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なぜ起きた?日経平均がブラックマンデーを超える下げ幅を記録した理由

2024.09.08

円キャリーバブルの崩壊

円キャリートレードとは、円が超低金利であることを利用して、海外の高利回り資産に投資する戦略です。特に、最近の円安傾向は、ヘッジファンドや機関投資家が円を借りて、ハイテク関連株や半導体株に大量の資金を投入する引き金となりました。これにより、日本市場では「円キャリーバブル」が発生し、一部の投資家は高リスクを承知で円売りと株買いを繰り返していました。しかし、アメリカの景気減速懸念や、金利上昇によるドルの強さが弱まり、円高が急激に進行したことで、このバブルは崩壊の兆しを見せたのです。

今回の急落の主な原因は、円キャリートレードの巻き戻しによるものです。円高が進む中、投資家たちは急速にリスクポジションを解消しようとし、その結果、日経平均が急落しました。これは過去にも見られた似たようなパターンではあるものの、バブルの崩壊は、えてして市場参加者の予想を上回るスピードで進行するため対応することが困難なのです。

日米の金融政策の股裂き状態

このような急落が発生した背景には、日米の金融政策の不均衡が大きく影響しています。

アメリカは2022年から急速に政策金利を引き上げ、インフレ抑制を図ってきましたが、日本は長期間にわたってマイナス金利政策を維持してきました。

今年7月にようやく日本も金利引き上げに動きましたが、その上昇幅はわずか0.25%に過ぎません。この金利差は、投資家にとって円キャリートレードを促す要因となり、さらにバブルが膨らむ一因となりました。

アメリカのインフレ圧力が和らぎ、景気後退への懸念が強まる中、FRB(連邦準備精度理事会)は今後の金利政策を見直す可能性があります。しかし、日銀はまだ大幅な金融緩和策を維持しており、両国の金融政策が大きく分かれているため、この股裂き状態は、円キャリートレードの不安定な要素をさらに強めています。

フィラデルフィア半導体指数と円の相場連動

もう一つ注目すべき点は、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)と円の対ドル相場が連動していることです。2022年末に登場した対話型AI技術が火付け役となり、半導体関連株は急上昇し、その結果、円安が進みました。この「円安・ドル高=SOX高」という相関関係は、ヘッジファンドが「円売り・ハイテク株買い」の戦略を大規模に採用していることを示唆しています。しかし、現在のようにドルが弱含みとなり、円高に転じると、この戦略が破綻し、急速な巻き戻しが発生するのです。

バブル崩壊と歴史的事例の比較

今回の円キャリーバブルの崩壊は、歴史的に見てもバブル崩壊後に発生する典型的な現象です。たとえば、2000年代初頭のITバブル崩壊時、エンロンやワールドコムといった企業の粉飾会計が明るみに出ました。日本でもバブル崩壊期に総会屋との癒着が発覚した証券会社の不正事件がありました。バブルが膨らむと、利益追求のためにリスク管理が甘くなり、崩壊後に不正が露呈することが多いのです。今回の市場混乱でも、今後の調査や規制当局の介入により、いくつかの問題が浮上する可能性があります。

グローバルな視点での考察

今回の円キャリーバブル崩壊と市場急落は、日本国内に限られた問題ではありません。アメリカをはじめとする他の先進国市場も、同様のリスクに直面しています。特に、アメリカの金融政策は、世界中の資産価格に影響を与えるため、FRBの今後の動向に世界中の投資家が注目しています。

さらに、欧州や新興国市場も、日本市場の混乱に影響を受ける可能性があります。円安が進行することで輸入コストが上昇し、日本企業の収益が圧迫される一方、円高が進むと輸出企業にとっては追い風となります。しかし、急激な為替変動が市場全体に混乱をもたらすことは避けられないと考えた方が良いでしょう。

まとめ

2024年8月5日の株式市場の急落は、歴史的なバブル崩壊の一端を象徴する出来事となりました。円キャリーバブルの崩壊、日米の金融政策の不均衡、そしてグローバル市場の不透明感が重なり合い、今回の市場混乱が引き起こされたのです。

今後の市場回復には、アメリカの景気動向や半導体関連企業の今後の業績などの要素を追いかける必要があり、投資家にとってはしばらく慎重な対応が求められる時期が続くでしょう。

株式市場はまだ不透明な状況が続いていますが、過去の教訓を活かすことがとても重要ではないでしょうか。

これで今回の金融経済アルキ帖はおわりです。

次回もお楽しみに!

文/鈴木林太郎

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