2024年9月17日、18日の両日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)にて米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行なうとの見方が強まる中、日米金利差とドル円相場の動向から、その影響を考察するリポートが、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いた。
今回は直近6回の利下げケースから検証が行なわれているので、早速、その概要を紹介したい。
FRBの利下げ開始後に日米金利差とドル円はどう推移するか、直近6回の利下げケースを検証
市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月17日、18日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利下げに踏み切るとの見方が優勢だ。
一般に、米国で利下げが行なわれると長期金利が低下し、ドル安につながると考えられているが、今回のレポートでは、実際にそのような反応になるのか、過去の事例を検証し、米利下げ開始後の日米金利差とドル円相場の動きを考察していく。
具体的には、米国で過去、利下げが開始された時点を基準に、その後半年間における日米金利差とドル円レートの変化幅を確認する。
過去の利下げ時期は(1)1989年6月、(2)1995年7月、(3)1998年9月、(4)2001年1月、(5)2007年9月、(6)2019年7月、の直近6回が対象。
半年間はドル円の取引ベースで125営業日として、日米金利差は米国の10年国債利回りから日本の10年国債利回りを差し引いたものとする。
■過去、国際通貨合意や日銀の金融政策などの影響で米利下げ後必ずしもドル安・円高にならず
まず、(1)で日米金利差は約78ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)「縮小」、ドル円は1円58銭ほど小幅に「ドル高・円安」に振れた(図表1)。
背景には、利下げ後の米国株の底堅さや、本邦機関投資家の外債投資などが、ドルを支えた面もあると思われる(図表2)。
次に、(2)で日米金利差は約75bp「縮小」、ドル円は17円71銭ほど「ドル高・円安」に振れた。これはドルに関する国際合意が主因と推測できる。
(3)では日米金利差が約39bp「縮小」、ドル円は16円24銭ほど「ドル安・円高」に振れたが、当時の円高は、ロシアの通貨危機などによるリスク回避的な動きによるものと考えられる。
また、(4)で日米金利差は約58bp「拡大」、ドル円は10円76銭ほど「ドル高・円安」に振れたが、こちらは2001年3月19日に導入された日銀の量的緩和政策によるところが大きいと思われる。
■今回は米利下げでドル安・円高の可能性が高いが、利下げ後の予期せぬイベントの発生に要注意
そして、(5)で日米金利差が約68bp「縮小」、ドル円は12円66銭ほど「ドル安・円高」に振れたが、これは米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の表面化によるリスク回避的な動きが影響したと推測される。
最後の(6)では、日米金利差は約40bp「縮小」、ドル円は1円06銭ほど小幅に「ドル高・円安」に振れたが、当時は米中貿易問題を巡り市場が一喜一憂し、ドル円の方向感が出にくかったためと考えられる。
以上より、米利下げ後の日米金利差やドル円の動きは、「利下げそのもの」よりも、「利下げ後のイベント(国際的な通貨合意や金融危機、米中の政治的緊張など)」に、より強く影響を受ける傾向があることがわかる。
今回は、米国で利下げ、日本で利上げとなる可能性が高く、日米金利差の縮小とドル安・円高が予想されるが、米利下げ後の予期せぬ金融危機の発生や、米中の政治的緊張の高まりなどには、十分な注意が必要と考える。
構成/清水眞希