2050年までに国内旅行のCO2排出ネットゼロをめざす産官学連携のサステナブルな旅プロジェクト「GREEN JOURNEY」が始動
2024.09.02ツアーのローンチに合わせ、LINEミニアプリを開発。LINEのスタンプラリー機能を用いて訪問した場所でポイントを貯めると、日常利用できるサステナブルなアイテムなどさまざまなグッズと交換ができ、EV給電スポットの検索をしたり、各訪問場所に設置された二次元バーコードを読み取ると、その地域の伝統文化や地域のサステナビリティに関する情報を読むことができる。
日産自動車 常務執行役員 神田昌明氏と、日本旅行 代表取締役社長 小谷野悦光氏は、GREEN JOURNEYの取り組みについてこう話す。
「日産自動車はEVの普及を通じ、ゼロエミッション社会を目指して取り組んでいます。2022年からこれまで3回にわたり実施した、EVオーナー優遇施策プロジェクト『GREEN PASS』は地球温暖化や災害対策などの課題を解決するための活動です。電気自動車活用による社会変革、社会課題を解決するために2018年には『ブルー・スイッチ』を開始しました。
こうした取り組みを続けてきた中で着目したのが観光産業です。昨今、エコツーリズムなど環境配慮を意識した旅が注目されていますが、観光及び観光産業でのCO2排出量は、世界の排出量の約8~11%と大きな割合を占めており、その大部分が移動から発生しているという現実を知りました。そこで、長きにわたりお客様のお出かけや旅に寄り添ってきた日産自動車が発起人なり、新しいサステナブルツーリズムの実現を目指す考えにいたりました。
様々な課題を抱えるサステナブルツアーの実現には、観光従事者だけではなく、業界の垣根を越えた協力が必要です。多くの企業に賛同いただき、さらに環境省が推進するデコ活応援隊、東北大学との連携のもと、国内旅行におけるCO2排出量の削減および環境保全型セキュリティの開発、地域文化の維持を取り入れた『GREEN JOURNEY』をスタートしました」(神田氏)
「弊社では2021年よりJブルークレジットを活用したカーボンオフセット付きの商品を販売しています。昨今、サステナブルツアーは増えてはいるものの、日本国内ではまだ一般化していない状況です。
その一方で、アフターコロナ、円安の影響から国内観光需要が高まっています。今こそ、この課題と向き合って、サステナブルな旅行のスタンダード化を図るため具体的なアクションプランを実行する必要があると考えておりました。
また、観光産業を持続発展させるためには、地域の人手不足、二次交通不足、さらに人口減少やコロナを機に難しくなった文化産業の維持など、解決すべき様々な課題もあります。環境に配慮をするとともに、地域への貢献も含めて、我々旅行業界において、何ができないかと考えていた中で、日産自動車より本プロジェクトのお話をいただき、共に発起人となることにいたしました」(小谷野氏)
【AJの読み】旅行という非日常な体験からサステナビリティへの意識を高める
「GREEN JOURNEY推進委員会」には、発起人の日産自動車・日本旅行のほか、JRグループ7社、地球の歩き方、おてつたび、TBWA HAKUHODO、Earth hacks、日本ジオパークネットワークの全14社と環境省(デコ活応援隊)、東北大学が参画する。
鉄道の大動脈を持つJRグループ、地域でのお手伝いと旅を掛け合わせたサービスを提供するおてつたび、観光マーケティング事業を通して得た、世界各地の先進的なサステナブルツーリズムの知見を持つ地球の歩き方、商品やサービスの排出CO2相当量の削減率を「デカボスコア」として可視化し、サステナブルの意識を生活に取り入れるきっかけを提供するEarth hacks、地球の遺産を守りながら、教育やサステナブルな観光に活かす日本ジオパークネットワーク、「美食地政学」という新たな概念を提唱し、地域と協力して社会実装を目指す東北大学など、業界の垣根を超え多角的にサステナブルツーリズムの取り組みを行う。
旅行という非日常な体験の中から、EVでの移動、サステナブルなグルメ、環境にやさしいアクティビティなどを通じて、サステナビリティへの意識を高める「GREEN JOURNEY」。
第一弾の熊本阿蘇、伊勢志摩のツアーは、カーボンオフセット往復新幹線+ホテル・旅館+EVレンタカーのセット商品。現地での移動はEVレンタカーとなるため、今後は運転免許を持っていない人や高齢者に向けてMaaSなどを活用した、車を使わなくても移動できる商品も出して欲しいところだ。
取材・文/阿部純子