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最近よく見聞きする「ファスト映画」という言葉。ニュアンスから映画を指していることは理解していても、具体的にどのような映画なのか正しく説明できない人も少なくないはず。
そこで本記事では、ファスト映画の簡単な説明と、ファスト映画が増えている理由を紹介する。また、著作権上の問題に関しても解説するので、この機会にぜひ確認してほしい。
「ファスト映画」とはどんな映画?
まずは、ファスト映画の意味を見ていこう。
■映画の一部にナレーションや字幕をつけたもの
ファスト映画とは、映画の一部を切り取ってナレーションや字幕を追加し、短時間であらすじを伝えられる形式の動画を指す。これらの動画は通常10分程度に編集され、視聴者が短時間で映画の内容を把握できるよう工夫されている。特に、映画を全編観る時間がない人や、手軽に映画のストーリーを知りたい人から視聴されている。
ファスト映画は、映画のハイライトや主要なシーンを中心に構成されるため、本編のネタバレを含むことがほとんどだ。映画の魅力を手軽に楽しむ手段として広がりつつあるが、その制作には問題が伴う。映画の一部を無断で編集し公開する行為は、著作権法に抵触する可能性が高く、違法行為と見なされる場合があるためだ。
実際に、ファスト映画を制作して動画共有サイトにアップロードした人物が、著作権法違反の疑いで逮捕された事例も存在する。ファスト映画は手軽さから人気を集めているものの、その背後には法的なリスクが潜んでいるため、制作者や視聴者はその点を認識しておく必要がある。
ファスト映画が増えている理由とは
次に、ファスト映画が増えている理由を紹介する。人気が高まっているのはなぜかを、ぜひ押さえておこう。
■「タイパ」を重視する人の増加
現代の視聴者、特にZ世代を中心に、時間対効果(いわゆる「タイパ」)を重視する傾向が強まっている。このタイパ志向は、動画や映画の倍速視聴というかたちで顕著に現れている。
多くの若年層は、限られた時間で効率よく情報や娯楽を消化したいと考えている。2022年に損害保険ジャパンが行なった調査によると、Z世代の約70%が動画を倍速で視聴していることが明らかになった。また、27〜42歳のミレニアル世代や43~51歳の就職氷河期世代も過半数が倍速視聴を経験していることがわかった。
このような背景には、短い時間で最大の満足を得たい心理がある。さらに、移動時間などのスキマ時間を有効に活用したいニーズも、倍速視聴の普及を後押ししている。このように、タイパを重視する人の増加が、動画視聴の形式に変化をもたらしていることが予想される。
■動画配信サイトなどのコンテンツの増加
近年、動画配信サイトの普及により、映画やドラマを視聴する手段が大きく変化した。映画館やテレビ、DVDプレーヤーに頼らず、インターネットを介してどこでも好きなときに視聴できる時代となった。また、多くの配信サイトが定額制の見放題プランを導入し、膨大なコンテンツを提供している。
しかし、映画一本を視聴するのに2時間近くかかるため、時間の確保が難しいという問題が生じる。そういった背景から、多忙な人々にとっては、短時間で内容を把握できるファスト映画が便利な選択肢となり、人気が高まっているわけだ。
ファスト映画は著作権侵害にはならない?
最後に、ファスト映画の著作権上の問題を紹介する。身近なコンテンツになっているファスト映画に関わることで、法に触れることがないよう正しい知識を身につけておこう。
■無断で映画を編集して公開したファスト映画は著作権侵害になる可能性
監督や脚本家、編集者など、各関係者が共同で作り上げた映画は、それぞれが著作権を持つ。そのため、映画の無断編集や公開は、これらの著作権を侵害する行為と見なされることが多い。
ファスト映画は、映画のシーンを短縮しナレーションや字幕を追加することで構成されるが、これらの行為は著作権法に違反する可能性が高い。特に、複製権や翻案権、同一性保持権の侵害が問題となる。映画のシーンを無断でカットし、ナレーションを加える行為は、元の作品の一貫性を損なうため、同一性保持権を侵害している。
また、制作したファスト映画をインターネットで配信する行為は、公衆送信権の侵害に該当する。これらの権利侵害は、著作権法にもとづき民事・刑事の責任を問われる可能性があるため、注意が必要だ。
■ファスト映画は引用にはならない
著作権法第三十二条により、すでに公表された著作物の一部を引用することは、報道や批評、研究の目的など正当な範囲内であれば許される。しかし、ファスト映画はこの引用の範囲を超えており、著作権侵害の可能性が高い。
ファスト映画は映画全体の要約や抜粋を行い、短時間で内容を伝えることを目的としている。そのため、引用の目的上、正当な範囲内とは見なされないことがほとんどだ。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部