愛情に関わる脳領域を科学的に証明
愛情は脳のどこに存在するのだろうか。また何に対する愛情が最も強いのだろうか。
機能的MRI(fMRI)を用いた新たな研究で、その答えが示唆された。それによると、愛情を感じているときには主に社会的手掛かりの処理に関連する脳領域が活性化し、最も強い脳活動を引き起こしたのは子どもに対する愛情であったという。アアルト大学(フィンランド)のPärttyli Rinne氏らによるこの研究の詳細は、「Cerebral Cortex」に8月26日掲載された。
この研究は、6つの対象(恋人や配偶者、自分の子ども、友人、見知らぬ人、ペット、自然)に対する愛情に関する短い物語を聞き、それぞれについてじっくり考えている間の脳活動をfMRI検査により調査したもの。対象は、1人以上の子どもを持ち、愛情を注ぐ配偶者や恋人などがいることを報告した、28~53歳の成人55人(平均年齢40.3歳、女性29人)だった。55人中27人はペットを飼っていた。
短い物語とは、例えば次のようなものである。「あなたは、生まれたばかりのわが子を初めて目にしています。赤ちゃんは柔らかく、健康で、元気いっぱいです。赤ちゃんの存在はあなたの人生で最大の驚きであり、赤ちゃんへの愛を感じています」「あなたが家のソファーでくつろいでいると、飼っている猫がやってきました。猫は、あなたの隣で丸くなり、眠たげに喉を鳴らしています。あなたはこの猫のことが大好きです」
fMRIによる観察の結果、愛情を感じているときの脳活動は、愛情を向ける対象によって異なるだけでなく、その対象が人間かそれ以外か(ペット、自然)によっても異なることが明らかになった。具体的には、人に対する愛情を感じているときには社会的認知機能に関わる脳領域が活性化し、また、愛情を注ぐ対象によって活性化の強さの異なることが示された。例えば、見知らぬ人に対する思いやりのような愛情を感じているときには、親密な関係を築いている相手に対する愛情を感じているときよりも脳の活性化が低かった。
脳が最も強く活性化したのは子どもに対する愛情を感じているときであり、その活性化の程度は他の脳領域にも影響を及ぼすほど強かった。Rinne氏は、「対象者に子どもに対する愛情を想像してもらった際には、脳の報酬系深部の線条体領域までが活性化した。これは、他の種類の愛情では見られなかった現象だ」と話す。
一方、自然やペットに対して愛情を感じているときには、脳の報酬系と視覚野が活性化するが、社会的認知機能に関わる領域は活性化しないことが示された。ただし、実際にペットを飼っている人がペットに対する愛情を感じているときには、ペットを飼っていない人に比べて社会的認知機能に関わる領域が有意に活性化していた。
この結果についてRinne氏は、「ペットに対する愛情とそれに関連する脳活動の観察では、社会性と関係のある脳領域の活性の程度でその人がペットを飼っているかどうかを判断できることが分かった」と述べている。
Rinne氏は、「本研究によりわれわれは、これまでの研究よりも、さまざまな種類の愛情に関連する脳活動について、より包括的な知見を提供することができた」とアアルト大学のニュースリリースの中で述べている。(HealthDay News 2024年8月26日)
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写真:愛情の種類により活発化する脳の領域は異なる Photo Credit: Pärttyli Rinne et al 2024, Aalto University
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/cercor/article/34/8/bhae331/7741043
Press Release
https://www.aalto.fi/en/news/finding-love-study-reveals-where-love-lives-in-the-brain
構成/DIME編集部