三菱電機と国際電気通信基礎技術研究所(以下ATR)は、ロボットがエレベーターに乗降する際、ロボットの動作情報をエレベーターのかご内で音声案内することにより、エレベーター利用者に対して安心感を提供するヒューマンファシリティインタラクション(以下HFI)機能(※1)を開発した。
※1 HFI:Human-Facility Interactionの略。人とビル設備とのインタラクション機能に関わる研究であり、音声だけでなく表示やジェスチャなど多様なモダリティを含む。
開発の背景
近年、オフィスビルや商業施設などにおいて、清掃や警備、搬送などさまざまなサービスロボットの導入が進んでおり、エレベーターと連携することで、フロア間の移動を自動化できる技術・サービスが実用化されている。
さらに、人とロボットがエレベーターに同乗できる機能によって、効率良くフロア間の移動を行なうことが可能となる。
一方で、人とロボットがエレベーターに同乗する際には、一般的にエレベーターの利用者がロボットの動作に対して配慮することが求められるが、ロボットの動作情報がエレベーターの利用者に伝わらず、利用者が不安やストレスを感じやすいという課題があった。
三菱電機とATRは今回、人が常に一歩先を予測して行動し、他人に対して無意識にストレス軽減動作(会釈や、声掛けなど)を行なう点に着目。エレベーターへのロボット乗降時に、エレベーター利用者に動作情報を音声で案内するHFI機能を開発した。
ロボットもしくはエレベーターから、ロボットの動作情報をエレベーターの利用者に直接伝えることで不安やストレスを軽減することが期待できる。
新開発機能の主な特徴
■HRI技術の知見を元にロボットの動作情報を音声で伝えるHFI機能を開発
・これまで、三菱電機とATRがそれぞれのロボット開発で培ってきたヒューマンロボットインタラクション(以下HRI ※3)技術の知見をもとに、ビル設備の一つであるエレベーターに適用可能なHFI機能を三菱電機が開発。
※3 HRI:Human-Robot Interactionの略。人とロボットの関わり方や相互作用についての研究
■音声案内によりエレベーター利用者に安心感を提供
・今回開発したHFI機能の音声案内を用いて、ロボットの動作情報をエレベーター利用者に伝達して、効果を検証する実証実験を実施
・実証実験にはWOZ法(※4)を採用。ロボットが移動する際にエレベーターもしくはロボットの音声案内を実施
※4 WOZ:Wizard of Ozの略。製品やシステムを完成しているように人が動かすプロトタイプ技法
<音声案内例>『今からロボットが乗ります。出発まで少々お待ちください』
・エレベーターもしくはロボットいずれの音声案内の場合でも、ロボットに対する利用者の好感度が上がり、安心感を提供できることを確認
実証実験によるロボットに対する好感度評価
実証実験の様子
■今後の予定・将来展望
三菱電機では「今回開発した機能について、具体的な製品化計画は未定です。今後もさまざまなサービスロボットとエレベーターでの評価を重ね、本開発で得られた音声案内機能の向上を進めていきます」とコメントしている。
関連情報
https://www.mitsubishielectric.co.jp
構成/清水眞希