いきなり何かのスイッチが入ったような、別の世界が見えてきたような気すらしのだ。覚醒したなどと書くとなんだか穏やかではないが心配無用! ドリアンは普通に果物である。
ドリアンは果物の王様なのか悪魔なのか
ドリアンの値段は時価
ところでマレーシアには「ドリアン破産」なる言葉がある。はまってしまうと身上(しんしょう)をつぶしてしまうほど食さずにはいられなくなるという例えからきている。たかが果物で大げさと侮るなかれ。ドリアンの値段は1kgで800〜3500円だが可食部は実のわずか20%ほど。しかもドリアンは1個で1.5〜2.5kgほどの重さがある。数千円出してもわずか200g程度しか食べられないとは果物の王にふさわしく財布を脅かす悪魔でもある。その味に心から魅せられし者は、旬ともなると毎日どころか毎食でも食べずにはいられないのだ。これまた果物の王様とも悪魔の果物とも言われる所以である。