洋総菜との相性も抜群
海藻を使った総菜も多く並んでいた。和惣菜では珍しくないが、洋風の総菜に使われているのは新鮮だった。
世界の美食家から愛されているドイツ・ミュンヘンの高級食料品店「ケーファー」の「すじ青のりのジャンボンペルシェ」は、すじ青のりの香りを引き立てるノンスモークのハムを使用し、パセリやレモンの皮などを使ったさっぱりとしたテリーヌに仕上げている。
スイーツでも洋総菜でも、総じて多かったのは「すじ青のり」を使った商品という印象。関係者によると、「いろいろな海藻を試食して、最終的にすじ青のりの香りにひかれるシェフが多かった」という。また「はばのり」の紅茶っぽい香りにひかれるシェフもいたそう。
「世界の海藻の食文化が、一歩進む機会になるフェア」
今回のフェアのきっかけを作ったのは伊勢丹新宿本店でバイヤーを務める真野重雄氏。真野氏は三越伊勢丹のチョコレート担当バイヤーだった時に、原料となるカカオが児童労働や発展途上国での搾取などの改善が必要とされている、社会性の高い食材であると感じていた。シーベジタブルが取り組んでいる、失われようとしている海藻文化や海藻をとりまく環境を取り戻そうという方向性に同じものを感じて、社内にフェアの開催を呼びかけたという。
「『海藻とチョコレートを掛け合わせたら面白いのでは』という発想から始まったが、和菓子から洋菓子、お惣菜に至るまで海藻と掛け合わせることで面白い商品が生まれる可能性を多くの人が感じたことが、今回の取り組みに繋がっている」(真野氏)
「今まで海藻といえば和惣菜のイメージしかなかった。しかし今回のフェアは、あらゆるジャンルで海藻を使ってもらうことで、世界の海藻の食文化が一歩進む歴史的な機会になるのではないかとワクワクしている」(シーベジタブル共同代表の友廣裕一氏)
日本の伝統食材である「抹茶」や「わさび」が、スイーツのフレーバーとして世界的なトレンドとなって久しいが、次は「海藻」がそれに続くかもしれない。
ヘルシーな海藻は、新たなプチギフトとしてヒットの可能性も
筆者が個人的に面白いと思ったのが、主催者のシーベジタブルが販売している、袋入りの海藻。
例えば上の社史の「乾燥若ひじき」。国産ヒジキは市場の約1割程度と希少品だが、その中でも特に希少な若芽だけを使用している。一般的に「ひじきは黒い」というイメージがあるが、若芽は緑と赤の色味。細く短く、そしてやわらかいので、水で戻してそのまま食べてもえぐみや苦みがなくおいしいのだという。また栄養価が高い上に、調理時間も短くて済むので、含まれている栄養を余すことなく摂れるとのこと。
パッケージだけで「普段使っているものと別物のクオリティであることが感じられ、希少性が高く珍しいので話のきっかけになる。健康にいい食材なので、年配者や女性にも歓迎されそう。価格的にも気が張らない、でも気のきいたプチギフトとしてぴったりの商品だと感じた。
取材協力/合同会社シーベジタブル、株式会社三越伊勢丹
取材・文/桑原恵美子