シニア層に支持される、紙メディアの強さ
大熊氏は、「ばあちゃん新聞」成功の要因のひとつとして、“紙からしか感じられない温かみ”を上げている。「いつでもどこでも気軽に持ち運び、手に取って読むことができる新聞だからこそ、読者の方に届く楽しみ、受け取る喜びを提供できる」(大熊氏)。
確かに最近、大手企業でも、PR誌などの紙媒体を再評価する動きが増えている。販促先にQRコードを渡しても見てもらえる可能性は低いが印刷物ならその場で見てもらえる可能性が高い、表紙に加工をして特別感は高級感を出しやすい(Web媒体ではこれが難しい)などがその理由だ。PCを持たない高齢者でも読め、何人かで同時に回し読みし語り合えるオフラインのコミュニケーションツールとして、また気になるところに付箋を貼ったり書き込んだりして、自分仕様に加工できる便利さも、紙媒体の強さ。
筆者も最初は物珍しさから注目したが、知れば知るほど、我々が「ばあちゃん新聞」から学べることは多いと感じた。購買数は個人年間購読者500部に対し企業購読1,400部と、意外にも個人購読者よりも企業購読が多いが、それだけビジネス面でも注目度が高いということだろう。
「じいちゃん新聞」創刊の可能性も!?
ちなみに最初から「ばあちゃん」に特化しようと思っていたわけではなく、起業前に地域のじいちゃんにも声をかけたものの、乗り気ではなかったとのこと。大熊氏は「僕が同性で年下なため、プライドもあって受け入れにくい面があったのかもしれません。もしかしたら若い女性のリーダーがおじいちゃんを頼るというアプローチのほうがいいのかもしれないので、今後はじいちゃんが活躍できる場についても、考えていきたい」と語る。
その構想として「ジーバー喫茶」というじいちゃんばあちゃんが働く喫茶店構想があるそうだ。来年2025年のオープンに向けて、福岡市内と久留米市内の福岡県内の二箇所の空き家を活用して、地域のじいちゃんばあちゃんが日替わり店長としてスイーツやデザート、軽食を提供しながら「代わるがわる人生を語る」喫茶店をコンセプトにしたお店。
大熊氏がもうひとつ、事業を通して提唱しているのが、20〜90歳代までの「多世代型協働モデル」。「社会保障費の増大で税金が高すぎて、正直しんど過ぎませんか?課題解決を前向きに、悲観せず高齢者にまつわる問題を私たち若い世代、現役世代と共に協力して、前向きに乗り越えていく方法を考えていきましょう」と語る。
ばあちゃん新聞はオンラインショップ(ばあちゃん飯)での販売並びに電話注文(0943-76-9688 うきはの宝株式会社)で年間購読の申し込みを受け付けている。また、高齢者にまつわる社会課題の解決にスポンサー・協賛してくださる企業や団体、個人も多くいるそうで、ばあちゃん新聞のスポンサー・協賛を下記のURLで募集中だ。
※スポンサー・協賛募集ページ https://ukihanotakara.com/support/
取材協力/うきはの宝株式会社
「ばあちゃん新聞」
https://camp-fire.jp/projects/757232/view
https://baachanmeshi.com/products/grandmas_newspaper_12
取材・文/桑原恵美子