2024年9月3日のアメリカ株式市場において半導体メーカー大手のエヌビディアの株価が9.5%と下落。報道によれば時価で2789億ドル、約40兆5460億円の損失となり、アメリカの1銘柄としては過去最大を記録したという。
これは日本の市場には、どのような影響を及ぼしたのだろうか。
周辺事情や先行き予測も含めた三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏によるリポートが到着しているので、早速概要をお伝えする。
日経平均の下げは米景気不安、米ハイテク株安、ドル安・円高が主因で8月急落時と変わらず
2024年9月4日の日経平均株価は前日比1638円70銭(4.2%)安の3万7047円61銭で取引を終えた。前日の米国市場で、米サプライマネジメント協会(ISM)の8月製造業景況感指数が市場予想を下回り、米国景気の先行き不安が強まったことに加え、米半導体大手エヌビディアの株価が急落したことから、国内市場では値がさの半導体関連株中心に売りが広がり、日経平均を大きく押し下げる格好となった。
日経平均の不安定な動きの根底には、「(1)米国景気の先行き不安」があり、それに起因する形で「(2)米ハイテク株の下落」と「(3)ドル安・円高の進行」が重なり、9月4日の日経平均の大幅な下落につながったと推測される。
実は、この状況は8月に入ってみられた日経平均の歴史的な急落と同じであり、この時は海外投機筋による先物の売り主導で下げ幅を拡大したが、今回も海外投機筋の先物売りが影響した可能性が高いとみている。
■8月5日以降の急反発はほぼPERによるもので、安定的、持続的な株高にはEPSの上昇が必要
テクニカル分析の1つである「フィボナッチ・リトレースメント」をみると、日経平均は7月11日高値から8月5日安値までの下げ幅について、8月16日時点で61.8%戻しの水準まで到達した(図表1)。
日経平均はその後、しばらく同水準近辺での揉み合いを経て、9月2日に一時3万9000円台をつけた。そこで、日経平均の予想ベースの1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)に注目してみたい。
8月5日の日経平均は3万1458円42銭、EPSは2416円16銭、PERは13.02倍で、9月2日は順に3万8700円87銭、2438円62銭、15.87倍だった(終値ベース)。
この間、日経平均は7242円45銭上昇したが、ほとんどがPERの上昇によるものだった。急速に値を戻した日経平均だが、安定的で持続的な株高には、良好な業績見通しを反映したEPSの上昇が必要と思われる。
■目先米景気などの好材料待ちも日経平均は長期上昇トレンドを上抜け中で過度な悲観は不要
EPSの上昇には、米国景気の軟着陸(ソフトランディング)の実現性が高まり、ドル円相場が安定し、中間決算で企業の業績予想の上方修正期待が高まることが待たれる。
さらに、国内外の投資家から高い評価が得られるような資本効率改善の取り組みが企業に広がり、2025年春闘で大幅な賃上げが続く流れとなれば、図表1の76.4%戻し(39,766円89銭)の達成は十分視野に入ると思われる。
今後、日経平均を大きく押し下げる材料が発生しても、それが(1)金融システムへの影響、(2)流動性への影響、(3)他国・他地域への影響が軽微であれば、過度な警戒は不要と判断される。
また、8月6日付レポートで解説したとおり、日銀当座預金に依然滞留しているは巨額の流動性は株価の支援材料であり、現時点でも日経平均は10年超続く長期上昇トレンドを上抜けていることから(図表2)、こちらも過度な悲観は不要と考えている。
◎個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
構成/清水眞希