女性医師の自殺率は一般人口よりも大幅に高い
女性医師の自殺率は一般人口より76%も高いことが、新たな研究で明らかになった。男性医師の自殺率については一般人口と同程度であったが、それでも他の専門職従事者に比べると81%高いことも示されたという。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のEva Schernhammer氏らによるこの研究の詳細は、「The BMJ」に8月21日掲載された。
医師は自殺リスクの高い専門職と考えられている。研究グループによると、米国では毎日1人の医師が、英国では10日に1人の医師が自殺により死亡していると見積もられているという。また、2004年に発表された研究では、医師は男女を問わず全死亡リスクが高く、そのリスクを押し上げている要因の一つが自殺であることが示されている。
今回の研究では、論文データベースを用いて1960年から2024年3月31日までの間に発表された医師の自殺に関する観察研究を39件選び出し、それらの結果を統合して、男性医師と女性医師の年齢標準化自殺率比を一般人口との比較で見積もった。
39件の研究のうち、38件(計3,303件の自殺)を男性医師の自殺の解析に、26件(計587件の自殺)を女性医師の自殺の解析に組み入れた。その結果、年齢標準化自殺率比は、男性医師で1.05(95%信頼区間0.90~1.22)と、一般人口と同程度であることが明らかになった。ただし、他の専門職従事者と比較すると、男性医師の年齢標準化自殺率比は1.81(同1.55~2.12)と大幅に高かった。一方、女性医師の年齢標準化自殺率比は1.76(同1.40~2.21)であり、一般人口よりも統計学的に有意に高いことが示された。
対象研究の中で最新の10件を対象に解析を行うと、男性医師と女性医師の双方で自殺率は経時的に低下していたが、それでも女性医師の自殺率は一般人口よりも依然として24%高いままであった。研究グループは、「医師のメンタルヘルスに対する意識が高まり、また職場支援も充実してきたことが、自殺率の低下に一役買っている可能性がある」と述べている。
英国で医師の精神的サポートを提供する慈善団体Doctors in Distressの後援者であるClare Gerada氏らは、本論文の付随論評の中で、医師には、完璧主義、強迫観念、競争心などの性格特性を持っている人が多いことを指摘し、「このような特性は、ストレスの多い職場環境では、罪悪感、低い自尊心、持続的な失敗感の三重苦をもたらす可能性がある」と述べている。また、「医師は、アヘンやプロポフォールなどの麻酔薬など、潜在的に危険な薬物を使用する機会があり、これが医師の中でも自殺率が高い麻酔科医の自殺に関与していると考えられる」とも述べている。
こうしたことを踏まえた上でGerada氏らは付随論評の中で、「医師の自殺リスクを減らすには、仕事上のストレス、ワークライフバランス、満たされていない感情的・心理的ニーズなどの体系的な問題に取り組むことが必要だ」と主張している。(HealthDay News 2024年8月22日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/386/bmj-2023-078964
Press Release
https://bmjgroup.com/suicide-rates-among-doctors-have-declined-but-female-doctors-still-at-high-risk/
構成/DIME編集部