DIME MAGAZINE
「ローカルCM」は、実に奥深い世界でもある。
全国ネットではなく、該当の地域でしか流れていないテレビCM。視聴者の絶対数が限られているためなのか、どうもローカルCMには尖った内容のものが多い気がする。故に、「地元では誰もが知っているのにそれ以外の地域では全く知られていない」という名CMも存在する。
今回は都内の西洋料理店、上野精養軒について触れたい。関東では有名な「♪結婚しよう～僕と～」というフレーズのテレビCMを出していた企業だ。このCMは当時子供だった筆者の目から見ても美しく洗練されていたが……いや、だからこそ地域による「知名度格差」が生じてしまったのは事実だ。
そんな上野精養軒が、「高価格帯コンビニおむすび」という手段で全国展開に打って出た。
関東のCM、静岡のCM
筆者は静岡生まれ神奈川育ちである。今は無き八王子医療刑務所に父が刑務官として勤務していたため、生後1ヶ月から高校卒業までは相模原市民だった。
年に2回、両親の実家へ帰省すると「テレビの違い」を嫌でも実感させられた。筆者が小学生だった90年代当時の関東地方の地上波民放局は5局、いわゆる「3強1弱1番外地」の情勢がまだ続いていた頃だ。しかし、静岡では全く状況が異なる。静岡の民放4局に明確な差は見受けられず、全国展開の番組よりも地域密着型の番組に力を入れている気配が漂っていた。
そして、関東では絶対に見かけることのないテレビCMのオンパレード。人形のみやひで、市川園、銀座会館、コンコルド、ミホミのこっこあたりがそれに該当するだろう。が、それは逆に言えば相模原で見かけるCMは静岡ではやっていないということでもある。
上述の上野精養軒のテレビCMは、静岡では全くと言っていいほど知名度がなかった。そもそも、明治5年創業の「西洋料理店の草分け的存在」である上野精養軒自体が関東の外ではあまり知られていない。
そんな上野精養軒の「馬車のロゴマーク」が、実に意外な形で全国展開を果たしたのだ。
上野精養軒の高価格帯おむすび
8月27日、ファミリーマート本社において同日から開始の『絶品おむすび』の新商品発表が催された。
恵比寿の日本料理店賛否両論が監修した商品が2種類、そして上野精養軒が監修した商品が2種類というラインナップだ。この記事を執筆している時点で、既に商品が全国のファミリーマートで販売されている。
言い換えれば、上野精養軒のロゴマークが静岡のファミマにも掲げられているということだ。静岡と神奈川の両方を知っている筆者にとっては、軽い目眩すら起こってしまうような現象である。
今回、上野精養軒が監修したおにぎりは『ごちむすび 銀鮭のムニエル風』と『スモークサーモン ペッパーおむすび』。前者は上野精養軒で提供されるタルタルソースに味を近づけているという。後者は鮭の具材としては珍しいスモークサーモンを用いつつ、カリカリ梅でアクセントをつけている。
価格は『ごちむすび 銀鮭のムニエル風』が税込258円、『スモークサーモン ペッパーおむすび』が税込176円という価格設定だ。やはりこれは、高価格帯のコンビニおむすびである。
しかしファミリーマートによると、おむすびの家計消費支出は年々増加しているという。2023年のおむすびの家計消費支出は対前年比14.3％増。高単価おむすびの登場が、その一因になっているとのこと。考えてみれば、ここ数年でおむすびに価格の「ピンキリ」がかなり広がっている。もっとも安価な120円のおむすびが並んでいるすぐ傍らに、200円超えのおむすびが堂々立っていたりもするから最近のコンビニおむすびは恐ろしい。
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