思わずスクリーンに目が釘づけになる映画ジャンルの筆頭に挙げられてくるのがアクション映画だが、最新の研究ではアクション映画好きは感情的な刺激に敏感であることが報告されている。アクション映画好きはエモーショナルな場面に敏感に反応してハラハラドキドキを楽しんでいるというのだ。
アクション映画好きは扁桃体と側坐核の反応が活発!?
特に心理学者にとって映画が興味深い研究対象である理由の一つは、映画があらゆる感情を呼び起こすことにある。
そして犯罪映画やアクション映画、コメディ、ドキュメンタリーと、映画の好みは人ぞれぞれであるが、最近まで映画の好みと脳内での感情の処理との関連については、ほとんど知られていなかった。
ドイツのマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク(MLU)の研究チームが2024年6月に「Frontiers in Behavioral Neuroscience」で発表した研究では、アクション映画とコメディ映画のファンは、ネガティブな感情刺激に対して強く反応を見せるが、一方でドキュメンタリー映画と犯罪映画、スリラー映画を好む者の反応は著しく弱いことが報告されている。つまりアクション映画好きは映画を実に感情的に楽しんでいるのである。
257人が参加した実験では、映画の好みに関するアンケート調査に加え、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使用して脳活動の分析が行なわれた。参加者はfMRIにかけられた状態で、恐怖や怒りの顔と幾何学的図形を見せられ、脳の感情刺激の処理方法が測定されたのである。
研究チームは脳の2つの領域に着目した。1つ目は重要な感情の処理を担う扁桃体で、特に脅威に対して“闘争・逃走反応(闘うか逃げるか反応)”を引き起こす可能性がある領域である。
もう1つは脳の報酬中枢として知られる側坐核の神経活動である。
分析の結果、アクション映画のファンは両方の領域で最も強い反応を示したことが判明した。アクション映画のファンは特に感情的な刺激に敏感で、この刺激を魅力的だと感じていることを示唆している。
研究チームは、コメディを好む人々の脳でも同様の脳活動を特定した。一方で犯罪映画やスリラー、ドキュメンタリーのファンの場合は、脳のどちらの領域も感情的な刺激に対する反応が著しく弱かったのだ。犯罪映画やスリラー、ドキュメンタリーが好みの映画ファンは、あまり感情的になることなく知的欲求を満たしながら映画を楽しんでいることになる。
研究チームはそれぞれの映画ファンは、自分の脳を最も最適に刺激する映画のジャンルを選択しているように思えると説明している。映画の好みも楽しみ方も人それぞれということになりそうだ。