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「左前」とはどんな意味?覚えておきたい読み方と言葉の由来

2024.10.18

浴衣や着物などの和服を着る際に「どちらを前にすればいいのか」と戸惑った経験はないだろうか。
洋服も最近はユニセックスの服が増えており、男女でボタンの掛け方が異なることを知らない人も多いようだ。

本記事では、意外と知られていない「左前」の意味や言葉の由来を詳しく解説する。なぜ男性と女性とでボタンの位置が異なるかや、医療用語としての「左前」といった雑学知識もあわせてチェックしてほしい。

左前の読みは「ひだりまえ」。意味は大きく二つに分かれる

左前(ひだりまえ)には、大きく二つの意味がある。それぞれの意味をチェックすると共に、言葉の由来にも注目してみよう。

左前の意味 その1「和服の襟が、相手から見て左が手前になっている状態」

左前の元々の意味は、服(特に和服)を着るときに、相手から見て左の襟が上に重なっている状態のこと。着ている本人からではなく、相手から見て「左が上」となるのがポイントだ。

左前は死者の装束として不吉なものとされる

死者に経帷子(きょうかたびら)を着せる際は、着物の右の衽(おくみ)を左の衽の上に重ねる。これは、この世とあの世を区別させるという意味で普段と逆のことを行う“逆さごと”からきた習慣だ。
死装束と同じ着方になる「左前」も縁起の悪いものとされる。

左前の意味 その2「経済的に苦しくなること」

左前のもう一つの意味は、経済状態が悪くなること、運が傾く(あるいは運気が下がる)こと。これは、死装束が左前であるという縁起の悪いイメージから派生している言葉だ。特に「左前になる」という表現で、経済的に苦しい状態や商売が傾きかけている様子を表す。

「左前」「左前になる」を使った例文

左前は、和服を着る機会が少ない現代の日本ではなじみの薄い言葉となりつつある。しかし、商売に関わる語句としてビジネスシーンでは今も使われることがあるため、知っておいて損はない。左前の具体的な使い方や例文を見てみよう。

  • 競合他社からの新製品が市場を席巻したために、老舗ブランドは左前になりつつある。
  • 父のリストラによって我が家の家計も左前になった。
  • 着物が左前になっているくらいは良いとしても、商売の左前は死活問題だ。

左前の豆知識1:着物や浴衣を「右前」で着るための正しい和服の着方

和服を着るときは、性別関係なく「右前」で着るのが正しいとされており、正装ではない浴衣も同様。和服の場合の「右前」とは、「右手で持っている襟を先に合わせる」という着方を指し、鏡を見たときに英語の「y」になっている状態が正しい。「懐に右手が入るように」と覚えておくと便利だ。

左前の豆知識2:洋服のボタンの位置が男女で違うのはなぜ?

では、現代の衣服においてなぜ男女でボタンの位置が異なるのだろうか。理由は諸説あるが、ヨーロッパの上流階級の習慣から生まれたという説が有力だ。

中世ヨーロッパでは、ボタン付きの洋服は上流階級でしか身につけられない高価なものだった。当時の裕福な女性は使用人に服を着せてもらうのが一般的で、当時も右利きの人が多かったことから、対面した人が留めやすいように女性は”左側”にボタンがつけられるようになったという。
一方で男性は、自分で洋服を着ることが多かったため、自分で着やすいように”右側”にボタンがつけられるようになったそう。

左前の類語や反対の意味を持つ言葉は?

和服で毛筆を持った女性

言葉の由来からもわかる通り、左前は日本の着物文化と共に古くから使われてきた言葉だ。しかし、現代では聞いたことがない人も多く、すぐに意味が伝わらないケースもあるだろう。
左前と似た意味を持つ言葉を知っておくと、必要に応じて言い換えられるので覚えておこう。あわせて反対語(対義語)もチェックしておくと、語彙力アップにつながり、一石二鳥だ。

左前の類語・同義語

左前の類語には、おもに以下のような言葉がある。いずれも左前の二つ目の意味となる「経済的に苦しくなること、運気が衰えること」に関連した語句だ。
左前が通じない(適切でない)場合は、これらの語句で言い換えてみよう。

  • 下り坂(くだりざか)……下っている坂道のこと。転じて、物事が最盛期を過ぎて衰えていくことを指す。特に天気が晴れからくもりや雨に向かうこと。
  • 下火(したび)……火の勢いが衰えること。転じて、物事の勢いが弱くなること。下から当たる火をさす場合もある。
  • 尻すぼみ(しりすぼみ)……後部や下部の形状が細くなっていること。転じて、始めは勢いがよく、終わりが衰えること。「尻窄まり(しりすぼまり)」ともいう。
  • 減退(げんたい)……勢いが減って衰えること。また、量が少なくなること。

左前の反対語・対義語はある?

左前の対義語は、右前(みぎまえ)となる。ただし、和服はもともと右前で着ることが前提のため、右前という言葉そのものには、左前のマイナスイメージと対をなすようなプラスイメージの意味はない。

左前の第二の意味である「経済的に苦しくなること、運気が衰えること」の反対語を使いたい場合は、以下のような表現を使うと良いだろう。

  • 上げ潮(あげしお)……満ちてくる潮(満潮)のこと。転じて、勢いが興隆、充実していくこと。また、そういう時期や状態を指す。
  • 上り調子(のぼりちょうし)……体や技術などの状態が、次第に良い方向に向かっていること。相場において、値が高くなる様子が現れること。
  • 順風満帆(じゅんぷうまんぱん)……船が帆に追い風をいっぱい受けて快く進むこと。転じて、物事が非常に順調である様子。
  • 破竹の勢い(はちくのいきおい)……竹は一節割れ目を入れると次々に割れていくことから、猛烈な勢いで進むこと。勢いが盛んで押さえられないことを指す。

左前の他にも、日本語には和服に関連したことわざや慣用句が多くある。覚えておくと言葉が豊かになるのはもちろん、日本文化への理解を深める一助にもなるはずだ。和服・着物に関する言葉には、以下のようなものもあるので、あわせてチェックしてみてはいかがだろう。

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文/oki

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