2050年までに国内旅行のCO2排出ネットゼロをめざす産官学連携のサステナブルな旅プロジェクト「GREEN JOURNEY」が始動
2024.09.02■連載/阿部純子のトレンド探検隊
旅を楽しむことでサステナブルにつながる「GREEN JOURNEY」
日産自動車、日本旅行が発起人となった産学官連携の新組織「GREEN JOURNEY推進委員会」を発足した。「GREEN JOURNEY(グリーンジャーニー)」とはサステナブルにつながる新しい旅のスタイルの普及に取り組むもので、2050年までに国内旅行のCO2排出ネットゼロ、2033年までに200エリアへの拡大、延べ利用者数1000万人を目指す。
GREEN JOURNEYを楽しむ5つのヒントは「空気がおいしくなる移動」「その土地の取れたてをいただく」「地球にもやさしい宿泊を」「旅での体験を地域の貢献に」「思い出と気づきもお土産に」。旅を楽しむことで、サステナブルにも貢献できるという新しい旅のスタイルだ。
EV(電気自動車)レンタカーによる環境にやさしい移動手段の提供、環境保全型のアクティビティ、地域文化の発展につながる体験などを通じ、従来のカーボンオフセットによるCO2削減ではなく、実数としてCO2排出量を20%以上削減できる。
2030年までに旅行時の移動におけるCO2 排出量を累計4771トン削減できる見込みで、今後も一次交通事業者や再生可能エネルギー事業者などの多様な企業や団体の賛同を募っていくことで、2050年にはCO2排出ゼロを目指す。
各地のツアーのアクティビティや食などのCO2削減率は、脱炭素プラットフォーム事業を展開する「Earth hacks」が提供する「デカボスコア」を用いて算出する。
例えば、「GREEN JOURNEY伊勢志摩」の提携スポット「REMARE(リマーレ)」では海洋プラスチックゴミをアップサイクルした環境にやさしいお土産を提供しており、Earth hacks調べでは通常のプラスチック製品に比べて37%のCO2削減効果がある。
サスナブルな旅行のスタンダード化に向け、各地方自治体や賛同企業とともに普及を目指し、サスナブルを意識した施設を取り入れることで、国内のサスナブル意識の向上も図る。今後はさらにEVが利用しやすいような基盤を構築し、国内旅行におけるサスナブルツアーの拡大を目指して、2033年までには全国200エリアにプランを拡大、GREEN JOURNEYの参加者数も1000万人まで増やすことを目標にしている。
日本旅行のGREEN JOURNEY第一弾ツアーとして、「GREEN JOURNEY熊本阿蘇」「GREEN JOURNEY伊勢志摩」の予約販売を開始。両エリアの選定理由について、日本旅行 常務取締役兼執行役員 ソリューション事業本部長 吉田圭吾氏はこう話す。
「サスナブルツーリズムの取り組みに積極的であり、すでにその土地に根差したサスナブルツーリズムのあり方や体験がある程度できているエリアと組んでスタートしたいと考えました。
阿蘇ではカルデラに広がる草原の再生維持という課題に対してツーリズムを通じた取り組みを注力されており、すでに日産自動車とEVでの観光を推進する取り組みを実施していたことから、さらに発展させる形で今回実施することとなりました。
伊勢志摩は海水温や海流の変化から、名産の伊勢エビやアワビが獲れなくなってきており、この危機に対し『美食地政学』という観点で新たな取り組みを進めており、日産自動車の『ブルー・スイッチ』(電気自動車の活用による社会の変革、地域課題の解決に取り組むアクション)の締結や、伊勢志摩スカイラインでのコラボ施策などで縁があり、今回の取り組みにつながりました」
GREEN JOURNEY参加者限定の旅のアクティビティとして「コネクトプログラム」を設定。地元産業の発展や文化の継承などサステナブルな取り組みをしている地元の人がホストとなり、旅行者は彼らと交流したり、指導を受けながら共同作業をしたりと、その土地ならではの産業や文化に直接触れることができる。
体験して終わりではなく、旅行後も定期的にLINEのアプリを通じて、地元の人から地域の情報が満載されたメッセージが届く。旅先やそこで暮らす人々との間に新しいつながりが生まれ、第二の故郷をつくることができるGREEN JOURNEYだけの特別なプログラムになっている。
コネクトプログラムとして「GREEN JOURNEY伊勢志摩」では、次世代の養殖方法を活用して牡蠣養殖の発展に取り組んでいる石川隆将さんから学ぶ『牡蠣養殖体験』と、伝統食「きんこ芋」の継承をしている上田圭佑さんとの『きんこ芋製造体験』の2つのアクティビティを提供。今後も各地でコネクトプログラムを増えていく予定だという。