乗り心地、見た目、試乗してわかったそれぞれのメリット
そんなEX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEの運転席に収まれば、世界の自動車メーカーの中でもいち早く電動化を推進しているボルボ最新のBEVだけに、先進感もまた満載だ。何しろステアリング奥にメーターパネルがなく、スピードメーターや時計、外気温時計、エアコンやオーディオ操作、各車機能決定ボタン、もちろんナビ画面はすべてインパネ中央の12.3インチタブレット型センターディスプレーに集約されているのだ。運転席周りのスイッチ類は最小限で、あるのはステアリング右側のシフター、ステアリング左側のウインカー&ワイパーレバー、ステアリング左右の面スイッチ(パイロットアシスト=ACC機能含む)、センターコンソール手前にある前後パワーウインドースイッチ(左右用2つのスイッチを前後で使い分ける)ぐらいのものである。
そしてEX30の大きな特徴でもあるハーマンカードン製サウンドバータイプのプレミアムオーディオシステムがダッシュボード奥の左右いっぱいに配置され、フロントドアスピーカーは廃止。これは、スピーカーユニット、ケーブルなどが不要になり、フロントドア部分のリサイクル性を高める目的なのだという。
シートのかけ心地も文句なしである。ふんわりとしたタッチと上半身の自然なサポート性を兼ね備えた高級ソファ感覚のソフトなかけ心地は、いつまでも座り続けていたいと思えるほどである。
ただし、先進性をアピールしたいばかりに、操作性には疑問が残る部分がある。そう、ドアミラーの調整すら、センターディスプレーの車両アイコンをタッチし、左右のドアミラーを、ステアリング右側のスイッチ(△のアイコンの部分)で調整する、けっこう面倒な仕組みとなるのだ。なんの説明を受けず、初めて乗ったとしたら、ドアミラーの調整はまずできない・・・。
気温34度の猛暑の中、あらかじめスマホアプリのリモート操作で車内を涼しくした状態のEX30で走り出せば、BEVならではの車内の静かさと、右足が駆動力と直結したかのようなレスポンジブルかつ、アクセルペダルを深く踏み込むことで得られる強力でコントラーブルな加速力を味わうことができるのは、前回、試乗したオプションの20インチ装着車と変わらない。
では、標準の19インチタイヤによる乗り味はどうだったのかと言えば、良路では20インチタイヤとの差はそれほど感じないものの、マンホール越えや首都高のキツい段差越えなどでの、20インチタイヤにあった強めの突き上げ感は、多くの場合、影を潜め、よりしなやかで心地よい乗り心地を、持ち前のフラット感とともに味わうことができた。ロードノイズに関しては、グッドイヤーのEFFICIENT GRIP SUVというハイパフォーマンスタイヤ、しかも45扁平の245/45R19というサイズのため、荒れた路面、粒の大きい舗装でのロードノイズはそれなりだが、リニアでビビットな操縦性と20インチタイヤ以上の快適性を体感させてくれる印象だった。
それでも、足元のカッコ良さから20インチタイヤを選びたい・・・というユーザーもいるはずだが、19/20インチタイヤ装着車のサイドビューを比較してみると、EX30のコンパクトでSUVとして背の低いスタイリングに対して、20インチだとまるでタイヤが走って!?いるようなオーバーサイズ感を、筆者は感じてしまう。見た目のバランスがよりいいのは19インチタイヤ装着車のほうだな、と思えたのである。
よって、EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEを購入する際、あえて20インチタイヤを、エクストラコストを払って注文するまでもない・・・というのが、筆者の率直な印象であった。そもそも19インチでもかなりスポーティなキャラクターのタイヤなのである。
文・写真 青山尚暉